追跡
ロダンが公爵に言われて追っている相手はグレーのハットにトレンチコートの男だった。
月の光に照らされてハットの男は街の外れの川までやってきた。
ロダンは物陰からその様子を見ていた。
すると川の奥から一艘の舟がやってきた。舟には複数の男とフードを被った女の子が乗っていた。
..人身売買だよ。
出かける前にロダンに公爵が説明した。
「今日のところは様子を見るだけでいい。実態を掴むのが最優先だ」
追っていたハットの男の前で舟が止まると女の子がキラっと光る何かを掲げてハットの男に迫った。
それに気づいた男たちが女の子を止めに入って小さな舟が大きく揺れだした。
ロダンは静かに見ていられなくなった。
女の子が取り押えられて高い声で抵抗しているのが聞こえた。
たすけてー!
ロダンは急いで走りだし救助に向かうと男たちの声が聞こえてきた。
はやく、その子を静かにさせろ!
ロダンは草むらから飛び出して一人の男に掴みかかった。驚いた男は川に倒れこんだ。
そのままロダンは舟に上がって長いオールを掴むと男たちを蹴散らした。その隙に女の子の手を取って急いでその場から走り出した。
追っていたハットの男はこの事態を少し離れたところから見ていた。走り出した二人を見て胸ポケットからだそうとした銃をそのまま閉まった。
まさか、..噂は本当だったとは!
この様子を公爵は屋根の上から見ていた。今まで腕を組んでいたが急に額に手を当てて公爵は思った。
なんてことだ..!
しばらく走り民家の影に隠れたロダンと女の子の二人は息が落ち着くのを待った。
「信じられない..本当にいたなんて!」
落ち着いてきた女の子がロダンを見て歓声をあげた時、ロダンは自分が仮面男なのを思い出した。
いったい、これからどうしたらいいんだ..
ロダンは目の前の女の子を見ながら考えた。
すると近くで追っ手の足音が聞こえてきたのでまだ女の子を探しているのがわかった。
ロダンは隊長と昼間仕掛けた警報機を思い出した。
寝静まった街は急に男たちの足音で騒がしくなった。一人の男が逃げる二人の影を見つけ叫ぶと他の男たちもロダンと女の子を追って走り出した。
ロダンは複数の警報機をならした。すると警報機は男たちを囲むようになり出した。
その音を聞いた護衛兵たちがあちこちから駆けつけ女の子は無事に救助された。
ロダンはギリギリ誰にも見つからずに済んだ。
翌日の新聞のみだしにはこう書いてあった。
謎の仮面男、誘拐少女救う!
翌日めまいがしてロダンはいつも通り起きられなかった。




