判決
「彼女は、犯罪行為をせずに立派に生きていけます」
気負いに気負った恵一の証言は、以上をもって終了した。
裁判官も熱心に耳を傾けてくれたし、傍聴人たちも所々で、ほお、とか、へえ、とか感嘆の声を発しており、口が達者とは言えぬ自分にしてはよくやったものだと思う。
当のリーンはというと、最初は恵一が必死になんか言ってるのを見物してるような、相変わらずの当事者なのに他人事みたいな感じだったのだが、最後の方では少し沈思するように見えた。
次に証言に立ったのはもちろんガルスである。
事実を証言しつつも、感情的な方向へと行っていた恵一の証言とは逆に、ガルスはいかにリーンが極悪盗賊団の討伐に際して役に立ったかを淡々と語った。
実際に、リーンが果たした役割が大きいのだ。
無理な誇張をせずとも、あれほど討伐、そして捕縛が上手く行ったのは、この被告の功績なのだと思わせるに十分な事実をガルスは並べることができた。
「以上です。寛大な御処置を願います」
そう言ってガルスが着席すると、裁判官たちは寄り集まって話し始めた。
傍聴人たちが騒ぎ出す。
「おう、いいじゃねえか、そんな重いやつじゃなくてよ」
「立派なもんだ。親父の仇とったんだからな」
「まあ、もうそんな悪さしねえだろ、たぶん」
それらの声を総合すると、それほどに悪質ではないし親父の仇を討ったのは立派だし、再犯の危険性もたぶん無いから、罰は軽いものでいいというものであった。
恵一としては、聞いた人間がリーンに重罰を望まぬようにというつもりで証言したのだから、この傍聴人の反応はそれが成功したことの証であり、やった、と思う。
だが、問題は裁判官がどう思うかだ。
証言と言いつつ、恵一もガルスも確かに見たことを証言しながらも所々でリーンに有利になるようなことを感情的に或いは冷静に述べており、そういう意味では純粋な証言者というよりも弁護士のようだったと言っていい。
対して、リーンへ対して鋭くその非を衝くような、いわば検察官の役目を果たす人間がこの裁判にはいない。
この辺り、やはり恵一のイメージする裁判とは違う。
だが、この検察官がおらず弁護士はいるという状況は、正直リーンにとってつまり恵一にとって都合がよいので、それでよい。
恵一としても、おれの知ってる裁判と違うなあ、とは思いつつ、その自分の知っている裁判に対して思い入れがあるわけでもなんでもないのだ。
「どうかな?」
それでも、いざ判決が下るまでは不安である。
その不安を紛らわすために、ケイトに声をかけた。
「うん、いいんじゃないか」
果たして、ケイトは期待していた答えを返してくれた。
「みんな軽い刑でいい、って言ってるからな、これは行けるぞ」
「ああ……ん?」
頷いて――腑に落ちぬものを感じて首を傾げる。
みんな――つまり傍聴人たちが騒いでいる内容が、判決に影響するのか?
そういうのって、裁判官は無視して法令に則って判決を下すのだし、そうするべきなのではないか。
「そりゃ影響するよ」
問えば、ケイトは当たり前のように頷いた。
そう言えば、傍聴人どもがけっこう騒いでいるのに、恵一のイメージする裁判では間違いなく裁判官の口から出るであろう、静粛に! という声が一切聞かれない。
裁判官たちは、傍聴人たちの声を全く無視するのではなく、むしろ彼らの様子を窺っている素振りすらしている。
なんかもう、そういうものらしい。
これもまあ、都合がよいので、それでよい。
――とは言い切れぬものを、さすがに恵一は感じてしまった。
これは、例えば権力者やら金持ちが裁判にかけられた時に、人を大量に雇って傍聴人を装って送り込み騒がせれば、判決を左右することができてしまう、ということではないのか。
今は被告どころか、証言者という直接的に判決による影響を受けぬ立場なのでよいが、自分が被告であり、もしもそういった力のある人間が自分の有罪や重罰を望んだら、抵抗する術が無い。
一応、裁判というものがあるのだな、と思っていたが、恵一の感覚に照らすとやはり随分と不備があるように思える。
まあ、無いよりはマシと前向きに捉えるべきであろうか。
「ケーイチさん」
名を呼ばれた。
「ああ、どうも」
振り向く前に声でわかっていた。
「すごくよかったですよ」
と、ミレーナは恵一の証言を褒めてくれた。
