表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/240

収監

「二万二万、二万ゴールドぉ。これで残りはもう二万だぜ、ひゃっほい」

「二万二万、二万ゴールドぉ」

 妙な節回しで即興の二万ゴールドの歌を口ずさむ上機嫌のケイトと、そのフレーズを真似しているアンの後に続いて、恵一は歩いていた。

 エリスは、ここにはいない。

 あの後、グエンの有り金を全て出させた。調査屋の情報通り、五万ゴールド程度で家宝は売れたらしく、そこから若干減って四万八千ほど持っていたので全額没収した。

 無論、それだけの大金なので手持ちではなく預けていたので、それを引き出さねばならない。 

 そこへ、警備隊がやってきた。やはりグエンが逃亡したとこを撃って家に引きずり込んだのを目撃されており、そっちから通報が行っていたのだ。

 家に踏み込んできた彼らは、青年の死体を見てことが殺人事件であることに色めき立ってその場にいた人間への尋問を開始した。

 特に誰も嘘は言わずに、見たことをありのまま答え、隊員たちはその話を総合して事情を了解した。

 とりあえず、殺人の実行犯であるエリスは逮捕されてしまい、そもそもの原因はこいつである、しかもこいつは逃亡の常習犯であるというエリスの申し立てと、それを事実であると恵一たちが認定したことによって、グエンも身柄を拘束された。

 恵一とケイトとアン、そして男は拘束はされなかったが、わざわざ魔術印をとられたりはしなかったものの、しっかりと住所は控えられた。

 リーンの裁判の一件で、証言云々についてはけっこうアバウトなのを承知している恵一は、自分の方から是非とも証言したいという旨を強く言っておいた。

 そののち、エリスの希望によって警備隊員同行の上でグエンのゴールドを引き出しに行った。一旦引き出して、その場でエリスの名義にして預けたのだ。

 これは、エリスだけではなくグエンも強く望んだことであった。彼としては、防護魔術をかけてくれた青年が死んでしまった以上、エリスに自らの魔術印入りの契約書を所持されているのは恐怖でしかない。

 エリスは、手続きが終わると契約書を返還し、グエンは安堵の表情でそれを細かく念入りに破り捨てた。

 そして、エリスとグエンはそのまま連れて行かれてしまい、恵一たちは家路についている、というわけである。

「おっしゃ、なんかうめえもん買ってこうぜ!」

「うめえもん!」

 ケイトとアンははしゃぎまくっている。

 まだ正式に二万ゴールドが払われた――実際には払われるのではなく借金額を減額するのだが――わけではないのだが、そういうことに関してはケイトはエリスを信頼しているらしく、きちんとやってくれるだろうことは疑っていない。

「どーしたケーイチぃ」

 二人の大はしゃぎから距離をとって考え込んでいた恵一の肩に、ケイトが手を回してくる。

「エリスの裁判のこと気にしてんのか? だいじょーぶだって、そうそう重い罰にはなんねえって」

「ああ、いや……」

「そりゃ、あの野郎のこったから土壇場で嘘つくかもしんねえけどさ、おっちゃんも証言してくれるって言ってたじゃんか」

 あの野郎、というのがグエンのことで、おっちゃんというのは例の男のことだ。

 グエンが持ち前の目先の苦難に背を向けるアレで、いざ裁判で証言に立ったらエリスの言うことを否定したりする心配が無いわけではないが、男が証言することを請け合っていたのだ。

 元々、グエンの所業をよく思っておらず、青年がそれに協力するのを止めて欲しかった男にとっては、実際に手を下したエリスよりもグエンに対する恨みが深くなっているのである。

「いや、それは心配してないんだけど……」

 魔術印による契約履行の邪魔をした上に、あくまでグエンの引き渡しを拒んで戦闘行為も辞さずという態度をとり、実際に戦闘となったことが認められれば、青年を殺したことはその戦闘の延長線上のことでもあり、それほど重罪になるとは恵一も思っていない。

