異世界勇者は森にいた
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眩しさから解放された俺は、ようやく目を開けることができた。
ここはどこだ?
まあ、人里には見えない。
なんたって辺り一面が森、森、森だ。
あの女、とんでもないところに送ってくれたもんだ。
いつか必ず、何かしらの手段で仕返ししてやる。
そう言えば、彼女は大丈夫だろうか。
大丈夫らしい。
俺の勘が言っている。
しっかし、ここからどうするか。
あの女は、モンスターが跋扈するとか言ってたな。
そう言えば、さっきからギャーギャーとかクワクワとかウホッ良い男ウホッ良い男とか聞こえてくるんだよなあ。
最後のやつは明らかにモンスターじゃないだろう。
普通に言葉喋ってたし。
ここにいるとやばいって、俺の勘もさわさわしてるしなあ。
取り敢えず、勘の赴くままに進んでみるか。
一時間ほど歩いたが、モンスターにも人にも会っていない。
いや、モンスターには会わなくていいんだが。
それよりも少し腹が減ってきたな。
今日は、というか死ぬ前か。
朝ご飯しか食べてないからな。
死んでからどのくらい経っているか分からんが、さすがに腹は減るわなぁ。
まあ、数日経っているってあの女も言ってたからな。
結構、時間は過ぎているだろう。
そう言えば、新たな身体で転生ってあの女は言っていたが、俺はどうなっているんだ。
鏡がないから顔は分からんが、身体つきはあんまり変わってるようには見えない。
まあ、十何年過ごしてきているから俺的には前の方が良いな。
愛着あるし。
そう言うと、ナルシストみたいだから黙っとこう。
いや、と言っても。
何か食べるものがあると良いんだが。
そう思っていると、勘がしきりに騒ぎ始めた。
何か食い物を見つけたらしい。
勘の赴くままに進んでいくと、謎の実が生い茂っている場所に着いた。
「なんだここは……」
色は黄色、形は三角、大きさは一個三センチほど。
それがブドウのように、房ごとになっている。
「これ、食えるのか……」
前の世界では、見たことのない果物だ。
っていうか、そもそも果物なのか。
ただ、俺の勘はしきりに、食べろ食べろと囁いてくる。
「取り敢えず食べとくか」
これまで何度も、俺を助けてくれた勘を信じて、一房もいで一粒食べてみる。
「うまい……」
尋常ではないほどうまかった。
味はレモンに似ているが、適度な酸っぱさと程よい甘さ、独特の旨みがあった。
しかも、割りと一房で腹が満たされてきた。
もう一房食べれば満腹になりそうだ。
満腹になった。
まだまだ生い茂っているから何房か、いや、持てるだけ持ってけと勘が騒いでいる。
「つってもなぁ」
何せ容れ物がない。
と思ってたら、俺の勘が女にもらった能力を使えと言ってきた。
そう言えば、すっかり忘れてた。
俺はどんなものをもらったんだ?
まあ分からんので、勘が言ってきた通りに呪文を唱える。
「アイテムトランク!」
これで何も起こらなかったら、ただのイタイやつだと心配したが、それは杞憂に終わった。
空間がパカッと穴が空いた。
中を見ると、グネグネに歪んでいる紫色の空間。
これ入れて大丈夫なのか。
大丈夫らしい。
目につく妙なその果物を、片っ端から入れていった。
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