証言を褒める、というのも妙な話ではあるが、既に述べたように純粋な証言というよりかは弁護の要素が含まれており、そこを彼女は褒めたのだ。
「ふへへへ、お久しぶりっす。おう、アン、尻尾お貸しせえ」
速攻でケイトがミレーナに媚びを売り始め、アンが尻尾をふぁさっとミレーナの方に差し出し、当たり前のようにミレーナがそれを持ってモフり始めた。
野次馬もとい傍聴人たちも声を出すのに疲れたのか飽きたのか、段々と静かになってきた。
そして、集まっていた裁判官たちが各々の席に戻り、いよいよ静寂となる。
「被告人が、盗賊をしていたことは明白である」
そのことはリーンが認めているので争点にはなっていない。
「盗賊は許し難い罪である」
実際のところ、盗賊という罪状に対する刑罰の基準についてはよくわからない。それこそジェークたちなどは裁判無しの上に公開処刑だったわけだが。
「しかしながら、被告は物心ついた頃には盗賊団におり、それが罪であることを認識する機会を持たぬままに成長した。現時点においても十代半ばという年齢である」
何歳から下は未成年とか、そういう考え方自体が無いが、制度として明文化されていないだけで、当然のことながら年齢が低ければ、それだけ未成熟なのは致し方ないことである、という感覚はこの世界の人々にもある。
「また、証言から、殺しを当然のようにしていたとは考えられず、盗賊ではあるが一定の節度を持ったものであると認められる」
一定の節度、とは堅苦しい表現だが、要するに「マシな方である」ということだ。
「盗賊は許し難い所業であるが、これらは酌むべき事情と認められる」
上げたり、下げたり、といったもどかしい印象を抱いてしまうが、色々と事情は察したとしても、盗賊行為自体を正当化するようなことは絶対に無いのだ、と言いたいのはわかるし立場上それも当然であろうから、恵一は黙って聞いていた。
「さらに、極悪盗賊団を討伐に赴いた討伐隊への協力はまことに大なるものがあり、これを一人残らず討取、捕獲できた成果は、被告の協力無くしては甚だ困難であったことを認める」
裁判官は、一旦言葉を切って、リーンを見た。
リーンは、なんの気負いもなく緊張もなく、平静そのものに見返す。
「証言によると、その際に自らの命を顧みずに戦闘に加わり、盗賊団の首領を討ち取っている。これらの功績は大きく、罪を償うに足るものであると認める。よって……」
恵一は、そこで思わずほっと息をついた。
盗賊の罪は罪として、討伐の協力を功として、それが相殺するのがむろんのこと恵一の望みであったが、罪を帳消しにするほどの功と認められるかどうかが懸念であった。
事実として、協力による成果は大きく、ガルスの証言がそれを裏付けている。
しかし、その動機は、別にリーンが前非を悔いて盗賊団の討伐に協力しようと願ったわけではなく、あくまでも父の仇討ちである。
ジェークたちを野放しにするわけにはいかない、というのも父の仇が、父の嫌ったやり方でのうのうと生きているのが許せない、という面が強く、社会正義のようなものから生まれた感情ではない。
その動機の部分を衝かれれば、自己弁護など欠片も考えないリーンはあっさりと全ては父の仇討ちのためだったと認めるはずで、それが判決に微妙な影響を及ばしやしないかと恵一は少し不安だったのだ。
だが、裁判官は、その動機の部分は故意にか知らずにはかはわからぬが、問題にしなかった。
「一年間の労役刑に処す」
裁判官は、言ってからうかがうように場内を見回した。
傍聴人席からは一切声は上がらない。
それを見て、安堵したように表情を緩めて、裁判の閉廷を宣言した。
裁判官たちにしても、このちょっと話題になっている父の仇を討った盗賊の少女の裁判にはいくらかプレッシャーがかかっていたものと見える。
先程、リーンへの寛大な処置を望んでいた傍聴人たちが文句も言わずに、よかったよかったと言わんばかりの顔でぞろぞろと出ていく。
それを見て、やはり労役一年というのは相当軽いのだろうと思った。
実際、いくら人を殺してはいないと言っても盗賊をやっていたのは事実であり、なにしろ人権意識とか希薄もいいとこなので厳罰を適用する理由などいくらでも捻り出せたに違いない。
「おう、ケーイチ、よかったな」
