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異世界勇者は質問される

よろしくお願いいたします!

「どうどーう」


「ワタシをウーマみたいに扱うな!」


 どうやらこちらの世界にも馬みたいな生き物がいるようである。

 いや、違うな、ウーマか。


「それで、エイリーさん」


「……何よ」


「自分の髪の毛の色と合わせるとは、中々通ですね」


 エイリーは俺に何を言われたのか一瞬で理解し、わなわなと顔を赤らめる。

 大丈夫か、倒れるんじゃないか?


 カルシウム取った方がいいぞ。

 こちらの世界にあるかは分からないが。


「……このっ!!」


 また、足を出してくることを勘が知らせてきたので、横にずれしゃがみこむ。


 ベストポジションである。


 しかし、エイリーはそれに乗らず、獲物がかかった、という肉食獣のような表情を見せた。

 先ほどの動作はフェイントだったらしい。


 そのまま、ぐーで殴ってきた。

 やはり冒険者。

 いくら女と言っても、ビンタではないようだ。


 俺は冒険者の無常に悲しみながらも、飛んできたエイリーの手を。


 そのまま、受けた。


 あえて大袈裟に後ろに飛んで拳の衝撃を和らげる。


 エイリーは俺の策に気付かなかったようで。


「ちょっ?!」


 慌てた様子で俺のところに駆け寄ってきた。


 揺れている。

 どこがとは言わないが。


 冒険者の男どもの視線が上下しているのが見える。


 絶景かな。


「なんでアンタ避けないのよ?!」


 当てるつもりで殴ってきたんじゃないのか?

 じゃれ合いというには、容赦なかったような気がしたが。

 まあ、そこには触れず。


 俺は頬をさすり、痛みに耐える演技をしながらエイリーに答える。


「失礼なことを申し上げてしまいましたので。いくら本当のことでも軽率でした」


「本当のこと?」


「あなたがきれいだということです」


「?!」


 え、そっち?!というように勘が首を傾げたので、想像で腹パンをして黙らせようとしたがかわされた。

 想像でも俺の勘は働くようだ。


「な、な、何を?!」


「いくら本当にきれいだとしても、女性が恥ずかしがるようなことを申し上げるべきではなかった。本当に申し訳ございませんでした!」


 俺は両手両膝を付き、これが日本の誠意の見せ方だと、世界に誇るジャパニーズ土下座を見せてやると意気込むと。


「ちょっ、ちょっと?!いいから!そんなことしなくていいから!」


「すいませんでした!」


 俺は額をつける。

 フリをして、上をチラッと見上げる。


 うむ。

 二つの意味で絶景である。

 まっこと素晴らしきかな!

 日本の土下座というものは!!


 俺が土下座に対して、そんな失礼な思考をしていると。


「あ、頭を上げなさい?!べ、別に怒ってないから!!ただちょっとびっくりしただけというか……」


 その言葉の真偽を確かめようと頭を上げ、その表情を、ついでに違うところも見やると。


 ふむ。

 顔は赤くて不機嫌そうだが、確かに拳が飛んでくることはもうなさそうだ。


 安心した!


「そのようにおっしゃっていただけるなら」


 俺は土下座を解いた。

 土下座を解くなんていう言葉、初めて使ったな。


「そ、それで!あ、あんたはワタシに何の用なのよ?」


 自らの髪の毛をクルクルさせながら、エイリーが俺に聞いてきた。


「ええ。実は冒険者登録をしようとしたんですが、先立つものがなくて」


 俺はポッケのアイテムトランクから、先ほどあの性格の悪いらしい受付嬢に見せた、未だにその正体が分からない謎の実を取り出した。


 エイリーは、俺の手の平に乗る謎の実を見て胡散臭いという表情をしたが。


 その表情はやがて、何かに気付いたというようにハッとしたものになった。

 驚きを隠せないといった様子だな。


「……これをどうしようとしたの?」


「ここでは素材などの買い取りを行なっているということを受付嬢から聞いたので、登録料1万ジェルの足しにするため売ろうとしました」


「……受付嬢は何て?」


「これ一粒では1万ジェルには届かない、他にも持っているなら届くかもしれない、と」


 その話を聞き、エイリーが険しい表情を見せた。


「……それであんたはどうしたの?」


「逃げてきました、あそこから」


 俺は先ほどまで受付嬢がいた場所に指を差す。

 うん、やっぱりいなくなってるな。


「……これ、どこで手に入れたの?」


「この街の近くの森で」


「……森がものすごく深いところだったと思うんだけど?」


 なんだ、この女。

 さっきから質問ばっかりだな。


「スリーサイズは?」


「……はっ?」


 セクハラチックな俺からの逆質問に目が点となるエイリー。


「スリーサイズは?」


 俺は同じ言葉を繰り返す。


「……あ、あんた?!」


「さっきから質問ばっかりだったので、私も質問しました!教えていただけたら、あとは何でも答えます!」


 俺は元気に、とても良い笑顔を浮かべて、そう答えた。


 今のエイリーの様子からこの実はどうやら、すごいものだということが分かった。

 それだけ分かれば充分だ。

 あとはもう彼女から逃げよう。


 そう思って、セクハラチックさせてもらったが。


「……ここで言わなきゃダメ?」


「……はっ?」


 今度は俺が目を点にする。


 なんだこいつ、痴女か?

 俺の勘もそれは予想してなかったというようにエイリーに感嘆の意とともに拍手を鳴らしていた。

 どうやって鳴らしているんだ?

 それよりもこの状況から脱出する方法を教えろ!


 自分で考えろいうことだ。

 チッ、肝心なところで使えない。


 俺の沈黙をどう捉えたのか分からないが。


「バ、バス……」


「あいや、待たれい!」


 俺もシェーリーの口癖が移ってしまった。

 シェーリー元気かなー。

 まあ、さっき別れたばっかだから元気か。


 思わず、現実逃避してしまったが。

 この女、とち狂ってんのか?


お読みいただきありがとうございました!


よろしかったら、ページ下部にあるブックマークや評価をつけていただけると嬉しいです!


当方のもう一作「その箱を開けた世界で」もどうぞお楽しみください!


よろしくお願いいたします!

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