城下町
ロダンは城に近い城下町の中のアパートに住んだ。部屋は管理人が勝手に決めてしまった。
部屋には簡素なベッドとテーブルがあった。
ロダンは部屋に帰るとさっそく隊長にもらった地図をテーブルに広げて眺めた。
すると突然、誰かが部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ドアを開けると知らない少年が立っていた。
「こんばんは
夕刊です。新聞はいかがですか?
昨日から越して来たんでしょう?下の管理人さんが教えてくれました」
ロダンは一瞬驚いたが快く受け取ることにした。ガロ隊長に新聞を講読するよう勧められたのを思い出したからだ。
新聞の見出しにこう書いてあった。
誘拐事件発生。
最近街ではある噂がたっていた。
11番通りを夜若い女が一人で歩いていると人さらいに合うというのだ。
その通りはロダンのアパートからそれほど遠くない場所だった。
夜になってロダンは夕食を外で済ませようと階段を降りてアパートの玄関の前に立った時、管理人に見つかって声をかけられた。
「どこに行くんだい?」
管理人の小太りのおばさんはフロントに立ってメガネを外すと興味深くロダンを見た。下の階は宿泊施設になっていた
ロダンは突然声をかけられ驚いたが向き直ってあいさつした。
「若いから夜遊びにでも行くのかと思ったよ。」
まだ早い時間なのにおばさんはお世辞にも上手とは言えない笑みを浮かべて冗談を言いながらメガネをかけ直した。
「あら、またいい男だこと。魔女にでも目をつけられたら大変だよ。」
魔女とは気の強い占い師のことだ。
ロダンは愛想よく相槌を打ってその場から逃げてしまった。
道は田舎とは違い街の灯りで夜でもとても明るく見えた。
途中、例の行方不明事件のあった場所の近くを通ってみると、この場所だけ妙に暗かった。
ロダンはそのまま通り過ぎて大通りに出た。