異世界勇者は面白がられる
よろしくお願いいたします!
列にならんで少し待ち、新しい受付嬢。
こっちも美人。
少し日に焼けたような褐色の肌と元気そうな笑顔がチャーミングポイントだろう。
健康美人ってやつだな。
「いらっしゃいませっ!君おもしろいねっ!」
「ん?」
いきなりそんなことを言われて俺は首を傾げた。
そんなに面白いことをやった覚えはないのだが。
俺がやったことと言えば、男共に絶景をプレゼントしたことくらいな気がする。
「自覚がないんだねっ!あの爆弾王女の手を振り払ったり、その後話しかけに行ったり、終いにはでんぐり返しで逃げるなんて、この冒険者ギルドにいる男子たちにはできないよっ!」
「まあ、冒険者ギルドに来たこと自体、今日が初めてだったので」
「冒険者ですらないなんてねっ!」
腹を抱えて笑っている。
本当に元気にコロコロ笑うな。
良いことだ。
うむ。
「ところで、冒険者登録をお願いしたいんですが」
「ああ、ごめんねっ!ぼく、些細なことで笑っちゃうんだよねっ!笑いの融点が低いというかっ!」
「それを言うなら沸点では?」
「あっ!そうだったっ!」
そう言って、またコロコロ笑う。
こっちの世界も沸点とか融点とかあるんだね。
案外、発達した世界なのだろうか。
「そう言えば、さっきイズルの列にならんでいたよねっ?その時、登録しなかったのっ?」
イズルっていうのは、俺が逃げだした受付嬢だろう。
「実は先立つもの、というか登録料がなくて登録が出来なかったんです。そこでこれを買い取ってもらおうと思いまして」
「んっ?」
俺はまた、ポッケから一粒実を取り出す。
元気っ娘はじぃと、それを見つめるが、やがて目を見開いた。
「……これって?!」
「グモンの実っていうらしいですね」
「やっぱりっ!」
うわぁ、初めて見たなぁ!
彼女はやっぱり笑顔を浮かべながら、俺の手の平に乗る実を見つめている。
「こんなの売ったら、100回登録してもお釣りが来るかもっ!」
「ふーん。やっぱりそうなのか」
俺がそんな反応をすると、元気っ娘は訝しげな顔をする。
「んっ?イズルにそう説明されなかったのっ?」
「これ1個じゃ1万にはならないから、もっと持っていないのかって聞かれました」
「……」
元気っ娘は突然、頭を下げた。
「申し訳ございません!こちらの従業員の不祥事です!」
おい、周りの奴等がどうしたって目で見てるからやめてほしいんだが。
まあ、今さらか。
「ああ、いや。別にあなたに謝ってもらうことではないですよ。まあ、気を付けた方が良いとは思いますが」
事実、今回の話が広まれば、ギルドに対して不信感を持つ者が出てくるだろう。
いくら冒険者未登録の初心者だからといって、大分ボッタくろうとしたのだ。
俺も勘がなかったら危なかったかもしれない。
ん?
そう考えると、俺も怒っていいような気がしてきたぞ。
プンスカ。
「申し訳ございません!イズルに直接謝罪させます!」
「いや、いいですよ。そう言う人物だということで、こちらの方で覚えておけば良いだけですから。それよりもこれ買い取っていただけないですか?」
「さ、左様でございますか。買い取りについてはもちろん、早急にさせていただきます!念のため、鑑定させていただいてもよろしいでしょうか?」
「……鑑定?」
そういう便利な代物もこの世界にはあるのか。
掘り出し物とかも分かったりするのだろうか。
「鑑定とは買い取り品の詳細を、魔法を使って調べる作業になります!冒険者ギルドには、鑑定士協会から派遣されてくる鑑定士が何人か必ず詰めておりまして、鑑定士が持つ゛鑑定゛という魔法を使い確認させていただくことになります!」
鑑定魔法を使える人は中々、珍しいんです!
元気っ娘は最後にそう付け加えた。
「分かりました。なら私が見ている前で鑑定をお願いしますね、念のため」
「しょ、承知しました!すぐに連れて参ります!」
俺の知らないところで勝手にすり替えられたりしたら嫌だからな。
まあ、まだまだ腐るほどあるから、特に気にしなくてもいいと思うんだが、念のためだ。
我ながらケチ臭いものだ。
まあ、俺は庶民的だからね、しょうがないね。
少し待っていると、元気っ娘が戻ってきた。
後ろからはでっぷりと太った男が着いてきている。
おいおい。
なんかあいつも怪しいぞ。
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