異世界勇者は街に入る
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門の前に長く出来ている列に並ばなければならないかと思ったが、ロングリー様の馬車が門兵の方から見えたのか、そこから一人走り寄ってきた。
馬車の前でひざまづいた。
「ご苦労様です。急用です。お願い出来ますか?」
「はっ!」
どうやら結構な大物か、ロングリー様は。
一行は全員、素通りで街の中に入ることができた。
何か聞かれたらどうしようと馬車の中でビクビクしていた俺はホッとした。
勘は、だから大丈夫だと言っただろう、と言わんばかりにため息を吐いているように聞こえたが。
俺の勘、もはや人間じゃないか?
そして、門を潜り抜けた先に広がっているのは、まるで前世とは別世界だった。
あれは獣人、ってやつか?
頭の両サイドにケモミミだ。
あそこでは見たことも聞いたこともないような生物が荷を引いている。
前世だと、持ってればそれだけで捕まりそうな剣を当たり前のように背中にぶっ指しザ・戦士みたいな恰好をした男や、杖を持って黒いローブを身にまとっているコスプレしているようにしか見えない恰好をした女もいる。
む、あれは武器屋か?
ちっこいオッサンがでっかい声で客引きをしている。
うちの装備がなんとやら。
市場みたいなところもあり、声があっちこっちから張り上げられ活気に満ちている。
正直に言おう。
心踊った。
思わず夢中になって見渡してしまうほどだ。
「ふふっ」
すると近くから笑い声が聞こえた。
ロングリー様だ。
「良かったです」
「何がです?」
「楽しそうで」
恥ずかしっ。
「小さなこどもみたいにワクワクとした表情をしていました」
恥ずかしっ。
「……それはお目汚しをしました」
「とんでもない!とても可愛らしかったですよ!」
恥ずかしっ。
「でも、申し訳ございません」
何がだろう?
「何がでしょうか?」
「ゆっくり見せて差し上げることが出来るほどの時間がありません」
「ああ」
何だ、そんなことか。
「この街は逃げませんので。今は何よりもお父様を優先していただければ」
「……ありがとうございます」
彼女の目線は自らの父親が待つ場所に向いていた。
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