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初冒険

暗く、ひんやりとした内部は所々にたいまつがあり道を示している。

他の冒険者の痕跡は少なくない、角をなくした牛のような魔物、羽があったであろう先は無残に奪われ死にかけているコウモリのような魔物。

動物といっていいかわからない彼らを哀れむ気持ちはない

しかし、放置された死骸はゲームのように光になるわけでもなく”そこにある”


「無残だな」

「ん?あぁ、仕方ないさ。このように生計を立てているものも多いし討伐してもらわねば近隣の町に被害が及ぶ。」

「...。」

「そうだな、わかってる。でも目の前に見える”コレ”は...正当化するものではないと思う」


きれいごとを口にする顔は歪みなどなくいつもと変わらない表情だ

淡々と事実を告げる口だけが動く

無秩序を呪っているわけでも、命の尊さを説いているわけでもない

ただの感想

明日には変わっているかもしれない、そんな気まぐれ


「君は不思議なところに突っかかるな。私のとってこんなもの風景の一部でしかないよ。」

「そうか、まぁ俺が慣れるまで我慢してくれ」

「...><」


険悪なムードだと勘違いしたのだろうニアがあたふたしている

可愛いからほって置こう


「大丈夫ですよ。喧嘩ではありません。」


にこりと笑う


「そ、そうなの...よかったわ...」

「こんな物騒な奴に挑む奴の気が知れないね」

「その言葉もう一度、お願いしても?」

「お、奥が見えたぞ!」


チッ


聞こえないようにね...。












「きれい...」


ニアがもらすその言葉は肯定する必要もないほど十分なものだった

ひらけた空間には死骸のない綺麗な床

そして、幾千の光が天井にちりばめられていた


「これはヒカリゴケの一種ですね。天井にのみ自生しているのは初めて見ました。」

「これで観光業やってもいいな」

「ツカサは商いの経験が?」

「いや?ないよ?」

「ツカサは変てこだね...」


綺麗な天井に見惚れていると、奥から男の怒鳴る声がした


「あぁ!?渡せねぇってのか???」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!ごめんなさいごめんなさい!!」

「ったく時間かけさせんなよ。戦う度胸もないくせに出しゃばるなゴミが。」

「...。」


あれは?と聞く前に声が耳に届く


「ツカサ、二アを見ておいてくれ。」


スンッ

と音が聞こえた


「王国騎士だ。ブツを渡せ。」


見えた。

先ほどは右となりにいた彼女が男達の元にいる目の前の光景が


「「「ぇええ!!」」」


男2人と声が重なる


「もがみ...のいつものことだから」

「そうなの?」


服をギュッとつかまれる


「貴様らの悪行は見えていた。いますぐ持ち主に返却するなら見逃してもいいが?」


それと、と付け加える


「持ち主への干渉を今後一切禁止する。」

「はァ?なにいってんだよ。」


はっはは、と声が響く


「俺達は仲間さ!こいつは借金があってな?これが返済なワケよ...意味わかる?」


また、大きな笑い声が響く


「本当か?」


コクリッ、少女はぎこちなくうなずく


「ほぉらぁ!!騎士さまよォ...筋違いなんだよォ!!」


少女の顔が曇る、大きな空間に響く下品な声と一緒に。

明らかな隠蔽であった少女は何らかの理由で逆らえない、そんな事実が透けて見えるようであった。

だが証拠はおろか、少女の助けさえ聞こえない。

絶対の正義は悪が悪足りえる理由のために戦う、理由が証拠がなければ正義でなくエゴだ


「聞こえないのか?」


凜とした言葉は迷いなく言葉をつむぐ


「貴様らの悪行は見えていた。いますぐ持ち主に返却しろ。」


静まるのを待たず汚い音が空気を汚染する


「こいつアタマおかしいのかァ?おい、兄ちゃん連れだろなんとかしろよ」

「え、いやぁ...」


ちらりとニアを見る


「大丈夫だよ...?」


大丈夫らしい...。

いや無理でしょ、引っ込みつかなくなってるんだって...


「すみません。いま回収するので...


ザンッ


「「え?」」


「時間は十分与えたな。反逆罪だ今私は貴様らの処刑権を得た。」


時間は止まり男達がつけていた装備が床に落ちる


「お、おまえェ!何してくれてんだよ!!」

「私は王国騎士第一部隊副団長モガミ。」

「え...」

「知らんみたいだから教えてやろう。」


「王国騎士の上位3階級騎士は独断により事件の立証、及び独自の禁止令を行使できる。」



呼吸が聞こえるほど静まる

つまり、こいつらは証拠も何も必要とせずに人を罪人にできる

そして殺すことも国によって容認されている


「おいおい...職権乱用がすぎるぞ...」

「も、もがみは悪いことしないよ...」


(そういうレベルの問題じゃ...)


「お、横暴だ!!俺らはなにもしちゃいねぇって!!!証拠もねぇのにふざけんな!」

「それを決めるのは私だ。止めたくば2階級以上の王国騎士を連れてくるんだな。」

「え、えと...」

「お、お前からもなんとか言えよ!!」

「ひっ..あのこの人たちの...せいじゃ...」

「死にたいようだな...」


刀に力がこもる

刃先の煌く


「わ、わかった!!これだ!!これでいいか!!」

「禁止令も出した。覚えておけ。」

「くっそが...」


走り去る。ふぅ...と小さなため息


「怪我ないか?」

「助けていただいて、どうも...」

「脅されていた内容はなんだ?」

「いや、それは...」

「言え。これは善意ではない勘違いするな、貴様に選択権はない。」

「あっと...」


黙り込んでしまう

余程言いたくないのだろう

それかモガミの見当はずれでこの子は本当に脅されていたわけではないのか

すたたっ

走るニアをみてから遅れて走る


「もがみぃ...いじめちゃ...」

「いっいや!そんなつもりは...!!」

「か、おが怖い!!」


グッ!!!!


「す、すまん...。」


意気消沈だ。威勢どころか気力も根こそぎ持っていかれたらしい


「だ、だいじょうぶでしたか?に、にもつはこれでも...」

「いや!!」


少女は小さな短剣に抱きつく

余程大事なのだろう、他の荷物を拾うとした二アを押しのける


どんっ


その反動でフードが外れた


「あっ!あなた!!」

「!?」

「その髪と目...」

「ご、ごめんなさい!!すぐいなくなりますから!すみませんすみません...」


ニアが走る


「待て」

「え...!?」

「お前は俺の後ろにいろ」


腕をつかみ、二アを隠すように前方へ立ちふさがる

後ろに今にも泣きそうな少女をかかえ、平静を装い話しかける


「なにも取らない、だから顔を上げてくれ」


怒りはない、ただ失望感が自分を支配している

残念な現実

わかっていた事実

差別は当たり前に存在し、人々の脳にこびりついている


「あ、ありがとうございます。」


この子に悪気はない

そう教えられた、教わったのだ。こちらの事情を、常識を押し付けてはいけない。


「気にしないでくれ、」

「は、はぁ...?」

「俺はツカサ、勇者に憧れている冒険者。よろしく。

こっちはモガミ、口は悪いが悪い奴ではない」

「ど、どうも...」


モガミも心中穏やかではないだろうが軽く手を上げる


「それでこの子がニア、俺の大事な仲間だ」

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