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夏休み 決戦!1

 無数の銃を向けられ、花音、源竜、美晴は静かに立っていた。普通ならパニックに陥るだろう状況で、3人は一切動じない。

 一方で、圧倒的人数の組織の男たちは、少し混乱していた。警察による襲撃があるかもしれないと、緊張状態にある中にやってきたのだ。パニックになるのは至極当然である。

 だが、侵入者が現れた際、男たちがやることは変わらない。邪魔者は排除するまでである。


「撃て!」

 誰かの号令。男たちによる一斉射撃。藤堂家以外の誰もが、3人がハチの巣になるのを予想した。

 だが、3人は、それをただ見ているわけではなかった。


 美晴が大きく腕を広げた。次の瞬間、バチバチッ、と大きな音がして、弾丸が空中で一瞬止まった。勢いをそがれ床に転がった弾丸は、平べったく潰されていた。

見えない障壁(インビジブルウォール)、とでもいったところかしら」

 悪魔的な笑みの美晴が呟く。銃の登場に動じてなどいなかった。


 だが男たちとて、そこで驚いて動きが止まってしまうほど能無しではなかった。3人ほどが、すかさず刀を振りかざして突進してきた。一方で、美晴が一歩前に出る。

「死ね!」

 そんな言葉とともに振り下ろされた刀身は、しかし美晴の体には届きえなかった。3本の刀のどれもが、美晴の前で、ぐにゃりとした妙な感覚とともに止まったのだ。

 呆気にとられた3人組を押しのけるようにして、新たに何人かが美晴に殴りかかる。しかし、やはり美晴の前で何かに受け止められ、そして、突然何かに衝突したかのように吹っ飛ばされた。


「物理攻撃、効かない体質なのよね」

 にやにや笑いの美晴が言う。


 藤堂美晴とうどうみはる

 能力は、『透明の物質を造り出す能力』。不可視の物質を造り出し、物理攻撃をいなしてしまう最強の盾である。硬い柔らかい、大きい小さいも意のまま。使い手によれば攻撃に転じることも可能の、強力な能力だ。これの前に、銃弾など意味をなさない。


 そうして、美晴が前からの攻撃をいなしている間にも、横から新たに男たちがかかってくる。美晴が駄目なら他の奴を、という思考なのだろう。

「君たちの相手は私がしようか」

 そう言って右側へ歩き始めた源竜の前に、男たちが立ちふさがる。その手には、警棒。一斉に振り上げられた警棒にも動じず、源竜は流れるように男たちのふところに入り、それぞれの体にぽん、と触れた。触れただけだった。

 だが、触れられただけの男たちは、後方へ吹っ飛び、仲間たちに衝突して気絶した。

 続いて源竜は、遠巻きにこちらを眺めている男たちに目をつける。呆けている様子の男たちだったが、源竜がこちらを見たのを認識すると、すぐに気を引き締めて身構えた。そして各々が次の動作に移ろうとしたとき。

「月面歩行」

 源竜の体がふわりと浮くようにして、すっと移動した。その妙な動きに、男たちは対応できない。そうこうしているうちに、ピン、ピン、ピンとでこを源竜に指で弾かれた男たちの体は回転し、床に転がった。

「少しやりすぎたか?すまないな」

 そう言った源竜だったが、その場にいた男たちは皆気絶してしまっている。


 藤堂源竜とうどうげんりゅう

 彼の持つ『力を増幅・減少させる能力』は、重力にまで及ぶ。軽く触れただけでも、生じた力を増幅することで相手を吹き飛ばすこともできる。彼なら、銃弾に加わった推進力を減少させて止めてしまうことも可能だろう。


マニュアルには載っていない、予想外な相手を前に、男たちは考える。美晴に銃は効かない、源竜は能力で男たちを吹き飛ばしてしまう、となると、何も知らない男たちの標的になるのは、必然的に花音であった。

 それを重々承知しているはずの花音は、あえて美晴の背後から離れ、左斜め前方にゆっくりと歩きだす。その姿を恰好の獲物と捉えて、また新たな男たちが襲い来る。だが、花音は無表情を崩すことなく、ただ

「雑魚は静かに眠ってればいいのに」

とだけ呟いた。


 突然、床が爆発し、無数の破片となって男たちを直撃した。爆風と破片は男たちを軽々吹き飛ばし、周りにいた別の男たちも巻き込んで、凄惨な事態となった。だが驚くことに死者はいない。

 一方花音と美晴の方はというと、飛んできた破片は全て目前で止まっていた。美晴の『見えない障壁』によるものである。源竜は、自身の能力で衝撃から身を守っていた。入口付近にいた男たちは、今の爆発であらかた片付いてしまった。

「慣れないことしたから、思ったよりすごい威力になっちゃったわ」

 花音の全く反省の色の見えない言葉が、空虚に響いた。


 藤堂花音。

 『火·水·風·電気を自在に発生させ操る能力』を持つ彼女は、火力という点では源竜と美晴を含めた3人の中で最強である。


 藤堂3人の周りに大人たちがごろごろ転がっている異様な光景。そこへ、新たな男たちが右から左から階段の向こうから、ぞろぞろとやってきた。舌なめずりをする花音。その顔に焦りなど、一切なかった。

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