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各個撃破しよう

 さすがに、恵一もそれ来たとばかりに即座に前進はしない。

 恵一が剣を振った時の攻撃範囲を把握しているのと同様、青年も自分がどの距離まで接近を許せば危ういかは熟知しているはず。

 と、なると答えは一つだ。

 誘っている――

 意図は明らかだ。恵一を釣り出そうとしているのだ。見れば、斜め前にいた男がいつの間にか、さらに側面へと回り込んでいる。

 視界の端っこにいた男が、今や眼球をやや動かさねば見えない位置にいる。

 餌に食いついて前に出れば、青年は後ろに飛び下がりつつ、おそらくは魔力の壁を張って恵一の攻撃を防ぐ。

 そして、その間に男がエリスに斬りかかる算段だろう。

 その手に、乗るか。

 じっと、恵一は耐えた。その間にも、礫はどんどん飛んでくる。

「エリス」

「……はい」

 思案を練っていたらしいエリスは、やや間を置いて恵一の呼びかけに応じた。

「魔術師じゃない男の方が、横に移動してる。気をつけて」

「……はい」

 恵一の後ろに隠れて思考しているエリスが男の動きに気付いていないのでは、と危惧しての呼びかけだったが、正解だったようだ。

 二人で、互いに距離をとって相対することで敵が注意力を二方向に分散せざるを得ないようにして有利に運ぶ。

 正に、こちらがやろうとしていた戦法を逆にやられている状態である。

 だが、こうしてくっついていることで有利なこともある。

 今の会話はごく小さな声で行っており、青年たちの耳には届いていないだろう。

 そのような声で会話できるのも、恵一とエリスがくっついているからであり、こうして打ち合わせができる。

 なんとか凌いでいるうちにエリスにいい作戦を考えてもらい、それに賭けるしかない。

 青年の前進は――止まった。

 さらに前に出られたらどうしようかと思っていたところなのでほっとした。さすがにこれ以上近付いては恵一が予期せぬ素早さで突進してきた時に、逃げるのも壁を張るのも間に合わないと踏んだか。

