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夏休み 決戦!2

 一方で、大地と召使い長太刀原は順調に二階を制圧していた。どこから何人来るかを太刀原の能力で把握し、大地が吹っ飛ばす、を繰り返した結果、廊下はうずくまる男たちと呻き声で埋め尽くされた。


「この階には、もういないようです。ただ、上の階にはまだかなりの数がいます」

 太刀原の声に頷き、大地は再び階段を上る。その後ろを、音もなくついていく太刀原。


 階段の上から襲われることも考え、慎重かつ素早く進んだ二人だったが、三階に上がっても廊下には誰もいなかった。その代わりに、廊下を挟んで両側にいくつかのドアと、廊下の突き当りに一際大きな扉があった。

「各部屋に数人ずつ、一番奥の部屋に三十人ほどいます」

「ふーん」

 興味なさげに返事をする大地。銃も刀も効かないため素手で暴れまわっていた大地だが、早くもやる気が損なわれつつあった。


「開けたら爆発とかするのかな」

「はて、それは分かりません」

 一番近くにあった扉に無造作に近づく大地。ノブに手をかけると、

「まあ、問題ないでしょ」

一気に開いた。


 爆発こそしなかったものの、部屋にはサブマシンガンを構えた数人の男たちがいた。

「わー」

 全く危機感の感じられない悲鳴を上げる大地。弾丸が、一気に発射された。さすがの大地でも衝撃に耐え切れず、向かいのドアへ吹っ飛んだ。が、大地は無傷であり、むしろ衝突したドアに亀裂が入った。


 すぐに銃撃は止み、装填するための一瞬の隙ができ、大地はすかさず男たちに歩み寄ってポコポコと一発ずつ殴っていった。男たちの顎骨が粉砕される。


「さすがですな」

「余裕すぎて面白くないなー」

 そんな会話とともに、大地は今度は亀裂の入ったドアを開いた。今度は部屋の入口に立たず、顔だけをのぞかせる。

 すると案の定、大地が部屋の前にいれば当たっていただろう銃弾が通り過ぎていき、大地が一番目に開いた部屋へと吸い込まれていった。しかし、今回は連射ではなかった。

 部屋の中にいたのは、猟銃持ちが数人。必死で次の弾を撃とうとしていたところだった。

「同じ手は喰らわないよー」

 そう言ってつかつかと男たちに近づいた大地は、銃身を飴細工のごとく簡単に曲げてしまった。

「今撃つと爆発するよー」

 一応警告した後ぶん殴るという、大地の優しさが見られる攻撃である。が、白目をむいてひっくり返った男たちには意味のないことである。


「はい次ー」

 三部屋目。またもや猟銃持ちがいた。大地は銃弾を避け、あっさり男たちを殴って無力化。


「はい次ー」

 四部屋目。刀持ちが三人。刃は見事大地を攻撃できたものの、一瞬で刃こぼれしたところを、大地が男たちの頬を引っ叩いて気絶させた。


「はい次ー」

 五部屋目。武道家っぽいやつが構えていたが、わざわざ試合形式に付き合ってやる義理もないので、大地は一発殴って気絶させた。男は壁へ吹っ飛び、壁が陥没したが、死んではいないだろう。


 そして、五部屋目の中で大地が手をはたいていると、

「坊ちゃまっ!!!」

太刀原の声が廊下に響いた。大地はその声の意味するところにすぐに気づき、後ろ回し蹴りを放つ。確かな感触を感じた大地だったが、相手は吹っ飛ばなかった。

 六部屋目から飛び出してきた人物。それは、超能力者だった。まだ若干の幼さをその顔にたたえた青年。


 青年は、自分の腹を蹴ったまま離れない大地の脚をしっかりと掴んでいたが、ふっと息を吐いて、手を放した。すると、大地の体に妙な力が加わり、大地は五部屋目の奥へと吹っ飛んで、伸びている武道家に衝突した。ぐげっ、と武道家が不吉な声を上げる。


 大地はすぐさま立ち上がり、口許にはいつもの笑みを浮かべたまま青年を睨みつけた。

「君が疎及そきゅうだね。なるほど、幹部にふさわしい落ち着きようだ」

 そして、太刀原に声をかける。

「爺、ここは任せたよ」

 大地はそのまま、青年の横を通り過ぎ奥の部屋へと向かっていった。


 向かい合う、青年と太刀原。まず口を開いたのは、太刀原だった。

「坊ちゃまを行かせてよかったのですかな」

「構わねえさ。どのみち、あの二人には勝てない」

「ほう、坊ちゃまに勝てる人間などそうはいないと思いますが」

 そして、太刀原はにやりと笑う。

「随分大きくなりましたね、坊や。親父さんは元気ですか」


 対して、青年―疎及もまた、笑みを浮かべる。


「んな訳ねえだろ、くそじじい」

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