ケイトが、肩を叩いてきた。
そう言うということは、やはり相場――と言うのもおかしいが、罪状に対してそれは軽い刑なのだろう。
「あ、待って!」
護送してきた獄吏に腰ひもを引っ張られつつ、リーンが思い出したように叫んだ。
帰り支度をしていた裁判官たちと、まだ残っていた傍聴人たちが何事かとざわつく。
「グールトは! グールトの裁判はいつなの!」
忘れていた。
いや、もうホントに申し訳ないのだが、リーンのことでいっぱいで恵一はすっかりグールトのことを忘れていた。
彼もまた、リーンと同じく縛についているのだ。
「……グールトとは、君の部下だったという男だな」
裁判官は、しばらく時間を要したが、そのことを思い出したようだ。
「そうよ」
「彼の裁判ならば、数日後に行われるはずだ。細かい日程は覚えていないが」
「私より重い罰になるってことはないわよね!」
「ん、それは……」
「頭の私より、部下のグールトの方が重い罰なわけないわよね!」
畳み掛けるように、リーンは叫んだ。
それに裁判官たちは、そうだと明快には答えられない様子である。
まだ行われていない裁判の判決についてなど、答えられないのは当然であるにしても何も言えないのは、彼らの頭の中に、グールトはリーンに比べて年齢がいささか上であり、低年齢による情状酌量の余地が認められないのでは……となると、その分リーンよりも重い罰が下る可能性はあるのではないか、と思ってしまったからだ。
「グールトは奴隷として売られるために連れてかれてるとこを私たちが襲って、それから仲間になったのよ」
「ふむ、つまり、君たちの奴隷になったからであって、盗賊をやっていたのは彼の意思ではないということかね?」
「違うわよ。グールトは自分の意思で私たちの仲間になったの」
「ふむ、そうなのか」
困ったような顔で、裁判官は言った。
その顔を見て、さすがに思うところあったのか、リーンは考え込んだ。
「……もしかして、グールトの意思じゃなかったって方が軽くなんの?」
「……うむ、まあ、そうだな」
「じゃ、そっちにして」
少し肩を震わしているなど、やや兆候は出ていたものの耐えていた裁判官の一人が遂に堪え切れずに吹き出して下を向いた。
一人が決壊すると、それにつられて他の者も、そして傍聴人たちは全く遠慮なく笑う。
決してリーンを馬鹿にしているわけではなく、多少の好意すら含んだ笑いであるがリーンにしたら真剣なので、突如起こった笑い声には訝しげである。
時間も迫っていたので、腰ひもを引っ張られて退廷していったが、
「じゃ、グールトのこと、さっき言った感じで頼んだわよ」
と、偉そうに裁判官に言い置いていった。
そんなこと頼まれても、裁判官たちもそもそもグールトの裁判を担当するかどうかすらわからないのだから困るだろう。
「お嬢様もおることだし、ぱーっと買ってこうぜ」
と、ケイトが言うので、そこそこ豪勢なもんを買い込んだ。名目としては、リーンの判決が軽微で済んだことを恵一の証言による功績と見てのお祝いであり、ケイトとしてはミレーナへの接待のつもりもある。
自宅にて、楽しく飲み食いしていたのだが、エリスが帰ってきた。
その瞬間、ケイトは、
「あっ」
と、言った。こいつのこと忘れてた、という感じである。かくいう恵一もちょっと忘れかけていた。
「ただいま帰りました」
相も変らぬ不機嫌っぷりで、挨拶だけして部屋に引っ込もうとしたエリスの足が止まった。
視線はまっすぐにミレーナに行っている。
「まあまあまあまあ」
ケイトが、よくやるなんもかも有耶無耶にしようとする時の笑顔と馴れ馴れしさでエリスに近付いていく。
「ほら、あたしらの話にちらちら出てくるからエリスも知ってるだろ。ハウト男爵の御令嬢のミレーナ様だ」
そう言った直後に、頼むから粗相してくれるなよと小声で付け加える。
「どうも、はじめまして。ミレーナ・ハウトと申します」
ミレーナは立ち上がり、優雅に名乗った。
アレことお忍びを頻繁にしていて、基本味付けが濃ければなんでも美味いという令嬢らしからぬところが多々ある彼女だが、挙措動作はやはり貴族のそれである。
頭の下げ方一つでも、違う。
「ああ」
エリスは、頷いた。
「御丁寧な挨拶恐縮です。私、エリス・アッシュと申します」