 だが、恵一が振り絞った集中力にヤスリをかけられているような状況は続いている。

 青年は依然として涼しい顔であり、恵一が十分に防ぐことのできる速さと強さの礫ならば放つのにほとんど魔力を消耗していないのがわかる。

「契約書を渡してくれないか?」

 青年が言った。相も変らぬ笑顔である。

 エリスは思案にくれているのか、すぐに反発しそうなものだが、無視。

「渡せるわけないでしょ!」

 代わりに、と言うわけでもないが、恵一が間髪入れずに拒否した。

「困ったねえ」

 本当に困ったらしい顔をしているが、相手が困っていることなどどうでもいいのだ。あの善人面は。

「別に、金を返さないと言ってるわけじゃないんだ」

 つい、なに言ってんだボケと言いたくなるが、それすらももしかしたらこちらの集中力を乱すための戦法なのでは、と思い、努めて冷静に飛んでくる礫を弾くのに専念する。

「契約書を破ったら、グエンさんも安心するだろうから、そうしたら僕の方から金を返すように言うよ」

 金があるのに逃げた債務者である。契約による罰則の恐怖が無くなれば大喜びで金を返さないに決まっている。

 そして、その時に青年はどうするのか。責任を持って、痛め付けてでも金を返済させるのか。

 いや、きっと「困ったねえ」と笑いながら、いつまでも、返してあげなさいよと言っているだけだろう。

 交渉――というも馬鹿馬鹿しい。そんなことが聞き入れられるとでも思っているだろうか。

 だが、やはりその笑顔からは、自分はよいことをしているのだと確信しているのが見て取れる。

 もはや、恵一は青年の笑顔に禍々しさすら感じている。正に、アレは彼の倫理観がおかしなことの証なのだ。

「いい気になっていますね」

 背後から、ぼそっと声がした。

「エリス」

 青年の悪意無い――恐ろしいことに本当に悪意は無い――申し出を、恵一とて腹立たしく思っていたが、当然のことながらさらに激怒するに違いないのはエリスだ。

 せっかく自分が頑張って礫の攻撃を防いでいる間に作戦を考えてもらっているのに、彼女が怒りで冷静な思考力を失うのは非常によくない。

「油断しているようです」

 弾んだ調子が、その声からは感じられた。

 元々が感情をあまり表に出さぬエリスにしては、これは相当に大きな表現と言える。

 挑発のために、わざと神経を逆撫でするようなことを言っているのでなければ、あのような申し出は、自らの優位を確信した上でのものだ。

 さすがに、契約書をよこせ、それを破り捨てた上で契約の通りにさせるから、などという話がすんなり通るとは思っていないだろう。

 そのような申し出が自然に口を出るということは、優位さにいい気になっている――つまり、油断をしているということだ。

 そして、慢心油断というものは結局のところ敵にとっては喜ぶべき要素でしかない。

 あまりにも強い確信は、ありうるかもしれないあらゆる事態を想定するという行為を邪魔しやすい。どうしても、その行為を無駄であると見做すようにと引っ張られてしまうのだ。

 そこで、その優位が少しでも揺らぐと途端に脆くなってしまう。確信が強ければ強いほどにそうなる。

「アマモトさん」

 ぼそりと、本当に聞き取るのがやっとなぐらいな小声でエリスが話しかけて来る。

「気取られたくありません。返事をしたり頷いたりしないでください」

 うん、と思わず頷きそうになるのを押さえる。

「私の言うことがわかったら、左手を開いてください」

 恵一は右手で剣を持ち、左手は空いているが、その左手はさきほどから握り締められていた。

「わかりましたか?」

 ああ、と返事する代わりに、左手を開いた。

「くっ!」

 そちらに気を取られたところへも、容赦なく礫は飛んでくる。

「説明します」

 ぼそり、と言った。

 恵一の位置からはもちろんエリスがどういう姿勢なのかは見えないが、この時彼女はいかにも怯えて恵一の後ろに隠れているようにして、口元が青年と男から見えないようにしていた。

