会議
まずいことになった..。
公爵は誰もいなくなった城の講堂の一番高い席から立ち上がると苦々しくそう思った。隣りにいた丸めがねをかけた大臣も公爵を気にかけながらもとっくに帰ってしまった。
この講堂で会議が行われ今しがた終わったばかりだった。内容は今後の国の方針についてだった。会議も終わりにさしかかった頃、突然誘拐事件の犯人のフシビ卿が話題に入り込み仮面男について触れてきたのだ。
フシビ卿は自分の近くで事件を起こす仮面男を煙たがっていた。
「街で大変問題になっている仮面男について私なりの意見を申し上げますと、この度私は本物の仮面男を見たしだいであります。」
フシビ卿は会議の席で立ち上がりながら話した。
「..ゆえに単なる噂話ではございません。
街をこんなに騒ぎ立てる例の犯人には国を上げて退治に勤しむ必要があるかと存じております。..閣下、いかがお考えですか?」
フシビ卿に突然意見を求められて公爵は顔上げた。
「..面白い。ではどこで仮面男に会ったのか教え願いたい」
公爵はフシビ卿に笑顔で問いかけた。
そこにいた皆は冗談だと受け取り軽く笑いが起こった。
フシビ卿は目は真面目なまま口だけ笑って公爵に意見した。
「街が騒ぎになっているのは事実です。」
他の大臣が優しく話しに加わった。
「まぁまぁ、フシビ卿さま。国は今、大変大事な節目を迎えております。ゆえに公爵さまも頭を抱えておられます時に変な噂などにかまけている場合では..私たちは今はもっと重要なことに時間を割く必要がお有りではないかと..?」
他の大臣たちも考えながら頷く者もいた、しかしフシビ卿は食い下がらずに皆を見回して冷静に言った。
「国の中で騒ぎを起こす悪戯な輩は排除すべきです。なぜなら輩は国に対して良く思っていない態度だからです。」
「騒ぎを起こして見過ごせば今後悪しき習慣に繋がりかねませんぞ。」
公爵はそれに対して冷静に言い返した。
「..よろしい。フシビ卿殿の言う通りだとも私もそう思う。警備にあたる者たちにも今後はもっと心砕こう。
しかし、例の仮面男にまつわる証拠を今一度私のところへ持ってきてこの次は会議で皆に見せてから発言を頼みたいものだが..
そうすれば皆、今よりも熱心に犯人を突き止める心になるだろう。」
大臣たちもこれ以上は時間の無駄だとばかりにフシビ卿を見やった。
フシビ卿は何も返すこと無くせっかちな議長によって会議が終わらせられた。
次つぎと講堂を後にする大臣たちの中でフシビ卿の目が公爵の目をとらえた時、誰にとも取れる言い方でこう言い放った。
「悪党を探すべきです。私はやれることからはじめます..まずは身近なところからでもいいでしょう。」
そのフシビ卿の言い方と公爵を見据えた目はずっと前から公爵を疑って見ているぞという警告だった。
しばらくしてフシビ卿は講堂から出て行った。




