表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/34

異世界勇者は案内される

よろしくお願いいたします!

 ふむ。

 そう来たか。


「ちなみにうちはどの辺に?」


「……すぐそこ」


 マリは本当にすぐそこの建物に指を差した。

 どうやら逃げているうちにそんなところまで来ていたらしい。


「俺が行っても大丈夫なのか?」


「……」


 無言のまま、こちらを見つめてくる。

 俺はポッケからグモンの実を取り出し、手に持つ。

 マリは頷く。


 俺はポイッと放り投げた。

 マリは慌てて丁寧にキャッチする。


「前払いだ」


「……ありがとう」


「案内してくれるか?」


 マリはまた頷いた。


「……こっち」


 マリは俺の手を取り、その建物へと誘導する。

 まだまだ小さな女の子なので何とも思うことはないが、少しギクッとするのでやめてほしい。

 事案になるから。


 やがて十メートルほど歩くと、目的の場所に着いた。

 小さな古ぼけた家だ。

 しかし、何というか神聖な感じがするのは、入り口の上の方に十字架がついてあるからだろう。

 教会か何かなのか?


 マリは入り口の扉に手を掛けて引いた。

 ギ、ギ、と油が足りないのか軋んだような音を立てながら開ききった。


 そして、案内されるままに中に入ると。


「あ!マリお姉ちゃんだ!おかえり!」


「おかえりー」


「おかえいー」


 三人のちびっ子たちが駆け寄ってくる。


 ふむ、託児所かここは?


「……」


 と、視線を感じたので、下を見るとさらに小さな四人目。

 指をくわえながら何故かこちらの顔をじっと見つめてくる。


「お兄ちゃん誰?」


「誰ー?」


「だえー?」


 ちびっ子三人組みが俺に気付き、近付いてくる。


 ふむ。

 ここでなめられるわけにはいかない。


「がおー」


 両手を振り上げてちびっ子たちを驚かせようとする。


 ギシッと建物が軋む音がした。


「お兄ちゃん変な人」


「変な人ー」


「へんなひとー」


 ふむ。

 なめられてはいないようだが、変人だと思われたようである。

 まあ、ある意味目的は達成したので良しとしよう。


 一番ちっこいのは相変わらずこっちを見ているが。


「でも、チムが初めて見た人を怖がらないのは珍しいかな?悪い人ではないのかも」


 うんうん。

 一番年上の女の子が頷いている。

 真似して他の二人も頷いている。


 と、そこでマリがいなくなっていることに気付いた。


 どうやらあそこの扉から違う部屋に行ったようだ。


 このちびっ子たちを何とかしてほしいものだ。


「ここは孤児院なのか?」


 疑問に思ったことを口に出す。

 別に質問したわけではなかったが、ちびっ子三人組みが反応した。


「孤児院って何?」


「何ー?」


「なにー?」


 ふむ。

 マリよ早く帰ってこい。

 っていうかこっちから行ってやろう。


「マリがどこに行ったか分かる?」


 今度はちゃんと質問する。


「隣の部屋だよ」


 一番年上の子が代表して答える。

 その指は近くに見えている扉を差していた。

 やっぱりか。


「案内してくれるか?」


「いいよ」


 こっちこっちと手を握り案内してくる。

 君ら警戒心なさすぎだと思うよ、うん。


 扉のところまで来て、年上の子が無造作にノブを捻った。

 あっ、ノックした方が……。


 俺の目に飛び込んできたのは肌色。


 マリはタオルを手に持ち、服をはだけさせている女性の身体を拭いている。


 とりあえず、だ。

 目に焼き付ける。

 こっちの女性はみんなスタイルがいいな。


 と、こちらに気付いたのかその女性が目を向けてくる。

 ギンっとした強い視線だ。


「なんだテメーは?」


 視線だけじゃなく口調も強い。

 なまじ顔が整っているだけにすごい迫力だ。

 その言葉でマリも気付いたのか、目を見開いてこちらを見つめてくる。


「どうも初めまして」


 俺は丁寧にお辞儀する。

 きっと大丈夫。

 話せば分かってくれるはずだ。

 

 神が人類に言葉という素晴らしい道具を授けてくださったのは、きっとこういう時のためだ。


「素晴らしいものをお持ちだ」


 おっと。

 思わず口が滑った。

 素晴らしい道具というのは、その使い方を誤れば時としてこちらを追い詰めるものである。

 

「とっとと出て行きやがれ!」


 枕を投げつけられてきたので、咄嗟に扉を閉めた。


 扉の向こうでボフっという音がした。

お読みいただきありがとうございました!


よろしかったら、ページ下部にあるブクマや評価をつけていただけると嬉しいです!

感想もお待ちしております!辛口希望!


当方のもう一作「その箱を開けた世界で」もどうぞお楽しみください!


あと、こっちはもう一話投稿したら暫くお休みするかもしれません!

ご了承ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