「ほら、いつまでももたないでしょ」

 青年がまた困ったような笑みを浮かべながら、礫を飛ばしてくる。

 早く降参してくれないかなあ、困ったなあ、と言わんばかりである。

「敵は、アマモトさんを釣り出して、私をやるつもりでしょう」

 青年へ恵一が、エリスへ男が攻めかかるという事態になるわけだが、そうなった時に自分が恵一の攻撃を凌いでいる間に、男がエリスを倒せると踏んでいるわけだ。

 青年は呪術行使した上でのエリスの契約履行を阻んだことから、最低でもレベル25以上と思われる。

 そのレベルの魔術師に全力で壁を張って防御に徹されると、レベル10程度ではそうそう簡単に打ち破れない。

 男のレベルはいかほどかは不明であるが、先程恵一の攻撃をしっかりと受け止めたことから考えて、レベル10よりも著しく低いということはないだろう。

 レベル12の魔術師であるエリスにとっては、肉迫されると少しきつい相手だ。

 呪術を全開にすれば、条件はほぼ同じとなるが、自前の能力である青年と違い、エリスの方は持続性に問題がある。

 最悪の場合、男の攻撃を防いでいる間に発作が起きないとも限らないのだ。

 要するに、そのように一対一の状態となれば、青年よりもエリスが先に倒れてしまう可能性が高い。

 そう踏んだからこそ、あちらはその形に持ち込もうとしているのだし、こちらは差し当たって動く術が無いわけである。

「それに乗った、と見せましょう」

 ぼそりぼそりと、エリスの声が続く。

 時々、握った左手を開いて、ちゃんと聞こえているよ、と合図を送りつつ、淡々と飛ばされてくる礫を防ぐ。

 かかった! まんまとこちらの望む形になった――

 一瞬でもそう思わせることで、確信に補強された慢心はさらなる肥大化を遂げ、意表を衝いた行動に対する脆弱性を露呈する。

「それには――」

 エリスが、簡潔に恵一がすべきことを説明し、そのか細い声を聞き逃すまいと、目と体は礫を防ぐのに動員しつつ、耳だけは後方へと集中する。

「そろそろ観念してくれないかな。グエンさんは、怖がっているだけなんだ。契約書が無くなったら安心して、却ってことは上手く運ぶさ」

 青年が、にこやかに呼び掛けて来る。

 作戦会議中じゃ、だぁっとれ! ――と、叫びたいのを堪えつつ、耳は後ろへそれ以外は前へ。

「よろしいですか?」

 エリスが、二度繰り返してから念を押してきた。

 握っていた左手を開く。

「それでは、タイミングは任せます」

 左手を開く。

 礫が飛んできて、それを弾く。

 まず、恵一は前進する。まさに、相手が望む行動を初手で行うわけだ。

 そして、そのタイミングだが、青年の笑顔を見るにそこまでしないでもよさそうな気はするのだが、少しでも警戒を抱かせぬきっかけが欲しい。

「っと!」

 そんなことを考えていたら、長らく同じ作業をしていたことによる集中力の切れ目もあってか、礫への対処が遅れ、なんとかギリギリで弾いた。

 青年は苦笑。ほら、もうそろそろきついでしょ、おとなしく言う通りにしなさいよ、とでも言いたげな表情だ。

 むかっとしたものの、むしろこれだと思った。

 段々と礫を防ぐのがきつくなってきたので、ヤケクソで突っ込む――というフリをするのだ。

 いや、段々きつくなってきたのは本当なのだが、だからこそ真実味があるだろう。

 二つ、普通に防いだ。

 三つめ、遅れた。青年が笑う。

 まるで、その笑みが合図になったいたかのように、恵一は前に出た。

「おおおっ!」

 叫んだ。思わず出ていた声だが、いかにもジリ貧な状況を打開するにはこれしかないと思い詰め、ヤケクソになった人間が出しそうな声だった。

 一歩、二歩――

 青年は後ろに飛びすさりつつ、また胸前に両手をかざした。薄い透明の膜のようなものが前面に展開する。

 あれが、魔力による壁か。

 視界外だが、右の方で床を蹴ったような音がしたのを、確かに聞いた。男が、エリスに向かって行ったのだろう。

 エリスも、即座に壁を張っているはず。

 お互いに、魔術師が壁を張り、それを剣を装備した近接戦闘役が攻めるという形になっている。

 自分の方が長く持ち堪えられる、と青年は踏んでいるであろう。

 で、おそらくその観測は正しい。レベル差などを考えると、かなり高い可能性で、恵一が青年の壁を破る前に、エリスのそれが男によって突破される。

 壁がなくなれば、そこそこのレベルであろう男に、エリスが近接戦で対抗できるはずもない。あっという間に叩き伏せられて、彼女に剣を突き付けられたら、恵一も降参だ。

 だから、その通りに行動したら恵一たちの負けである。

 意表を衝かねばならない。そこでエリスが考えた作戦が、まず最初にその通りな行動をして見せてから、転進することだ。

 青年の前で転じるからには、その進む先は決まっている。

 恵一は、前進し、青年が壁を張った瞬間に斜め右後ろに跳ねた。

 視界がぐるりと変わり、そこでは予想通りの展開があった。

 壁を張ったエリスに、男が剣を振り上げている。

「あっ!」

 恵一の後ろから聞こえた青年の声は、恵一が剣を左手に持ち替えて、右手で背中にあったクロスボウを取ったことに気付いたために漏れたものだ。

 油断しきった青年の様子から、基本的にこの作戦の第一段階は成功するとエリスは考えていた。

 恵一が向かうと見せて転じる。青年は壁を張ってしまっており、すぐに次の魔術を行使できない。

 だが、それとて短時間のことだ。意表を衝く戦法だが、その代わりに恵一は青年に対して背中を向けてしまうというリスクを犯している。

 青年はすぐに恵一の背中へ魔法で攻撃してくるだろう。

 壁を張ったエリスを攻撃する男を側面から恵一が攻撃する、という二対一の形を短時間でも作り出すのがこの作戦のポイントであるが、男を倒せぬうちに青年が参戦してくれば優位は崩れる。