 恵一が考え込んでいるのは、エリスのグエンに対する態度である。

 幾度となくエリスの激怒を身近で見ている恵一としては、随分とあっさりと助命したなと不思議であった。

 それこそ、メイスについた青年の血も乾かぬうちに、今度はグエンの頭を割ってもおかしくないぐらいの怒りをエリスは抱いていたはずなのだ。

「そりゃあ、証言させるためだろ」

 そのことを言うと、ケイトは至極あっさりと断定した。

「当人に生きて証言させた方がいいだろ」

 それは、その通りである。

 例え、恵一たちや男が証言したところで、当のグエンが死体になっていたならば死人に口無しなのをいいことに、勝手に都合のいい話を作っていると疑われる恐れもある。

 それならば、グエンの口から証言してもらった方がいいが――先程ケイトも言ったように土壇場でジタバタする恐れもあると言えばある。

 エリスは、四万八千ゴールドを徴収して契約書を返してしまった。

 あとは裁判で証言するという約束を守れば、グエンは放免である。エリスはこれ以上は彼に何もできない。

 足をアンに撃たれたのは別として、これではグエンは全財産没収という憂き目にあったと言っても、それだけのことと言えばそれだけのことである。

 なんでエリスはあれほどの怒りをおさめて、グエンのことをあの程度で済ましてしまったのか――

 どうしても、死をもって報いを受けさせられてしまった青年と比較すると、釣り合いが取れていないと思ってしまい、釈然としないものがあるのだ。

 無論、だからエリスはグエンも殺すべきであった、と思っているわけではないのだが、やはり釈然とはしない。

「考えたってしょうがねえって。とにかく、仕事をきっちりやって、二万ゴールド貰えることになったんだからさ」

 ケイトにとっては、そこんとこさえしっかりしてれば万事よしである。

「これで借金は残り二万。ここまできたら後は楽なもんさね」

 楽、と言い切るのはどうかと思うが、当初の半額以下になっているわけだから利子も同様であり、さらにはエリスの家賃の分があるので、相当に楽になっているのは確かだ。

「まあ、ちょっとのんびりしてもいいかもなあ。もちろん怠け癖がついたらまずいけどさあ」

 そう言われれば、ちょっと休みたい気分もある。

 だがまあ、とにかく近日中に行われるであろうエリスの裁判が終わるまでは気は抜けない。

「そうだ。裁判の日程をちゃんと確認しとかないと」

 なにしろアバウトなのは嫌ってほどわかっているので、呼び出しが来るとかは全く期待してはいない。

「後で草届ける時にでも確認しといたらいいよ」

「うん」

 収監されるにあたって、恵一はエリスから、発作の痛みを和らげるのに使っている乾燥させた草を持ってくるように頼まれていたのである。例によって50ゴールドで。

 色々と買い込んで帰り、早速宴だひゃっほいと出来上がっているケイトとアンを残して草を届けるために獄舎へと向かった。

 面会は許されず、草は渡しておく、とは言われたものの本当にエリスに渡してくれるのか一抹の不安を覚えた。

 これが無いと発作が起きた時に大変彼女は苦しむから絶対に渡しておいて欲しい。これが無くて苦しんだら、後でこの草を自分に渡さなかった人間にどんな報復をするかわかったものではない、ということを言ったら、ただでさえ呪術師のエリスに恐れを抱いていたらしい看守はしっかりと請け合ってくれた。

 できれば、実際に会って裁判の際の戦略みたいなことを打ち合わせたかったのが本音であるが、そういうことしちゃ駄目、という意味での面会拒絶であろう。

 まあ、とにかく見聞きしたことを素直にそのまま証言すればいいだろう。

 リーンの時で、少しは要領はわかっているつもりだ。

 裁判官はもちろん、傍聴人の同情を引くようにすることが有効だ。有効とわかっていてもエリスは性格的に涙の一つも見せて同情を誘うようなことをしないだろうから、そこは自分が、と思う。

