異世界勇者はコントする
よろしくお願いいたします!
「あんた……」
俺に素晴らしい光景を見せてくれた女が話しかけてくる。
一応、後ろを振り向く。
ふむ。
柱しかない。
「あ、あんたよあんた!」
女が勢い込んできた。
髪はピンク、顔は絶世の美人、おまけに発育も良いときたもんだ。
ナンパされるのも分かる。
俺は頷きを入れた。
「何いきなり頷いてんのよ?!何に納得してんの!?」
ただ、性格が悪いという訳ではないだろうが、少々、いや結構、荒ぶっている。
こういう人物はよくよくトラブルを運んでくるものである。
俺は首を横に振り、ピンク髪から離れようとした。
「ちょっと?!何ダメだこいつみたいな表情で首ふりながら、しれっとどこかに行こうとしてんのよ!」
洞察力が中々高い。
ツッコミのスキルも高いようだ。
女が手を伸ばして来たので、俺はそれを。
振り払った。
関わらんが吉である。
俺は突然、ダッシュして受付の列に並ぶ。
一番すいているとこだ。
周りが少し、ざわめいている。
「お、おい?!あいつ何もんだ!?」
「゛爆弾王女゛の手を振り払うなんて、あいつ死んだな」
どうやら厄介な二つ名を持っているようだ。
さっき扉から飛んできた男は、何であんなのをナンパしたんだ?
なるほど。
「でも、爆弾王女からあんな風にちょっかいというか絡まれてきたら、俺はホイホイっとなっちまいそうだぜ」
「ああ。性格が荒いという欠点を補って有り余るほどの見た目をしているからな」
周りのざわめきが答えを出していた。
まあ確かに、見た目だけに目を向ければ、受付嬢たちを上回るほどのものに見えるからな。
俺に手を振り払われた女は動きを止め、呆然とこちらを見ている。
今まで、そのような態度を自分に取ってきた男がいなかったのだろう。
あの容姿だったら、取っ替え引っ替え出来そうである。
だから他の男を漁るんだな!
この爆弾王女が!
そんなことを考えている内に列が捌けていき、自分の番になった。
「すいません!冒険者登録をお願いします!」
俺は軽く頭を下げる。
美点とも欠点とも言える日本人の癖だ。
受付嬢は少し、あ然としている。
俺が爆弾王女から絡まれたのを仕事をしながらも見ていたようだ。
ちゃんと仕事に集中しろ!
この美人が!
その上で、俺が冒険者でもないただの一般人だったことに驚いているみたいだ。
そんなことはどうでもいいのだ。
軽く頭を下げても聞き入れてもらえないのなら。
「申し訳ございません!わたくしが冒険者になるなんておこがましい限りですが!どうか!どうかあなた様のお力で登録をお願い出来ませんでしょうか!」
そう言って、受付嬢の目の前で床に両膝をつけ始める。
ちゃんとこの丁寧な気持ちも言葉で伝わってるのか心配になるが、どうやら大丈夫らしい。
俺がジャパニーズ土下座のお手本を見せてやると意気込んでいると。
「あ、も、申し訳ございません!もちろん登録はさせていただきますとも!だからそんなにかしこまらないでください!」
「すいません!お願いします!」
ちょっと面白くなってきたから、そのままお願いし続ける。
「家の妹が病気がちなんです!でも兄ちゃん思いのとても良い子なんだ!妹の病気を治すためにも俺は絶対に冒険者にならないといけないんだ!」
「だから登録いたしま……」
「俺は絶対に諦めないぞ!」
「話を聞け!!」
受付嬢の怒鳴り声でコントは終わりを迎えた。
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