異世界勇者は助太刀する
よろしくお願いいたします!
覚悟を決めて、争いの現場に行くと。
酷い有様だった。
人間、モンスター双方に被害が出ている。
近くの木の根本には、胸に剣が刺さっている鎧を着けたピクリとも動かない人間がおり。
地面には魔法が炸裂し、のたうち回っているモンスターがいる。
どうやら人間の方は、とある馬車を守るように戦っているようで、モンスターは無差別に手当たり次第、暴れ回っているようだ。
モンスターは毛深い豚が二足歩行し、服を着ているような姿をしており、あの無駄に名前がカッコいい豚によく似ていた。
あいつはモンスターだったのか。
取り敢えず、人間の方に助太刀すれば良いんだよな。
良いらしい。
ただ、俺があのモンスターに勝てるような力を持っているとは思わないんだが。
持っているらしい。
腕力でも魔法でも、どちらでもいけるらしい。
せっかくだから魔法でいくか。
俺は一端、場をリセットする意味でも大声を出す。
「助けはいるか!?」
その声に、争っていた人間とモンスターは動きを止めた。
先に我に返った人間が俺に返事を出してくる。
「すまん!頼む!」
言葉は分かる。
人間たちは明らかに日本人では出せないような彫りの深い顔をしていた。
あの女はちゃんと、仕事をしていたみたいだ。
それよりも許可が出た。
何をすればいいんだ。
勘に従い、モンスターへ向けて手を握り曲げ呪文を唱える。
「圧縮!」
瞬間、モンスターの足がミシミシと音を立て、縮んでいった。
最後には縮むところがなくなり、足が完全になくなった。
モンスターは立っていられなくなり、転倒した。
まだ、モンスター全体を覆えるほどのレベルにはなっていないみたいだ。
人間はあ然としている。
自分を苦しめていたモンスターが簡単に転倒したためだろう。
「呆けている暇があったら、止めをさせ!」
俺の怒声を聞いた人間が慌てて剣をモンスターの首に突き刺す。
これであと何体だ?
三体か。
周りに転がっている死体の数を数えると、俺が魔法を使ったモンスターも含めて七体。
半分以上は倒していたことになるな。
人間は四人ほど亡くなっているみたいだから、損害も大きいみたいだがな。
ま、何とかなるだろ。
残りの三体にも同じく圧縮をしていく。
一回呪文を唱えた後は、唱えなくても魔法が出るみたいだ。
良かった。
いちいち呪文を唱えるとか、前の世界の名残が残っている俺にとってはハードルが高すぎる。
イタ過ぎて。
よし、残りのモンスターも止めをさしたみたいだ。
お読みいただきありがとうございました!