 ポイントとしては、やはりエリスは契約に基づいた行動をしつつ、むしろそれを厳格に行使してもよいところで手心を加えていたことを言うべきだろう。

 特に、家宝が売れなかったと嘘をつかれた時、その時既に返済の期日であり、ならば罰則だとなってもよいところをそれをせずに、コツコツ働いてコツコツ返せと諭したことはエリスの温情として強い印象を与えられる材料だ。

 問題の青年の死も、彼の性向行動にエリスの逆鱗に触れる要素があり、途中からは殺意がありまくったところはなんとか上手いことぼかしつつ、交渉段階でさっさと不埒な債務者を引き渡してくれれば、こちらから手を出すつもりは無かったという線で進めればなんとかなるはず。

 青年の味方をしていた男が証言してくれるのは、心強い。

 エリスと恵一だけがいくら証言しても、利害関係を同じくする立場からのものであり、それだけではいまいち訴える力が弱い。

 そこを、違う立場にいた男が、裏付けてくれるのならば証言の信憑性が増すというものだ。

 家に帰ると、たらふく食ったケイトとアンがよくあることだが台所で寝ており、いつものようにケイトの部屋のベッドまで運んでやってから、一応二人が自分に残しておいたものと思われる残飯にしか見えぬものを温め直して食べた。

 今日というかついさっき収監されたばかりのエリスの裁判日程はまだ決まっていないので、これから一日一回は獄舎を訪ねて確認する必要がある。

 とりあえず、二万ゴールド分の借金が減り、返済がぐっと楽になったこともあるので先程もケイトが言っていた通り、しばらくギルド通いはしないでゆっくり過ごすことになるだろうから、散歩がてら立ち寄るようにすればよい。

 気付けば、もう夜も遅い。

 薄暗くなってから青年の家に乗り込んで色々あったので、すっかり暗くなっている。

 この時間なら、ケイトもアンもこのまま朝まで寝ているだろうし、一仕事終えた疲労感も今更ながらに感じられるようになってきたし、恵一も寝ることにした。


「ケーイチぃ」

 ケイトに、叩き起こされた。

「あん、どーしたよ。しばらくゆっくりすんじゃなかったっけ?」

 陽の高さを見れば――時計が無いこの世界で暮らすうちにそういうもので大体の時間を計るようになった――まだまだ朝は早いようだ。

 昨日の今日だし、好きなだけ寝ようと思い、また寝かせて貰えるものだと思っていた恵一としては、軽く抗議じみたことも言いたくなる。

「いや、なんかエリスの裁判明日やるってさ」

「はあ?」

 思わず、大きな声が出ていた。

「え? 昨日捕まって、明日やるの?」

 リーンの時は、収監から裁判までもう少し間があったはずなのだが。

「うん、取り調べは大体済んだからやるってよ」

「そ、そうか」

 リーンの時は盗賊団の討伐が絡んでおり、取り調べに時間がかかったのかもしれない。まず最初にジェークを初めとする本来の標的であった盗賊団の調べがあり、リーンはその後だった、ということも考えられる。

「でも、そんなの誰に聞いたの?」

 ケイトには、今日も獄舎に行って裁判の日程確認をすると伝えてある。

 である以上、こんな朝早くにケイトが恵一になにも告げずに足を運んで確認してくるとは考えにくい。

「獄舎の役人が来て言ってったよ。証言するなら、ちゃんと来い、ってさ」

「んん?」

 リーンの時と違ってえらい親切ではないか。

 事件としての重要性は、むしろあちらの方が大きいような気がするのだが……。

「どうも、エリスが今日中にあたしらに絶対に伝えとけ、明日証言者であるあたしらが来なかったら裁判を受けない、ってごねたみたいだぜ」

「あー、はいはい」

 エリスも、ほっときゃかなり杜撰な裁判の行われ方については熟知していて、手を打ったのだろう。

 考えてみれば、リーンはまったくそういうことを知らないというか、それ以前に裁判自体をどうでもいいと思っている珍しい被告であった。

 被告が動けば、一応こうして証言者に知らせには来てくれるのだな、と超がつくほどの杜撰さだという認識を、超がつかない程度なのだなと改めることにした。

「じゃあ、まあ、今日はゆっくりするか」

 明日なら、今すぐ叩き起こす必要は無かったんじゃねえか、とか言いたい気持ちもないでもないが、ケイトとしてはなんかすぐに知らせてやった方がよいと感じての行動であろうから、そこは咎めず、二度寝することにした。

