夏休み 決戦!6
再度、レーザー光線が放たれた。
大地へと光線が伸びる。大地は瞬時に上に跳び上がった、その真下に、鏡が生成される。光線が反射して、大地の後を追った。
大地の脚力をフルに活かした跳躍で、大地の体は天井に達し、大地は天井を蹴って今度は壁へ向かう。人間が出せるはずではない速度で、大地の体が動く。その後ろを、やはり天井近くで鏡によって反射した光線が迫る。
壁に達すると、大地は今度は床めがけて壁を蹴り、そして床を蹴って反対側の壁へと跳躍した。その後も、壁、天井、床、壁、壁、天井、壁、と残像が残るほどのスピードで大地が動き、そして鏡が生まれ、光線が追いかけた。しかし終いには、鏡が生成されず、光線が天井に着弾して消滅した。
それを確認した大地は、そのままの速度で双子の後ろに着地し、まずは望を殴ろうとした。しかし。
望が手で形作った銃の銃口は、しっかりと大地を捉えていた。大地はすかさず跳躍する。その下で、光線が床に着弾した。
大地の体がくるくると回転し、再び扉の前へと戻った。そこに、望の声がかかる。
「光線と同程度の速度で逃げ続ければ、たとえ目で追えても、鏡を生成するのに必要なエネルギーチャージが追いつかず、いつか限界になり、光線が消滅する。その時を攻めればいいと、そう考えたわけですか。なるほどなるほど、それは幾分かは正しいですが、しかし何故、私がフォローすることを考えないのでしょう」
そして、叶が言葉を継ぐ。
「私たちは二人で一人よ。互いの欠点も長所も、全て理解しているわ。簡単に私たちを倒せるとは思わないことね」
「そっか」
大地は一言呟きました。そして、
「でも、二発同時に撃たないのはどうしてかな。二発撃つだけのエネルギーを一度に溜められないのか、二発を鏡で同時に操ることができないのか。なんにせよ、複数同時に撃つことはできないみたいだね」
「簡単なことです」
望が言葉を返す。
「お兄さん一人、一発で十分ということです」
「なるほど」
大地がゆっくりと脚をたわめる。
「なら、これはどうかな」
そして、跳んだ。後ろに。そこにいたのは、完全武装の男たち。
一度も着地することなく跳んで行った大地は、空中で半回転し、たまたま立っていた男を蹴り飛ばした。男は壁へ吹っ飛んでいき、壁に亀裂が入るほどの速度で衝突したが、完全武装なので死んではいないだろう。
一瞬遅れて、周りの男たちが大地に飛びかかろうとするが、大地は一番近くにいた男の背後に回ると男の腕を締め上げ、身動きを取れなくした。さらに他の男たちがどうにか攻撃しようとしてくるが、大地は蹴り技だけで軽くあしらい、無力化していく。
そして、大地の姿は、双子姉妹からは男の陰に隠れて見えなくなっていた。つまり、大地は男を盾にしたのである。
「無駄なことを」
叶の声が聞こえるが、大地は意に介さない。盾を用意したはいいが、次にどう攻撃するか考えなければならなかった。
そして聞こえる、きゅいいいんという音。望と叶は部下が死ぬのをあまりよく思っていなかった。なら少なくとも、真正面から部下ごと撃つことはないだろう、と大地は読んだ。果たして、その読みは正しかった。
男の向こう、望の方が光るのを感じた大地は、勘を頼りに上を向いた。すると、鏡が生成され、大地の姿が映るのが見えた。
ふっ、と息を吐き、大地は体をひねった勢いで男の体を自分の上に持ってきて、固定した。結果として、大地は望と叶に背を向けることとなった。
そして大地を襲った、鈍い衝撃と熱い感覚。大地が首を曲げて確認すると、背中にナイフが刺さっていた。
幸い、光線は男を貫く直前で鏡に反射し天井へ消えていったが、背中からはどくどくと血が流れている。
「きついなあ。痛覚カット」
大地は呟きとともに、男を床に叩きつけた。うっ、と呻き声が聞こえ、男はすぐにのびてしまった。その後、双子の方に向き直ると、背中に刺さったナイフを抜いた。すぐに、傷が治り始める。しかし、大地の息遣いは荒い。
それでも、その目は鋭く、口は未だ笑みを浮かべていた。初めよりは弱々しくなっていたが。
「ふうう。ちょっとしんどいな。でも、どうする?また、ナイフを投げる?」
大地は挑発的に言う。そして、辺りをぐるりと見回し、続けた。
「盾はこんなにいるからさ、光線もナイフも同時に防げるよ。それに、僕が光線をこの人で防ごうとするとナイフで攻撃したってことは、光線は同時には出せないんだろう?君たちの攻撃が無力化できさえすれば、いつかは勝てるってことだ」
一方、叶たちも余裕の無表情を崩さない。
「確かに、私たちはなるべく部下は傷つけたくないわ。だから、そうして部下を盾にされると非常に困るのだけれど。もしかして、私たちの攻撃パターンがこれだけだとでも、思っているの?」
「光線が防がれるなら、光線以外の方法で攻撃すればいいだけです。言ったでしょう、私たちを嘗めないで、と」
そして、二人は息を合わせ、囁いた。
「「能力、解放」」
「私は、鏡の中の者を具現化できない」
「顕現せよ、鏡の壁」
どん、という音とともに、双子の後ろの空間に、床から天井、壁から壁へと、ずらりと鏡が並ぶ。鏡全てが大地の方を向き、全てに大地が映っていた。
「現れなさい、偽者たち」
望がそう呼びかけると、全ての鏡から、ぬうっと大地たちが出てきた。正確には、大地によく似てはいるが、目がうつろな人間もどきが。
大地もどきたちは、次々に着地し、双子の後ろにずらりと並んだ。
「これはちょっと······僕じゃまずいかな」
大地が独白する。そこに、一斉に大地もどきが襲いかかった。
もどきの一人が真正面から大地に襲いかかってきたところを、大地が顔面を殴って吹き飛ばす。人間でないので容赦がなく、顔がべこりとへこんだ。大地は、もどきが顔を治せていないのを見て、治癒能力がもどきたちに備わっていないことは確認する。その間にも、別のもどきたちが襲いかかる。上から。横から。背後から。
右から来たのを回し蹴りで飛ばすが、左から来たもどきに顔面を殴られる。相手の腕を掴んで飛ばされるのは回避した大地だが、今度は後ろから飛び蹴りされ、掴んでいたもどきごと前に飛ばされる。転ぶ前に、掴んでいたもどきを地面に叩きつけ、無理な体勢で着地し、転がるのを回避する。そこで前かがみになったところを、もどきの一人の蹴りがモロに腹に入り、大地の体が宙に浮き、そして今度は自分が地面に叩きつけられた。大地は、自分の内臓が潰れた音を聞いた。
うずくまる大地を囲み、もどきたちの脚が一斉に上がる。その脚が振り下ろされようとしたその時に、咄嗟に大地は跳び上がり、綺麗な放物線を描いて扉の前に戻った。しかし立っていることができず、膝をつく。
パワーもスピードも大地と互角のもどきたち。大地の回復が、追いついていなかった。そして、大地のそんな事情など気にする必要もないもどきたちが、再び大地に襲いかかろうと迫る。
そんな中、大地は、頭の中で確かに声を聞いた。
「交代だ、馬鹿兄貴」