 むしろ、壁を張っていてエリスが実質攻撃に参加できない状況であるから、青年と男が恵一に対して二対一の形を手に入れることにもなりかねない。

 故に、本作戦の要点は、短時間のうちに男を無力化することにある。

 男は、恵一が青年に向かったのを確認した後に自分もエリスに向かっているが、見るからに昨日今日戦いを始めた素人ではないから、当然、近視眼的にエリスだけしか注意していない、ということはないだろう。

 恵一が転じてこちらに向かってくることを、足音などから察して気付かれてしまえば――というか、おそらく気付かれる――男もまた向きを変えてしまう。

 二対一、ではあるが、この場合エリスは壁を張っており、即座に攻撃に移れないのは青年と同じだ。

 そうなると、男が恵一の接近に気付き、そちらへ向き直ってしまえばそれほどに優位というわけでもない。

 その辺のところを恵一の後ろで考えていたエリスが、背中に張り付けるように吊り下げられていたケイトのクロスボウに気付いた。

 既に幾度も述べたように、ケイトでも扱えるクロスボウは小型であり、背中に携帯していると完全に恵一の体に隠れてしまって正面からは見えない。

 この家に入ってから、恵一は全く青年たちに背中は見せていないので、クロスボウを携帯していることを知らないはず。

 恵一はクロスボウに矢を装填し男に向けた。

 その際に止むをえず立ち止まる。

 一瞬一瞬が貴重な時に削ぎ落すべき無駄にも見えるが、どうしても必要な時間である。

 会話からいきなり戦闘に突入する事態を想定していたためにクロスボウは矢を置けばよい状態にはしてあったが、その矢を置く瞬間だけはどうしても立ち止まらざるを得ない。

 だが、エリスの方を向いている男にとって、恵一の接近を察知するのはなんといっても足音だ。

 足音の接近が無ければ、反応がどうしても遅れる。

 それでも、青年の声などのせいもあり、何かが起こっているというのは察した男が、恵一の方を向く。

 向くのと矢が放たれるのと、恵一が再び前進を始めるのとほぼ同時であった。

「なにっ!」

 男は突如飛んできたまったく想定外の矢にほとんど対応できなかった。

 辛うじて、体を捻ることで、首に当たりそうだった矢を右腕の上腕部で受けることができたぐらいだ。

 それとても、首に突き刺さっていればそれで終わっていたであろうから、なかなかよい手際だったと言えるが、それにより体勢が崩れたところへ恵一が突っ込んできた。

「おうっ!」

 気合いを入れて斬りかかる。どこを斬るかについては、特に考えずに全力で両手で握った剣を振り下ろした。

 咄嗟に男は剣をかざしたが、本当に咄嗟だったため、その剣を持っていたのは右手だけであり、両手を使った恵一の渾身の一撃を受け止めることができなかった。

 剣は押し下げられ、恵一の剣が男の右肩に食い込む。

 恵一は第二撃を送り込み、それによって男の右腕をさらに傷付けることに成功し、男は剣を取り落とした。

 落ちた剣を蹴飛ばして遠ざける。

 男のこれまでの動きから、右利きなのは間違いない。

 利き腕を傷付け、その手から剣も離した。

 これをもって男が無力化した、と考えていいものかどうか恵一は迷った。

「アマモトさん!」

 咎めるような響きのエリスの声に、まだ足りんのだと認識した恵一は、

「ごめんなさい」

 と、言いつつ、無防備の男の右の太腿に剣を突き刺した。

 男が呻きつつ、片膝をつく。武器を奪ってその上に足を傷付け機動力をも奪った。これで無力化した、と見做してよかろう。

「エリス」

「はい」