「なんだ。また寝んのか。朝飯いらねえの?」

「あー、うん」

 結局、そのまま昼まで寝ていた。

 で、ケイトに叩き起こされた。

 さすがに、この時間まで寝ていたら叩き起こされても文句は言えない……でも、もう少し寝たかったなあ、と思っていると、

「さっさと来い。身なりちゃんとしてな」

 と、言い残してケイトは台所兼食堂に戻って行った。

 身なり、などという聞き慣れない言葉を聞いて訝しむが、以前にも一度こういうことがあった。

「あ、まさか」

 思い当たって、ケイトに言われた通りに身なりをちゃんとし、寝ぼけ眼もぱっちりと開いてから出ていく。

「あ、こんにちは。ケーイチさん」

「はい、こんにちは」

 それあるを予想していたゆえに、滞りなく挨拶を返す。

 台所兼食堂の椅子に、ミレーナがちょこんと座っていた。

「おう、ケーイチ、お嬢様が買ってきてくれたけん、食え食え」

 テーブルに広がる食べ物は、ミレーナの手土産らしい。屋台で買い求めたらしい軽食が並んでいる。

「ああー、これはどーも、いただきます」

 一頻り、食事に励む。

「ところで、今日はどうしました?」

 と、言ってから、なんか用事が無ければ来てはいけないみたいなふうに聞こえただろうかと思ってしまったが、ミレーナは気にすることなく、嬉しそうに言った。

「姫様のお招きがありましたので」

 そういえば、そういう機会あればまた是非とも同席させて欲しい、んでもって図々しいのは百も承知だが、ミレーナの方から恵一の失われた記憶の手掛かり――ということになっている魔王のことについて尋ねて欲しい、とお願いしていたのだった。

「そうですか……」

 いよいよか、今度こそと意気込んで――

「あっ」

「どうしました?」

「あの、その王女様にお会いできるのって、いつですか? もしかして、明日だったりします?」

「いえ、お招きいただいているのは明後日ですが……ご都合が悪いですか?」

 ほぅ、と大きく安堵の息をついた。

「いえ、明後日ならば、むしろ都合がいいです。明日だと、ちょっとやばかったので」

 超多忙を極める王女との面会も裁判も、どちらもおいそれと日程をずらせるものではあるまい。

「明日、なにかあるのですか?」

 基本、好奇心は旺盛な子である。ミレーナは目を輝かせて聞いてきた。

「ああー、実は裁判で証言することになっていまして」

「え? 証言ですか?」

 というミレーナの言葉には、またですか、という響きがある。

「あー、はい、そうなんです。またちょっとそういうことになってまして……」

 一連の経緯を掻い摘んで説明する。

「ああ、それでエリスさんがいらっしゃらないのですね。てっきりお仕事で出かけているものとばかり」

 お仕事に励んだ結果のお勤めには違いないが、只今収監中である。

「それにしても……そうですか。あの人が……」

 ここでミレーナが言う「あの人」というのはエリスではなく、青年のことである。

 説明の中で、青年がここ最近、巷で少々噂になっていた治療費の払えぬ人間を、格安で治療してやっていたその人であり、それがエリスに撲殺されたことも話していた。

 やはり、ミレーナとしては、その行動によって一方に迷惑を被っている人間がいたのだとしても、安く病気や怪我を治していること自体はどうしても善行であると思っているので複雑な心境のようだ。

「でも……契約破りはよくないことですからね」

 別段この場にいないエリスに気を遣っているというわけでもなく、契約によって色々なことがスムーズに運んでいるという知識さえあれば、強い魔術の力を利用してそういうことをするのはよくないことだ、という認識は誰もが持っている。

