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神様遊戯~光闇の儀~  作者: Riviy
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第百九ノ契約 消えた小鳥


「夢うつつ、あの世を今か今かと待ちわびて。その世が今まさに此処に有らん。待ちわびた彼かの魂よ、安らかに憎悪の炎を燃え上がらせ、この世を全て消し去れ。それが長年の怨念であるならば、今此処で、示したもうぞ……さあ、破壊尽くせ。それが罪で罰」


**


周囲に突然現れたモノノケとヨウカイの集団は哉都達エモノを睨み付けている。哉都達も負けじと睨み付けるが、数でいえば圧倒的に不利だ。しかし、どうにかこの包囲網とも言うべきものを突破しなければ逃げることさえ出来ない。すぐさま覚醒したいが、哉都と国久は以前のものが初回だ。戦ったにしろ、恐らくまだ万全ではない。鈴花は何度かあるため万全であろうが自分達は八咫烏警備隊の特殊な訓練を受けたわけでもないし。まぁ、あの二人とどういう理由か繋がっている以上、すでに覚醒のことは知られているだろう。それは良い。だが、本当にどういう目的で?


「とにかく、この化け物達を倒さないといけないようだね!」

「嗚呼、刻、時雨、無理だけはするなよ!」

「分かっているよ」

「へーへー」


武器を構えた刻と時雨に言えば、二人は力強い答えを返す。茶々も紗夜も同じように真剣な表情で敵を見据えている。


「あとで話したいことがあるから!!」


と、その時、壱月が叫んだ。片腕に展開された無数の武器を敵に見せびらかすように広げ、その後ろでは番傘を開いた澪がクスリと優しく笑みを溢している。化け物に囲まれている中で叫ぶ、だなんて壱月らしい。鈴花と紗夜が爆笑しそうになったのはいつもの事である。とりあえず、やることはこの化け物達を討伐することだ。


「茶々、頼んだよ」

「紗夜ちゃん、防御魔法で守ってちょうだい」

「任せて主様ー!」

「お安いご用です!」


国久と鈴花の言葉に二人が叫び、化け物達も戦闘体勢に入る。モノノケが大半を占めているがヨウカイもチラホラ見える。指揮官と言ったところだろうか。そう哉都が考えていると巨大なモノノケが我先にと飛び出した。それにつられるようにして茶々が飛び出し、両者は空中で巨大な体躯と武器を交差させる。交差した衝撃で衝撃波が全体攻撃として敵味方関係なしに襲いかかる。それを合図に化け物も刻達も敵に向かって跳躍した。紗夜は鈴花の頭の上で防御魔法を随時貼り巡らしながら攻撃魔法で主に茶々の援護をする。茶々はその援護を受けながらモノノケの一撃を寸でのところでかわすと大太刀を抜刀するように足元から振り上げ、上へ振り抜いた。後方に仰け反りながら後退しようとするモノノケに茶々の後方に迫った別のモノノケを回し蹴りで足場として追い返すとそのモノノケに紗夜の攻撃魔法が容赦なく突き刺さる。それを横目に茶々はニンマリと嗤うと前方のモノノケに向かって跳躍し、大太刀を両手で掴むと反撃する暇さえ与えぬ素早い動きでモノノケの胸元に突き刺した。突き刺した勢いでモノノケは無残にも倒れてしまい、茶々が大太刀を下に引き抜き、巨大な体躯を簡単に真っ二つに切断してしまう。物言わぬ物体に別のモノノケが攻撃を茶々ごと仕掛けてくる。さらに四分割されてしまったモノノケに哀れと云うか気の毒そうな視線を送り、茶々は片手を上げる。そこに紗夜の攻撃魔法の刃物が飛んで来、それを茶々が掴めば勢いよく茶々と刃物が飛んでいく。その勢いを利用し、武器を構え直していたモノノケの懐に一気に迫る。しかし敵もして殺られるかと武器を逆手持ちにし、懐に潜り込んだ茶々に突き落とす。その一撃を茶々は背後に仰け反ってかわし、後方に手をつけて回転。ついでと言わんばかりに足で顔を蹴り上げる。そこに案の定、紗夜の攻撃が重なることも言わずもがなである。顔があらぬ方向へと変形してもモノノケは他の化け物と共に攻撃してくる。大きく後方で振りかぶられた攻撃に茶々はかわせずに腕に一線傷を作ってしまう。その間にもモノノケが茶々を取り囲む。茶々は大太刀を肩に担ぐとニィと狂喜的な笑みを浮かべる。ゾクリと敵の背筋を駆け上がったのは果たして悪寒か否や。少々短い柄を両手で握り締め、構えながら茶々は軽く後方を一瞥する。それだけで後方支援を行っている紗夜も国久も彼が何を望んでいるのか分かってしまう。分かっていないのは、敵だけ。