 上手くいったな、というふうに名前を呼ぶと、エリスは張り詰めた緊張感を維持した声で答えた。

 そうだ。肝心の魔術師の青年が無傷で残っているのだと気を取り直して、そちらを見れば青年は距離をとったまま部屋の隅にいる。

 苦い顔をしている。

 基本、笑顔しか見ていなかったので、新鮮であり、さらにはその笑顔にイラついていたせいか、その苦さが恵一にとっては痛快でもあった。

「さあ、続けますか?」

 エリスが余裕たっぷりに言う。

 実はそこまで余裕があるわけではない。青年が高レベルの魔術師であることには変わりないのだ。

 だが、敢えての余裕ぶりを見せつけるようにしてから、

「それとも、債務者を引き渡しますか? そうしてくれたら、あなたたちとはこれで終わりです」

 意外なエリスの言葉に恵一は驚いた。絶対に殺すと言っていたほどに怒っていたはずなのに、それはもういいのだろうか。

 確かに、ここで債務者を引き渡してくれるのならば、それで青年との間では手打ちにしてしまった方が、彼が高レベルの魔術師であることを考えるとよい話である。

 しかし、それはあくまでも純粋なビジネスの話であって、そういうものを度外視する怒りによって動いていたのではなかったか。

 リスクを計算して、冷静に思い直したのだろうか。いや、きっとそうに違いない。と、平静そのものの顔をしたエリスを見て思った。

「それはできないよ」

 苦味を残しつつ、例の困ったような笑みを青年は浮かべた。

「ならば、致し方ありません」

 エリスの目配せに、恵一が頷き、青年へと向かう。

 青年は、一度魔力の壁を解除していたが、再びそれを張った。

 部屋の隅に背中をつけてそうされると、体の前面がほぼ壁によって阻まれてしまう。

 足――

 床スレスレに剣を振って足を斬ってやれ。

 と、そう思って身を沈めようとしたが、青年の方が先に動いた。膝をついてしゃがみ込んだのだ。

 それにより、恵一が狙っていた足下にも壁が来てしまい、打つ手が無くなった。

 この間に、男が回復して戦線復帰してくるのでは、と思って確認すると、さすがに腿を突き刺してやったせいでそうそう動けそうにない。

 恵一は純粋に足の痛みによるものと思い込んでいたが、実際のところは大量の出血により男は意識朦朧となっていた。

 あれなら当分――いや、当分どころか治療を受けるまで回復は無理だろう。

 ほっと安心するが、かといって家の壁で背後を、魔力の壁で前を守った青年に対する攻め手が無い。

「攻撃してください! 早く!」

 エリスが、何をしとんじゃこのボケ、と言わんばかりの気合の入った声を発する。

 いや、攻撃と言っても――と戸惑った恵一の顔を見てとったか、

「壁に攻撃するんです! 早く!」

 言われるがままに、恵一は剣を振り上げ、振り下ろした。

 どしっ、と剣がめり込む感触が腕を伝わってきた。魔力の壁は硬質ではなく、弾力を持っていた。

 と、言っても剣がはじき返されるほどではなく、僅かにめり込む感じだ。

 粘土を叩いたような感じ。

「手を休めないでください」

 と、エリスが言うので必死に青年の壁を剣で叩きまくった。

 青年は――辛そうだ。

 青年とて防御に徹しているので、反撃をできない状態だ。反撃のために別の魔術を行おうとすれば、その切り替えの際に隙が生じてしまう。

「そのまま、攻撃し続けてください。決して無駄ではありませんからね」

 エリスは、恵一が壁を叩き続ける行為に疑問を持っていると察して、念を押すように言った。

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