「明日は習い事があるので行けるかわかりませんが、行けそうだったら行きますね」

「はい、是非」

 というのもおかしな話な気もしたが、せっかく自分が証言するとこを見に来るというのだから、そう言っておいた。

「で、明後日ですが……この前と同じぐらいの時間に来ますから、それと服はこの前と同じものでいいですか?」

「ああ、はい。けっこうです。お願いします」

 王女様に会うのに適した服など持っていないので、また借りることになる。まあ、前と同じで構うまい。

「あ、でも、ケイトさんはちょっと違う方がいいですかね?」

 と、ミレーナがケイトに言う。

 確かにケイトはこの前普段は着ないような華麗な服にウキウキしていたようだったが、前と同じでいいよな? と言おうとしたところ、

「おっ! いいすか!」

 猛然と食い付いてきた。

 どんな感じのものがいいかをミレーナが尋ね、それにケイトがふにゃけた顔で悩みながら答える。

「あー」

 一応女の子なんだな、と思ったが口には出さないでそれを見ている。

 二人が、そうやってファッションに興味なしの男子としては入り込めぬ話題に没頭してしまっているので手持無沙汰になってしまった。

「……」

 アンは、一心不乱にミレーナが土産に持って来た食べ物を喰らっており、話相手になる暇は無さそうだ。

 つーか、一応人並みに興味があるなら普段からお洒落すればいいのにな、と思わないでもないが、ケイトとしてはミレーナが貸してくれるような普段ならば手が出ないような服だからガラにもなくウキウキしてしまうのであって、自腹で買える程度の服には興味が無いのだ。。

「そういえば、お嬢様」

「はい?」

 服についての談義が一段落したところを見計らって、恵一は言った。

「例の、魔王云々のこと、お願いしますね」

 ミレーナの記憶力を疑っているわけではないが、念には念で念を押しておきたかった。

「はい、それはもちろん」

 果たして、ミレーナはしっかり覚えていて言われずともそのつもりであった。

「すみませんね。お嬢様と言えども王女様に会えるのは滅多に無いでしょうに」

 正直、こっちとしても藁にもすがる気持ちなので快諾してくれるミレーナに甘えてしまっているが、多少なりともそのことが申し訳ないと思うところはあるのだ。

「いえいえ、そんなお気になさらず」

 ミレーナとしては、恵一がそんなことを気に病んでいるのが驚きのようだ。

「ケーイチさんは私の命の恩人ですから」

 この前の護衛に雇ってもらった一件では、それに加えて決闘の勝利報酬もあり計二万ゴールドの収入となったわけだが、ミレーナとしてはそれだけでは到底、恩を返したとは思っていない。

 そんなわけで言葉の端々から、或いは表情、挙措などからも、恩返しのためならできることはなんでもします、という気持ちが滲み出ており、恵一としてはミレーナみたいな美少女にそんな気持ちを向けられるだけでけっこう満足していたりする。

 まあ、ミレーナ自身がそういう気持ちな以上、大事な――元の世界に戻る手掛かりを得るための行動に力を貸してもらうのには遠慮することはないだろう。

「それでは、私はそろそろ……」

 数時間が経過して、ミレーナは席を立った。

「ああ、まだ明るいけど、送りますぜ。ケーイチが」

 と、頼もしげに胸を叩いてケイトが丸投げしてくるが、まあ言われんでもお送りしようとは思っていたので、恵一も席を立った。

 ミレーナは恐縮し、遠慮していたが押し切った。

「さ、行きましょう」

「はい、お願いします」

 二人で連れ立って家を出る。

 ミレーナのように見目麗しいお嬢様の隣に並んで歩き、おれがこの子を守るのだ、という気分でいるのも、なかなかよいものだ。

 と、悦に入って歩いていると、前方に立ちはだかる者がいた。

 年齢がまちまちの男が三人ほど――

「ん?」

 彼らは明らかに、立ちはだかって恵一とミレーナの進路を妨害していた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