城の玄関の大広間
隊長は先ほどと違うロダンの様子を気にかけて声をかけた。
「おいロダン、顔色が悪いぞ。どうしたんだ?」
ロダンは必死に戸惑いを隠そうとした。
「なんでもありません..」
ロダンはさっき公爵に言われたことが頭から離れなかった。
「何かあればなんでも話なさい。」
そう優しく気遣うと隊長は城の外に向かって歩き出した。
ロダンは一人になると誰もいない部屋を探して中に入り急いで扉を閉めると必死に考えた。
..どうして誰にも話したことのない自分の出生の秘密を公爵が知っているんだ!?
それはロダンにとって予想もしない出来事だった。公爵は何食わぬ顔をしてロダンの秘密にしている生まれ故郷の名を口にしたのだ。
ロダンはここから遠い小さな村で生まれた。とても貧しい村で物心ついた頃には滅ぼされたと聞いていた。
城に入る時にすでにロダンは調べを受けている。出身は部族が滅んだ後、別の場所を名乗るようにしていた。しかし本当はそこの出身なのだ。これを知っている者は自分以外本当に限られているはずだった。
もしこのことがバレたら..
自分が低い身分の出身(しかもそれはこの国と敵対関係にあったから)だと他の者に知られたら隊長のいる今の職から首になりただちに城を去ることになるだろう予想がついた。
あの時公爵は間違いなく自分に当てて言っていた。
つまり公爵はロダンの秘密を知っているのだ。
鼓動は高鳴りとても平常心ではいられなくなった。
ロダンはここへきて想いも寄らない相手に自分の重大な秘密を握られていることを知り一気に肝を冷やされた。




