仮面男
城から家に帰って来るなりロダンはどっと疲れが出てベッドに倒れ込んだ。
城の外を見張る時は甲冑姿になっていたので重く疲れが溜まった。今は軽い格好になっていた。
城の中はまだまだ知らないことだらけだった。
翌朝、元気に部屋のドアをノックする音が聞こえてロダンは目が覚めた。
「やぁ。おはよう
今朝の朝刊です」
ドアを開けるといつもの新聞配達の少年が新聞を運んできた。
ロダンは顔を洗ってようやく目が覚めた。
真ん中にあるテーブルに目を向けると先ほど渡された新聞の見出しに目が止まった。
誘拐事件の犯人は謎の仮面男か!?
下へ降りて外へ向かうと管理人のおばさんにロダンは呼び止められた。
「それで、どうだった?城での初仕事は?」
ロダンは特に問題無かったことと最後に西の塔の上で変わった青年に会ったことを語った。
青年のことを管理人のおばさんに話すとおばさんは興奮したようにロダンに聞き返した。
「西の塔の上ってことはあの絶世の美男子と噂の公爵に会ったということかい?」
ロダンが半信半疑に頷くとおばさんはまだ浮かれていた。
「私も一度でいいから近くで会って話しをしてみたいよ。今度会ったら私の話しをしておくれ!」
管理人のおばさんは半分本気に冗談を言ってロダンを煽った。
ロダンはその日は非番だったので朝からゆっくり街を散策した。夕方になり街から家に帰る途中、突然女の人の叫び声がしたので振り返ると例の事件があった場所からだった。
急いで側へ行ってみると首を抑え込まれた女の人と犯人は覆面をした全身黒づくめの男?だった。
覆面をした男はロダンを見ると叫び声を上げた女の人を離した。
近くにいた女の子たちがきゃーと歓声をあげた。謎の仮面男よ!
仮面男は軽々と近くの家の屋根の上に上がってしまった。そこからなんとロダンに挑発するように手招きした。
ロダンはとっさに隣にいる人質にされた女の人に自分の荷物を預けると近くの塀から屋根に登った。
こちらも歓声が上がった。隊長を救った新人の護衛兵だわ!
屋根の上に上がると街は嘘のように見通しが良くなった。
下では人が少しずつ増え騒ぎになっていた。
と、犯人は猛スピードで走って逃げてしまった。
ロダンは数秒遅れて相手を追いかけた。
屋根の上はなんて走りにくいんだ。
仮面男は軽々と飛び越え目の前に教会が現れると吸い込まれるように見えなくなってしまった。
ロダンは足を止めて夕暮れに染まる街にたたずんだ。
もとの場所に戻ると仮面男見たさに人がまだ集まっていた。さっき人質にあった女の人がロダンの荷物を返した後、手を取って厚くお礼を言った。
「あなたは命の恩人だわ」