夜の追跡
しばらくして公爵によってロダンは城に住まわされた。
城ではあの太った女の事件以来警備がさらに増していた。
そんな中公爵はロダンに言った。
「..君は思った通りに使える家来だ。」
公爵の機嫌は上々だった。
その後もロダンの意思は押し込められたまま公爵の指示通りに動いた。
いつの間にか仮面男の噂はヒーローから悪人に変わっていた。
ある夜またしてもフシビ卿を追わされてロダンが城から仮面男で抜けだそうという時誰かに腕をつかまれ城の影に引っ張り込まれた。
..おい。どこへ行く気だ?
暗くてわからないがその声は聞き覚えのある声だった。
ロダンはハッとして我に返った。
「こんな時間に何をしている、..ロダン?」
見るとガロ隊長その人だった。
ガロ隊長はロダンが仮面男の姿でも気がついていた。
ロダンは諦めて仮面を外した。
隊長はさぞ怒るだろうと考えていたが、事情を説明すると訳をわかってくれた。
「やはり、そうだったか..。だから、あの時噂に深入りするなと言ったんだ。
公爵に従わさせられていたんだな
..これは大変なことになったぞ。」
自分を理解してくれた隊長にロダンは感謝した。しかしまだ心は囚われたままだった。
それを見抜いた隊長はロダンを問い詰めた。
「まだなにかを悩んでいるな?」
ロダンは一番気になっていることを隊長に聞いた。自分の出生の秘密をどう考えるかだ。
隊長はロダンの心配事を聞いて胸に刺さる思いをした。
そんなことを悩んでいたのか..
隊長は片目を瞑って考えた。目の前のちいさな弟子は今まで一人で戦っていたことだろう..
可哀想なことをした。ガロ隊長は気づくのが遅くなった自分を責めた。
「出生なんて問題ない。きみは私の命の恩人だろう?忘れたことがあるかい..」
隊長は優しくしっかりとロダンの肩をつかまえて言った。
「そうか、わかった。早いうちにここから抜け出さなくてはならないな。しかし、タイミングの悪いことに私はこれから遠方に出向かなければならないのだ。」
ロダンは一緒に行けるように隊長に願った。
「そうしたいのだが、..公爵の命令で城に住まわされたとなるとすぐに準備させるのは私でも難しいことだ。」
心配そうなロダンの肩に大きな手が励ますように乗っかった。
「できる限り早くロダンを戻すように城の役人に頼むので私のところへ来なさい。」
この言葉を隊長に言われてロダンは自分を取り戻した。