「ハハッ、バカ過ぎるよねぇ!そうやってなんでもかんでも囲んでもさぁ」

「防御魔法、展開!」


バリンッッ!なにかが割れる音が茶々を囲んでいたモノノケの耳元でした。途端、何故か動けなくなる体にいつの間に跳躍したのか茶々の大太刀が頭上から落下する。敵が死んだのかさえ確認するのも惜しいとばかりに地面に捩じ込んだモノノケの頭を足場に大きく大太刀を振り回す。短い柄をさらに短く持ったために攻撃範囲は拡大し、茶々を取り囲んでいたモノノケ全体に刃が届く。急所を逃さず大太刀で抉り取り、その場で片足を軸に逆回転すれば、追加攻撃だで抉り放題である。ケラケラと戦闘狂が楽しげに敵を、意思を、威力を抉っていく。倒れそうになったところ、忘れた頃に紗夜の攻撃魔法が「どうも」と落ちて来、トドメを刺していく。トンッと紗夜の攻撃を辛うじてかわしたものの息も絶え絶えなモノノケの肩に茶々はソッと爪先で飛び降りると脳天に大太刀を再び突き刺した。


「倒されちゃ意味ないでしょお?……ボクたちを舐めないでよね?」


顔に飛び散った返り血を乱暴に拭いながら茶々が言った。


「……やっぱり茶々って返り血似合うよね」

「分からないでもないけどさぁ国久、今此処で言うことか!?」

「親バカねぇ」

「……にゃー、と言っておきましょうか」


膜の中でそんなこんなあったのはいつも通りである、うん。哉都は自らの両手を見下ろすと小さく握り締めた。紗夜が貼る防御魔法を破壊しようとモノノケが多方面から攻撃してくるが呆気なく二色の刃の前に撃沈していく。それと同時に茶々の支援もやっているのだから大したものである。と、膜を蹴る者がいた。なんだとそちらを見れば、刻が膜を足場に大きく跳躍したところだった。刻は大きく跳躍し、彼女と同じように跳躍しつつも地面を抉るほどの威力を持つ武器を持ったモノノケに薙刀を振り回す。振り上げと振り下げ。両者共に違う攻撃は相手に凄まじい破壊力を与えて吹き飛ばした。クルクルと空中で体勢を立て直すと刻は空中にまるで足場があるかのように蹴り上げ、一気にモノノケへと迫り行く。だが敵もそれを見越しており、武器を構えて刻を待っていた。ガンッと甲高い音を響かせて再び武器が交差する。軽く押し合いになるがモノノケが刻を弾き飛ばす。後方に距離を取って撤退し、着地した刻の脇を時雨が凄まじいスピードで駆け抜けていく。モノノケが大きく上段から武器を時雨に向かって振り下ろす。が紙一重でかわすと時雨は素早く敵の背後に回り込み、回し蹴りを放った。首を狙った攻撃は容易く敵の手中に落ちてしまう。足首を掴まれた時雨はモノノケの手中から抜け出そうと身を捩るが、敵も簡単に離してはくれない。グルリと手首を回して時雨を振り回すと刻に向かって投げ飛ばした。そしてついでと言わんばかりに武器で二人に切りかかる。が突き刺すように出された刻の薙刀を空中で時雨が掴み、その上でバク転するようにして体勢を立て直し、刻が薙刀を振った。その勢いを使い、大きく上空へと飛び出す時雨の眼下で刻とモノノケが武器をぶつけ合う。その時


「♪~♪~」


上空から響き渡る歌声に刻と刃を交差させていたモノノケの動きが止まった。途端に刻は懐に接近し、薙刀を突き刺した。上段に振り上げられていた武器は刻の攻撃に一瞬動きを鈍らせたが勢いよく刻に向かって落下を開始した。間一髪で腕を使い防ぐ。が上段からの一撃は凄まじく、衝撃波が腕に微かな痺れと頬の一線を加える。それでも刻は体勢を低くするとモノノケの脚を狩り蹴り落とし、胴体に突き刺さった薙刀を強く捩じ込んだ。痺れるような痛みにモノノケが地響きの如く悲鳴を上げる。容赦なく武器を抜き放てば、それと同時に上空から時雨の踵落としが炸裂する。ガンッと鈍い音を響かせてモノノケがクレーターの中に消えていく。時雨が足をゆっくりとした動きで上げれば、パラパラと砂が落ちる。モノノケの顔は完全に変形し、見るも無残な姿へと変わってしまっていた。刻は時雨と背中を合わせながら状況を確認する。とどちらが何を言うまでもなく目の前に迫ったモノノケに向けて攻撃を放った。合図も指示も背中越しの手だけで十分だった。


どんどん明らかになりつつあります。

次回は木曜日です!

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