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夏休み 決戦!8

 一方その頃。


 花音と源竜と美晴の三人は、順調に地下を制圧していた。そもそも美晴の能力で銃弾も刀もなにもかもが効かないため、組織の男たちはどうすることもできない。右往左往しているところを、花音の爆発力で吹き飛ばされて気絶する。そんなことが続き、ろくに抵抗もされずに、三人は今、最下階に続く階段を下りようとしていた。


「この下に、ラスボスがいるとみて間違いないのかしら」

「わからん。が、なんにしても、組織の人間は全員潰すだけだ」


 源竜と花音の短い会話を素通りし、美晴が下りていく。美晴が造り出す半透明の盾によって、突然の銃撃にも対応できるからだ。

 その後ろを源竜、花音と続き、着いた先にあったのは、両開きの白い扉。見渡す限り、扉の他には何もない。そして三人は、扉の向こうに確かに人の気配を感じた。


「行くわよ」


 美晴の言葉に、二人が頷く。美晴は、扉に手を重ねると、一気に押し開いた。来るであろう銃撃、あるいは斬撃に構える三人。

 しかし、なんの攻撃もなかった。


 だだっ広い、何もない空間。当然だが窓の一つもない。蛍光灯が部屋を白く照らし、目が痛くなるほどだった。

 その中央に立つ、一人の男。広い背中の上から黒いジャケットを羽織り、髪をオールバックで整えた男からは、それまでの敵とは異なる威圧感が放たれていた。


「君がリーダーってとこかな?」


 源竜が問う。


「いかにも、俺がこの組織の頭領だ」


 男の張った声は、源竜よりも若く感じられた。推定年齢、三十歳過ぎ。

 男は源竜から目をそらし、花音に語りかけた。


「国破の坊主が世話になったな。笠井の件も、お前がやったんだろう?」


 花音はぴくりとも表情を変えず、平然と答える。


「そうよ。でも、初めに手を出してきたのはそっち。私は返り討ちにしただけ。国破家はパパが徹底的に潰したはずだから、保釈金を積む人間なんていないと思っていたのだけれど。あなたがやったのね?」

「そうだとも。あいつの能力は多少は使えたからな。結局あのザマだが」


 たかが一組織にしては、花音が確認した武器の数はあまりにも多かった。おそらく、国破産業が資金と武器とを供給していたのだろう。

 美晴が口を開く。


「あなたにかける情けなんてない。私たちに手をだしたことを悔いて無様に敗北しなさい」


 その言葉が発せられるや否や、花音の能力が発動した。花音が地面を踏み鳴らす。たちまち花音の体が光りだし、電撃が空を伝った。電撃は男を襲い、無力化するはずだった。


 しかし、電撃は一瞬のうちに消え失せた。まるで初めからなかったように。花音の輝きも失われる。


「その技は、監視カメラでもう何度も見た」


 男の口角が、にやりとつり上がる。花音は、国破戦を思い出した。


「まさか国破と同じ能力!?」

「違うねえ。俺をあの自惚れ小僧と同じにするんじゃあない」


 男は嘲笑する。今度は、美晴が能力を発動する。美晴が拳を握ると、空間が歪み、半透明の巨大な拳が発生した。国破と同じ能力であれば、この攻撃は破壊しにくいはずだった。

 ところが、美晴の作り出した拳はいとも簡単に消滅した。美晴の意志は関係なく。


 続いて、源竜の能力が発動。源龍はおもむろにポケットから百円玉を取り出す。そして、思いきり振りかぶった。

 能力によって推進力の増した硬貨の軌道は、目で捉えられるものではなかった。しかし。

 コインは消滅しなかった。ところが、硬貨に加わったはずの推進力は失われ、硬貨はぽとんと床に落ちた。


「そうか。今のでなんとなく分かった。君の能力は、超能力で生まれたものを消滅させる能力だな」


 源竜の言葉に、にやりと笑う男。


「惜しいな。正確には、超能力で生まれたものをなかったことにする能力だ」


 藤堂三人は、男の危険度を最高まで高めた。男が強敵であるのは、間違いなかった。

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