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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第十二ノ契約 黒き春



それから二週間後。哉都達はテストに挑んでいた。万全と到底言えないが、鈴花によって数式も文法も公式も色々詰め込まれ、教え込まれ、()()納得した哉都と国久にしてみれば、まずまずだ。彼らがテストに向けて頑張っている間もモノノケは出現し、そのたびに八咫烏警備隊が対応してきた。モノノケの出現が普段よりも一時的に上昇したことで「ちゃんと倒していないんじゃないか」と苦情が来たらしいが八咫烏警備隊の最高権力者の一喝でたちまち立ち消えたとかなんとか。その分、と云うのか、新人を多く加入させたとニュースでやっていた。また、モノノケによる誘拐事件も発生しており、解決の糸口が見えていないことも拍車をかけたのだろう。と鈴花は分析する。刻がいるが気をつけようと勉強会を続けていた。二日連続で出会ったモノノケも空気を読んだのか、哉都達の前にほぼ二週間分現れなくなった時は「夢かな!?」と思ったものだが。

しかし、確実に世界の状況は変わっている。パズルのワンピース単位でゆっくりと、()()()()()()()()()


恐らく何処の学校も同じー多少違う?ーであろう鐘が大きく鳴り響き、テスト終了を告げる。多くの生徒が「終わったー!」「わからん!!」「出来なかった……オワタ」「大丈夫大丈夫イケたイケた!」「楽勝ー(棒)」などと云う悲鳴や愚痴、感想とも取れる叫び声を上げながらテスト用紙から次々に顔を上げていく。そういう哉都もそんなうちの一人で、シャープペンシルを筆箱に放り投げ、もう見たくない!と言わんばかりにテストから顔を背ける。今日がテスト最終日で、最後の教科というのがせめてもの救いだった。


「はーい、終わっても終わってなくても回収しますよーテスト用紙から手を放して!」


いつかのあの女性教師が教壇の上から声を張り上げる。それでも教室内はテストから解放された歓喜で騒然としていた。「ふんっ」と呆れたような、憤慨したような表情を浮かべる女性教師に哉都は少しだけ同情しつつ、心の中で謝罪した。それは自分も同じだからと理由もあり、神姫と契約したからでもあった。と少しボーッとしている間に突然、女子生徒の黄色い歓声が響いた。何事だと哉都は辺りを見渡し、机の側に立つ人物に気がついた。女性教師が契約した神王であり夫である人物が女性教師の思考を読み取り、テスト用紙の回収に回っていたのだ。彼を見上げた哉都と目が合い、にっこりと柔らかく会釈された。それに少々戸惑いながらも哉都も会釈を返す。(別の神姫)の気配でも感じたのだろう。叔母や弟には刻の事を話してはあるが、国久と鈴花を含めた以外には話してはいない。一瞬哉都が考え込んでいる隙に彼はテスト用紙を回収してしまい、素早い動きで全員分を回収すると女性教師へと持って行った。


「はい、どうぞ」

「ありがとうあなた。さて、明日は職員の都合で休み、三連休ですが、ですが!!課題がある教科もあるようなので忘れないように!では、解・散ッ!!」


「わー!」と女性教師の言葉を合図に生徒達が我先にと歓喜の雄叫びを上げながら教室から逃れるかのように駆け出して行く。徒競走のように疾走する教え子達を呆れたように肩を落として苦笑し、女性教師は神王と共にテストが入った茶封筒を持って教室をあとにした。神王である人物がクスクスと笑いつつ続く。それを見送り……と云うよりも目で追っていた哉都は二人がいなくなると筆箱のチャックを閉め、帰り支度を始める。


「カーナっ」


トン、と帰り支度をする哉都の前に鈴花がいつかの日のように踊るように現れる。スクールバックを机に置き、「来たね?」と哉都はニヤリと笑う。


「なーに?鈴花」

「お昼ご飯、行くでしょ?」

「まぁな」


顔を見合せ、クスリと二人で笑う。いつの間にか教室には二人以外誰もいなくなっていた。そんなに早く帰りたかったのかと、笑ってしまうほどで。廊下から響く楽しげな声がまるで歌声のようだった。


「じゃあ、国久呼んでくるわね」

「国久を呼ぶのは鈴花の役目だもんな」


哉都の台詞に鈴花はキョトンとすると、ニィと男らしく歯を見せて笑った。


「ええそうよ。私の、()()()()()()でしょう?」

「そんな昔でもないんじゃない?」

「ふふ、そうかもね♪」


ケラケラと云うよりもニコニコと笑いながらリュック片手に国久を呼びに教室を出て行った。「国久ー?」という鈴花の声が廊下から聞こえてきた。いつも通りだなぁと思いながら哉都は立ち上がろうとした。


「おや、微笑ましいねぇ」

「うお!?」


ガタッ。哉都を上から覗き込むようにして突然刻が哉都の目の前に現れた。立ち上がろうとしていたため、哉都は突然の刻に驚き、椅子から落ちてしまった。「イッタァ」と強く打ち付けた尻を擦る哉都を刻が「おや」とクスリと笑って見下ろす。


「刻!突然、人型になんなよ!驚くだろ!?」

「おや、それは失礼。でも、面白かったよ?」

「わざとかよ!」

「ふふっ」


楽しそうに口元を押さえて笑う刻に哉都が噛みつく。と刻は本当に楽しそうに笑う。それが最初の頃よりも柔らかく見えて、哉都は肩を落とした。大方、鈴花の入れ知恵だろう。申し訳ないと表情に出しておきながら笑う刻を背にスクールバックを背負う。


