海
船は高波に呑まれそうになりものすごい速さで進んだ。
そして真っ暗の中で断崖絶壁に衝突してしまった。
ロダンは船から投げだされた。
..後のことは何も覚えていない。自分がどんな風に助かったのかわからない。
ただ不思議な夢を見ていた気がする。
気がつくとロダンは波の音を聞いて目を覚ました。上半身をゆっくり起こすと浜に打ち上げられていた。
雲がものすごい速さで進んでいる。朝なのか夕暮れなのかわからなかった。
今は少し穏やかになった海の向こうに光輝く鳥?のようなものをロダンは見た気がした。
自然の中にいると時折、不思議なこともあるものだ..
ロダンはおぼろげにそう感じた。
全身ひどく痛んだ。
目まいがして頭が痛かった。
雲り空の下、黒い岩々に囲まれていた。
..自分は助かったのか?!
ロダンはようやく意識がはっきりしてきた。しかしまだ夢なのか現実なのかわからなかった。
ゆっくり立ち上がってよろよろ辺りを歩いた。
浜には街からいろいろな物が流されて打ち上がっていた。
何もかもおしまいだ..。
そう感じた時、誰かの声が聞こえた気がして振り返ると少し先の方から少年と少女が走ってこちらに向かって来るのが見えた。
2人組は楽しそうにロダンの近くを通り過ぎ波打ち際に向かって走って行った。
ねぇ、見て新しい物がまた打ち上がっているわ!
女の子が嬉しそうに叫ぶ声が聞こえた。
潮風が後ろから吹いて浜は生暖かい空気に包まれた。体はあっと言う間に乾いてしまいそうだった。
ロダンは呆気にとられ呆然とその場に立ち尽くした。
今度は後ろから犬の吠える鳴き声がした。放し飼いにされた犬とおじいさんが後からやって来た。
おじいさんは見慣れない青年が浜にいるのを見て少々驚いた。
ロダンはおじいさんに訪ねた。
「おじいさん..ここはどこなのでしょうか?」
おじいさんは真っ白のヒゲを生やして着慣れてよれたシャツに肩紐付きズボンを履いていた。
「セシルの街じゃよ..。」
おじいさんの応えにロダンははっと気がついた。確か地図にこの街が載っていたはず
しかしロダンはすぐに考え込んだ。
..船はどこへ行ったんだろう?
おじいさんは濡れて塩と砂にまみれたロダンを見てまさかあの荒波の中にいたのではないかと驚いていた。
ロダンは必死に辺りを見てまわった。嵐の中で船は転覆してしまっても不思議ではなかった。
少し浜を歩いてふと上を見上げるとそこには高い岩が連なった山があり、そこに船は引っかかってあった。
潮風の吹く中、ロダンは岩山を登り船の中の様子を探った。
..奇跡的にまだ中の物が揃っている。重たい箱に入って荷物は無事だったみたいだ
大波があって船に大きなキズが無ければまた出航できるかもしれない。
ロダンは今までのことを思い返してみた。
公爵の言っていたことが正しいとすれば.,
今、国が危険にさらされていてその中で姫君を助けたのなら公爵はこの国を守ろうとしている..つまり間違ったことをしていないということなのか?
ロダンはここへ来て自分の使命を思い出した。
自分のやるべきことは陛下をお守りすることだ。ならば今は公爵の指示に従って国が守れるのだろうか..?
とにかく、やってみるしかない
ロダンは決意した。
すると下で誰かが叫ぶ声がした。
見るとおじいさんがロダンを呼んでいた。
ロダンは下に降りて行っておじいさんに旅の事情は話さずに困っていることを告げるとおじいさんは快くロダンを家へ案内してくれた。




