夜明け
その晩ロダンは戦わずに静かに過ごすことができた。
夜が明けるとロダンは準備を整えた。
セレナ姫はひざまずいたロダンの肩に剣を置いて任命の儀式を行った。
任命を受けたロダンに公爵は早々と説明した。
「君は街では英雄だがまだ官僚の間では論争になっている。フシビ卿を抑えることは私でもできないことなのだ。」
「それは彼を抑えたところで新しく同じ意見を持った敵が現れ永遠その流れは変わらないからなのだ。
つまり私はバランスを取りながら常に決断を下さなければならないということだ。わかってくれロダン。
そこで君を国から逃すことにする。
困ったことがあればいつでも頼りにしてくれ。
まずはこの国と親交のあるベネッチンという街に行くんだ。使いをよこそう。
そこには足がついてしまうから長くはいられないのだが、その後は相談だ。」
ロダンは驚いて公爵に尋ねた。
「これから旅に出るということか?」
「その方が君は自由になれる。」
公爵が応えた。
ロダンは考えた。この国でこれから多くのしがらみに束縛されて暮らすことを想像すると息が詰まりそうになった。
しかし旅に出るとしたら隊長とこの街のことが気がかりだった。
公爵はロダンの気持ちを汲んで優しく後は任せてくれと言った。
2人は展望台の下にある秘密の船着き場に行った。
そこには立派な船がロダンのためにすでに用意されていた。
公爵がまわりを確認しながらロダンに言った。
「フシビ卿がまだ君を追っている。また捕まらないように気をつけてくれ」
ロダンはとっさに地下の拷問と魔女を思い出して苦笑いした。
船が出発する直前に公爵はロダンに話しかけた。
「最後になるが、君は身分の低い敵国の生まれではない。」
..?!
ロダンは驚いて公爵の言ったことを疑った。
「もっと良く探すんだ。君の一族は違うところにいる。」
船は風を受けて勢いよく進みロダンは公爵に聞き返すことができなくなってしまった。
船は早朝の海に向かって出発した。