「私もご一緒しても?」

「良いよ。てかそのつもりだったしな」

「おや、嬉しいねぇ」

「当たり前だろ?」


く、はは。と顔を見合せて笑い合う。国久と鈴花も一緒にこうしてたわいもない話で盛り上がって、笑い合うのが好きだった。それはきっと、刻のように新しい友人が出来ても変わらない。ずっと、きっと。そう思っていた。それが、()()()()()()()()()()()()()


「……にしても鈴花ちゃん、遅くないかい?国久くんを呼びに行っただけだろう?」

「そういえば……」


刻に言われ、哉都は壁にかかった時計を見上げる。鈴花が出て行ってから五分ほど経ってしまっている。隣の教室で国久と話し込んでいるのだろうか?そうならば、自分達も乗り込みに行かねばならない。


「俺達も迎えに行こ、t「ねぇ!国久来てない?!」……鈴花」


哉都が刻に隣の教室に行こうと声をかけようとしたその時、鈴花が勢いよく駆け込んで来た。隣と教室はあまり距離が離れていないので、鈴花が肩を大きく上下に動かし、呼吸を繰り返している理由にはならない。ドアに寄りかかる鈴花に哉都と刻が不安そうに近づく。二人の姿を見て、鈴花の瞳に不安な色が宿った事を刻は見逃さなかった。


「鈴花、どうしたんだ?」

「国久、来てる?」

「?来てないよ。鈴花が呼びに行ったんだろ」

「……そ、そうよね……やっぱり、学校内なのかしら……」

「一体どうしたんだよ?」


不安と焦燥、二人がいたことの安心感に鈴花の瞳と表情が百面相する。「鈴花」と哉都が彼女の肩を優しく掴むと大丈夫だと頷く。それにハッとした様子でいつもの鈴花が戻ってくる。


「国久がいないのよ!」

「「は!?」」

「探したんだけど見つからなくて!」

「メッセージは?」

「スマートフォン、ていうかバックごと置いて行ったみたいで……」


なるほど、鈴花の息が切れているのはそのためか。恐らく、隣の隣の教室のまで探しに行ったのだろう。国久がバックも持たずに連絡もなしに何処かに行くなんて、なんというかあり得ない。昨日も一緒に昼食を摂り、いつものように今日も摂る予定だったのだ。というか言わなくてもそうなってしまうほどに当たり前となっていた。それなのに連絡もなく、国久だけいない。鈴花が心配し、動転してしまうのは無理もなかった。モノノケの出現も増えていると云うのに。ただ、本当に何かの用で一時的に席を立ったと云う可能性もある。だからこそ自分だけ先に探せる所だけでも探したのだろう。


「すれ違いになっただけじゃ?」

「それも考えて、カナには今伝えたのよ……」


不安そうに両手を握りしめる鈴花。拳にした手のひらに爪が食い込み、表情と合わさって痛々しい。哉都だけでなく、刻もそう思ったのか、「大丈夫」と安心させるように彼女の肩を叩いた。


「主君、国久くんが突然いなくなる……というのが合っているかは分からないがそういうのって」

「ない。国久って、兄弟で言ったら長男なんだ」

「……長男?」


哉都が言った事に鈴花も頷く。自分でなんでもやろうとして、弱味を見せないくせに自分達のために力を貸してくれる、愛しい親友。優しくて、世話焼きな。それが国久だった。だから、哉都と鈴花(俺達)に何かあれば飛び出してしまいそうな国久が、自らその約束(誓い)を反故にしてしまうなんて、可笑しかった。


「それくらい、一緒だものね」

「だからこそ、あり得ないって断言できる」

「……二人共、国久くんのことが大事なんだね」

「「当たり前だろ/当たり前でしょ」」


刻の不意をついて出た問いにかぶりつくように二人が即答する。その即答ぶりに目を丸くしたのは、()()()()()()()()()()()だ、きっと。そんな表情を押し殺して、刻は不安そうな二人に提案する。


「なら、もう一度探してみてはどうだろう?主君と鈴花ちゃんは校内を。私は神王や神姫に当たってみよう」

「そんなこと、出来るの?」


鈴花の云うそんなこと、とは神王や神姫に聞いてみると云うことだろう。出来るのだろうか?実際、哉都も疑問に思っていた。神王・神姫内にも習った通りなら知り合いがいても可笑しくはない。だが、契約した夜に彼らと自分達の間には波長の都合上、行動範囲が制限されていると云う話を刻からされた。一応、哉都が契約した日の夜からありとあらゆる情報を詰め込んだと云う鈴花が知らないはずもない。二人の疑惑の表情に刻はクスリと笑う。


「大丈夫だ。私と主君の波長は結構相性が良いからね。校門?前までなら行けるさ」

「あ、うん、そっか……」

「知り合いに関してなら無造作にいるだろうしねぇ。大丈夫、主君(契約者)までは追及されないよ」


聞きたい事を全て答えられてしまい、なんだが納得したいのにできない気分である。あれ、なんだこれ。

と、まぁそんなこんな。哉都と鈴花は学校の中を探し、刻は情報収集がてら外を探すことにした。三十分後に隣の教室に集合と云うことで一時解散した。


「(国久……何処行ったんだよ?!)」


自分の心中に渦巻くもやもやとした、変な居心地がどうか嘘であれ、そう願うしか哉都にはなかった。


新しい話?と言うよりも新展開です!こういうのやりたかったんだ……!

次回は来週月曜日です!

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