異世界勇者は疑問に思う
よろしくお願いいたします!
そう言えば、何で彼女らは俺をこんなに引き止めるのか。
助けた礼をっていうわりには必死すぎる気がするんだが。
勘は分かっているみたいだが、教えてくれない。
っていうか俺の勘って、意識でも持ってるんじゃないかっていうくらい臨機応変に対応するよな。
自分のことながら不思議に思う。
まあ、取りあえず話だけでも聞いてみるか。
「それで。ロングリー様たちはなぜ、こんな得体の知れない男を引き止めようとしているのでしょうか?」
女騎士がバッと俺の前に躍り出た。
「は、話を聞いてくれるのか?!」
その顔は涙と鼻水まみれで汚れていたが、なぜか俺にはそれが綺麗に見えた。
まあ、もともと美形だっていうのもあるんだろうが。
「まあ、聞くぐらいなら」
「あっ、ありがとう!」
そう言って女騎士は俺の手を掴もうとしてきた。
俺はそれを。
避わした。
「なんで?!」
「手を洗ってこい。あと顔も」
俺にそう言われてようやく、自分の有り様に気付いたのか。
ハッとした顔をして、そそくさとどこかに行こうとする。
綺麗なのに、どこか抜けてるな。
残念系女騎士。
あ。
戻ってきた。
「わたしが帰ってくるまでに逃げないように」
「チッ」
「やっぱり逃げようとしてたな?!おい!あなたも一緒に来い!」
「やだ」
「やだじゃありません!お願いですから一緒に来てください!」
最後は懇願するような感じになってきた。
さすがに哀れに思ったので、その感情を目に乗せて伝えた。
「やだ」
「表情と言葉が一致していない!!そんな可哀相なものを見る目で断らないで!」
いよいよ本気で泣きそうだったので。
「はぁ。分かったよ」
女騎士と一緒に洗いに行くことにした。
「おい、隊長にも春が来たぞ」
「みたいだな」
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