学校で・・・3
しばらくしてようやく場が収まってくる。するとユハはなにやら真剣な顔をして眼鏡をクイッと上げた。
「ねえ、ホーランドって貴族知ってる?」
「ホーランド?いや聞いたことないけど・・・。その貴族がどうかした?」
「昨日そこの娘さんが誘拐されたらしいの。それも、結構裏の世界では有名な組織に。」
ちなみにユウヤはユハとのキス後、ベットの上でのびている。どうやら、相当恥ずかしかったみたいだ。
・・・僕の方が恥ずかしいわ。
「どうして、ユハちゃんがそんな情報を知っているの?」
「・・・ユウヤ言ってなかったの。まったく・・・。」
「いや、本当は言おうと思ったんだけど一応個人情報だから、周りに聞こえないようにタイミングを見計らっていたらいつの間にか忘れてた、ゴメン。」
「・・・もう、まあいいわ。ランス驚かないで聞いてね。」
なんだかすごい事実を知らされそうで恐いな・・・。
「私、貴族なの。ユハ=ローズヴェルト、それが私の本当の名前。」
「ローズヴェルトだって?それじゃあユハちゃんは三大貴族なの!」
しまった。今まで普通にタメ口で話していた。っていうか今更敬語使えなんて言われても無理だよ。
「ええ、他の人には内緒よ。あと、別に敬語なんて使わなくてもいいから。」
まるで、こちらの考えを見透かしているようだ。
前々からユハちゃんはスペック高いと思っていたけどそうかぁ~、なんか納得。
「じゃあ、遠慮なくタメ口で。さっきの話に戻るけど、ホーランド家の娘さんってどうなるの。」
「分からない、今どこにいるかも分からないらしいの。」
どうやら僕のすべきことが見えてきた気がする。ユハちゃんがわざわざそんな話を僕に振ったこと。そして、僕自身そろそろ真剣に勉強をしなければならないこと。つまり、ホーランド家の娘さんを助けて、その後は潔く勉強をしろってことね。
だけど・・・
「ユハちゃん、君が僕たちの活動を知ってるなんて思わなかった。」
「ランス、何言ってんだよ。」
ユウヤは不機嫌にいってくる。きっとランスが突然おかしくなって二人の秘密をばらすと思ったのだろう。しかし、ユハはその言葉を聞いてうれしそうに笑う。
「私が知らないと思った?私、ユウヤのことはすべて知りたいもの。だから、ユウヤが夜遅くに家から出て行ったあとつけたわ。」
「へ?うそ。」
ユウヤは呆けている。
「だから、ランスあなたを初めてそこで見たとき殺したいほど憎んだわ。」
「なんで!?」
「だって、そうでしょ。ユウヤをたぶらかすヤツがいると思ったらまさかの男だもの、それにユウヤが普段私に見せないような顔をおなたには見せていたわ。」
恐い恐い恐い。なんだこの女キャラが変わってきてるぞ。
「ユウヤ、どうしてその顔を私には見せてくれないの。どうしてそんな男にばかり楽しそうに笑うの。ユウヤ、ねえユウヤ。」
彼女の緑色の目にもやがかかってこことは違う場所に意識をおいているようだ。
「わかったわ。ユウヤあなたがその男しか興味がないのなら私が壊してあげる、あは、あはは、あははははは、そうねまずその男と友達になったふりをしよう。そして、二人の中を引き裂いてやる。あぁユウヤ待っててね。愛してる・・・。」
そう言うと電池の切れたように倒れた。
ってか彼女の言ってた男って俺のことだよな。うわ~もう近づけないよ。
「ランス、悪い。こいつちょっと疲れているんだ。許してやってくれ。そして、目が覚めたら何事もなかったように振る舞ってくれないか。」
「ユウヤ、それはどう考えても無理だろ。第一こんなこと言われた俺の気持ちはどうなる。」
「それはすまんとしか言いようがない。だけど、みんな持っている暗い部分がちょっと歯止めがきかなくてでちゃっただけだって。」
そう言うとユウヤはユハに向かって忘却魔法を使い始めた。きっと、彼女が起きたとき自責の念に駆られないようにだ。
待って、俺の気持ちは。言われ放し・・・。
「ユウヤ、今回のコトは聞かなかった。恋する乙女の怖さがよく分かった。・・・昼飯おごれ。」
「悪かったな。それとありがとう親友。」
「あと、ホーランド家の娘さんを助ける。これをやり遂げて一区切りにしようぜ。」
「了解。最初は単独で情報を集め、集まったら二人で助けに行くでいいな。」
「ああ。」
その後目覚めたユハはどうやら何も憶えてないらしい。
僕も今回の件は忘れよう、男同士の約束だからな。
ユハとユウヤはひとまず先に保健室から退室した。
そのときにユハがユウヤにばれないように僕に醜く嗤いかけてきたのは・・・きっと気のせいだ。
おかしいな。どんどんバットエンドに向かって行っている気が・・・。