とある朝の日常
「ごらぁぁぁぁあああああ。ランス、いつまでねとんや~~~!」
朝の心地よい日差しがカーテンの隙間から差し込む中、怒鳴り声が聞こえてくる。だが、この怒鳴り声は一回目ではない。本当は七回目だ。六回目まではランスは気づかなかったらしい。
ランスは重い瞼を必死に開けようとして、
「まぶしっ。」
隙間から入ってくる太陽の攻撃を受けて、あっさりと敗北を認め布団を顔まであげる。布団から香るモワモワした熱が再びランスを夢の国へ招待する。
「さあ、行こうよ。夢の国へ!」
「もお~仕方ないな~。今回だけだよ。」
夢の住人と手を取り合いアハハハハと笑い合う。
ってかもうここ夢の中だわ。
しばらく、眠ることの素晴らしさを夢の中で噛み締めていると、
ドン、ドンドン、ドンドンドン
強烈な音が、現実世界から聞こえてくる。
いけない。このままでは夢から覚めてしまう。
無意識のうちに手が耳をふさぐ。すると、現実世界の音が遠くになる。
勝った。
なんて、夢のなかで考える・・・ってかもう夢の中じゃないだろ。
しかし、現実は甘くない!
バキャ。
さっきの5倍くらいの音がして、
「なぁ~ランス。あんたいい度胸してるね。」
決して大きくはないが心臓に圧力のかかる恐ろしい声。
ああ、死んだ・・・。
急速に頭が冷えて、
「す、スミマセンでした~。」
土下座をする。もしこの土下座に点数をつけるなら90点は超えるだろう。
だが、現実は甘くない。入ってきた院長は血管をピクピクさせ、制裁を下す。
一分後ボコボコにされた僕は、太陽の光を浴びながら床の上で骸と化していた。
痛いよ~。
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「さっさと食べな。」
院長ナダーラに半殺しにされたランスはムシャムシャご飯を食べている。
あ~うめ~たぶん、前前前世は豚だったな。かわいく言うとピッグ、かっこよく言うとシュバイン。やっぱりピッグ派かな。
「ねえランス。また寝坊したの?」
同い年のカミが聞いてくる。今日は、休日だがこの孤児院は朝6時に起床なので、9時現在 十分寝坊といえる。ちなみに彼女は15歳。
「ああ、そのせいで僕の部屋の扉が破壊された。よかったな、カミ。夜中僕の部屋に来て、あんなコト、こんなコトしほうだいだな。」
「なにいってんの、この寝坊助野郎。」
「またまた~そんな風にいって、実は図星だったんだろ?照れんなよ。」
「ランス、これ以上続けるつもり?」
カミは無表情で最後通告をしてくる。
あ~これヤバいやつだ。
昔からそうだ。カミがこの顔した後、なおもふざけ続けると拳が飛んできて、ランスはいつの間にか失神していた。
「悪かった。それで、なんか用事あります。」
「用事と言うか、昨日の夜あんた部屋にいた?」
「え?」
「夜、部屋の前を通った時、物音一つしなかったけど・・・。」
こいつ、なかなか鋭いな。
「そりゃ、寝てたからな。」
「でも、ランス。昔から寝相悪いのに・・・。」
「僕だって、寝相いい時もあるさ。っていうか寝相直ったかも。」
「本当?まあいいけど、そんなんで受験受かるの?」
痛いところを突かれたな。とりあえず、言葉を濁しておくか。
「まぁ、何とかなるだろう。」
「そう・・・。」
カミは少し不満げに頬を膨らませていたが、それにかまうことなくランスは逃げるように自分の部屋へと移動した。ランスが部屋に戻ると窓が開いているのに気づく。
あれっ窓開けたっけ?
孤児院の規則に自分の部屋は自分で管理というものがある。だから、子供たちは断りなく人の部屋には入らない。
ランスはどうせ寝ぼけていた自分が勝手に開けたのだろうと思い深くは考えなかった。
だが、この部屋から写真が盗まれていた。ランスが写っていたものだ。それにランスは最後まで気づくことはなかった。
初投稿です。よろしくお願いします。