異世界勇者は熱くなる2
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ロングリー様の父親は余程体調が悪いのだろう。
同じ部屋の中でこれだけうるさくしたのに全く起きる気配がない。
今も寝苦しそうな顔を見せて、目を閉じていた。
「おいたわしい」
ロングリー様は自らの父親の様子に顔を歪め、呟いた。
しかし、気丈な表情を見せ、一つ頷きを入れた。
俺が渡した謎の果物を取り出す。
「お父様、起きてください」
「うっ……」
ロングリー様からの催促に苦しそうに呻くと、父親はやがてうっすらと目を開けた。
「……やあ、キューテか」
娘を見た父親が、その目に優しげな感情を乗せる。
「はい。娘のキューテにございます」
ロングリー様は父親に寄り添い、やせた手を握っていた。
「……良かった。一目見たいと思っていたんだよ」
父親は自分の娘であるロングリー様を見て、苦しみながらそんなことをのたまった。
「何をおっしゃっているのですか?!」
父親の弱音とも取れる発言に、ロングリー様は思わず叫んだ。
「……私はもう、長くはないだろう。お前を残していってしまうことを許してほしい」
「何をっ?!」
ロングリー様はさらに云い募る。
そんな娘の気も知れず、父親はそれから辺りに視線を回すと俺のところでピタっと止めた。
「……娘のことを頼んだよ」
そして、なぜか俺にそんなことを言ってきた。
「はん」
俺は思わず鼻で笑った。
シェーリーが俺を、目で咎めてきた。
これが笑わずにいられるか。
「お言葉ですが、お父様。あなたはそれで後悔しないのですか?」
「……何だと?」
「ご自身でお気づきにならない?せっかく自らの元にやってきた娘を、あなたのことを助けようと一生懸命駆けずり回っていた娘を、あなたは否定したんだ」
「……おいっ!」
シェーリーが俺のことを止めてくるが、構わず言ってやる。
「その努力も、その思いも、その苦労も全て否定し、自分だけ楽になろうと甘えたことをぬかした。これから残される娘があなたの政敵にどのような目に会わされるだろうことも考えずにだ」
ロングリー様は呆然と俺を見ていた。
俺はさらに畳み掛ける。
「あげくその場にいた見知らぬ男に娘を頼んだ、だと?!これが笑わずにいられるか!」
俺のその言葉に、ロングリー様の父親はしかし何も言い返すことが出来なかった。
シェーリーも言葉を失っていた。
「……私にどうしろと言うのだ。病に倒れたこの私に」
父親の弱音とも取れる追加の発言に、それでもロングリー様はその手を強く握った。
「生きろ。生きるんだ」
俺は続けた。
「諦めないあなたの娘は奇跡を起こした。奇跡を起こし、命を失うかもしれない状況で俺という人物に出会い、奇跡を起こし、俺からあなたを助ける術を受け取ったんだ」
ロングリー様。
俺はポウっとしていた彼女に声をかけた。
「食べさせてあげてください」
俺はそれだけを告げると、脇目も振らず部屋の外へと出ていった。
また、柄にもなかった。
恥ずかしっ。
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