神様のいる国
神様のいる国
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お、x国に行くのか?
やめておいた方が良いぞ。あそこには神様がいるからな。
え?神様?
本当にいるぞ。
ん?言ってなかったか、俺はx国の生まれだ。
……どうも信じていないみたいだな。さてどこから話そうか。
x国は元々いくつかの種族が混在していて争いの絶えない国だった。
親戚のおじさんが他所の人間を殺害したら報復で次の日には家ごと燃やされたり、その敵討ちで父親が血まみれになりながら帰ってくることもあったな。
まあ、それでも あの神様が来るまではまだ暮らしていけたな。
それが一変したのは10年前か。
結婚もして子供もいた俺はなるべく恨みの連鎖を増やさないようにおとなしく暮らしていたんだ。
「神様どうか平和に暮らせますようにっ」て祈ったりしてたな。
今ではあんなのにお願いなんて、怖くてできないと思ったよ。
初めはささやかな死亡事故だったんだ。
凶悪で何人も殺した犯罪者が自室で心臓発作を起こして死んでいた。
車の窃盗犯が車を物色中に自損事故で死亡した。
マフィアが抗争で普段なら絶対にありえない数の死者を出して壊滅した。
誰もが「死ねばいいのに」と思った人間が突如謎の死亡を遂げたんだ。
それこそ昔のコミックのデスノートとかウルトラスーパーデラックスマンみたいにね。
あの時はみんな表情は明るかったな。なにしろ国の迷惑な奴がどんどん消えていったんだから。
なにしろあの時からX国の犯罪率は0%になったんだから。
この国は神に守られた国。正しい行いをしていれば幸せに暮らせる国ってね。
誰もがそう思っていたんだ。
それが恐怖に染まったのは神様が現れてから2年目くらいかな?
犯罪者が消えて刑務所が不要になった時。
近所のうるさい婆さん『たち』が急に死んだんだ。
なんというか、多様性が無くなったんだな。
今までは犯罪を犯さなければ死なないと思っていたんだが、犯罪者がいなくなったことで次の「神様にとっての」犯罪者が死んでいったんだ。
仕事がきつくて愚痴を言ったとか、泥酔したとか始めは規則性があった。
だがそうして気に入られなかった人たちが死んだ後、x国には従順で一切口答えをしないような人間だけが生き延びたんだ。
しかも彼らは常に死の恐怖におびえている。ささやかな事でも神様の気に入らないことなら死ぬんだからな。
ある人間は神様から殺された人間のパターンをデータ化してどのようにしたら殺されるのかを纏めて対処マニュアルと書いて
ネットに流す前に死んだ。
自分の行動を糾弾されたようで嫌だったんだろうな。
だから「法律」として銘打って、さも自分達の意志で作成したかのようにマニュアルを書き換えたらセーフだった。
気に食わない表現方法を使えば殺されるんだろうな、と誰もが不文律として
さっきまるで「コミックのよう」と言ったけどあれとは全く異なる点が一つある。
それは相手が弱点のない本物の神様と言う点だ。
何しろ人を殺害こそすれその姿は誰も見たことが無い。
刑務所の防犯カメラとかでも姿は映らなかったしな。
多分、精神体とかエネルギー体とか人間では傷つける事ができない存在じゃないのか?
だから、こちらからは絶対に反撃できない。攻撃の手段はない。
逆に神様はこちらの活動をいつでも監視出来て、全く反撃を受けずに殺すことができる。
生き延びるには神様の気に入る行動をとり続けるしかない。
さらに神様は気まぐれ。
どうだ?これじゃ完全に暴君に仕える奴隷だろ?
おまけに人間なら対抗のしようもあるけど相手は神様だ。
歯向かうなんてできっこないんだよ。
だから、もう一度いう。
やめておいた方が良いぞ。あそこには神様がいるからな。
え?そこまで凄い相手なのに陰口を叩いても大丈夫なのかって。
大丈夫大丈夫。あそこからこの国は遠い、おまけに向こうは夜だ。神様だってこの時間には寝ているのさ。
あれ?さっきからお前音声チャットをつけっぱなしだけどどこに繋げてたんだ。
へ?x国につなげようとして失敗していた?
誰も出てこない?