ほお、と思わず言ってしまうぐらいには、エリスの動きは堂に入ったものだった。
いや、ミレーナと遜色ないと言ってもいいぐらいに洗練されたものだった。
ケイトなんかも、普段の行動言動とかからは想像できないぐらいにやろうと思えばちゃんとできるのだが、さすがにこの洗練は無い。
やはり、エリスには時々こういうふうに育ちのよさを感じさせるものがある。
「では、やることがありますので、失礼します」
「あ、待ったエリス」
ケイトがエリスを呼び止めた。
挨拶はきちんとしたが、不機嫌には変わりないエリスをミレーナと同席させたい理由は無いので、呼び止めたのは別の理由である。
「ケーイチになんか頼みたいっていうの、まだ決まらん? まあ、利子分は稼いだからもうちょいダラダラしててもいいんだけどさ」
そろそろ、ギルドに行って新しい仕事を、いや、そう言えばエリスが何か頼みたいとか言ってたな、という話をさっきまでしていたのである。
「ふむ」
そこで、エリスは少し考える様子であった。
「もうしばらく……そうですね、明日まで待ってください」
「おう、明日だな」
「はい……明日になれば、はっきりします」
エリスは、部屋に行ってしまった。
「あれがエリスさんですか」
ミレーナは、呆けたような顔で言った。
噂には聞いていたが、呪術師というのは本当にあんな重病人みたいな顔になっているのだなあ、と思ってはいてもケイトとかリーンみたいにはっきり口には出さない。
「まあまあ、呪術師と言ってもそんな悪い奴じゃないんで、気にせんでつかぁさい」
珍しく、ケイトがエリスを擁護している。呪術師と近付きになるのを嫌忌してミレーナが自分らに寄りつかなくなるのを恐れているようだ。
「そうですね。きれいなお辞儀をしていましたし」
だから確かに悪い人ではなさそうだ、というミレーナの感想も、それはそれでなんかズレているように恵一は思うのだが、ミレーナが「きれい」というからには、やはりエリスの挙措動作は作法にかなったものであるようだ。
そのことから、きちんと教育を受けて礼儀を身につけた人物だ、という意味であるとも採れる。
どうもミレーナは呪術師についてかなりイカれた人間を想像し、それを恐れていた節があり、礼儀がちゃんとしていて話もできる、というだけでだいぶ印象が改善されたようである。
「そういえば、エリスさんからお仕事を頼まれるのですか?」
「ああ、はい」
「呪術師の人は、どんな仕事を依頼されるのでしょうね」
ミレーナは呪術師が頼むお仕事とやらに興味を持ったようだが、それについては恵一たちも未だ詳しくは知らぬ。
それに、仕事と言っても呪術師としてではなく、金貸しとしてのものでありミレーナの頭の中でぐるぐると渦巻いているようなことではないだろう。
借金とか金貸しとか、どうもミレーナとしては実感しにくい事柄だ。
ケイトが借金をしていて、それを返すために恵一が奮闘しているのだということを情報としては知っていても、いまいちその辛さを理解しきれぬところがある。
ハウト男爵家の財政事情は知らないけれど、領地経営やら軍費やらで借金の一つや二つはしていてもおかしくない。
だが、それを実感させるようなことは、ミレーナのところまでは来ないだろう。
「またなにか機会があればと思ってはいるのですが」
ミレーナとしては、恵一に恩を返す意味でも、またこないだのような機会があれば護衛なりなんなりに雇ってゴールドを流し込みたいのであるが、ミレーナは金銭に苦労しない代わりに当然ながら自分で大金を動かせる立場でもない。
「ああ、いや」
そんな恩とか気にしないでください、と言おうとして一瞬詰まる。ケイトのことを考えたらあまりに無欲なのも考えものである。
「いや、もうそん時はお願いします。もちろん、きちんと仕事はしますけえ」
で、その詰まった一瞬を衝いてケイトが営業をかける。
その後は、他愛も無い話題に変わり、楽しく過ごしたのだが暗くなる前に帰らねばとミレーナが席を立った。
暗くなる前にと立ったのだから、当然まだ暗くないのだが、一応恵一が送っていくことにした。
道行くと、通行人――主に男がミレーナの顔を見て、その後に自分を見て、なにか言いたそうに去っていく。
まあ、まったくもって釣り合っていないのは自覚しているので、あんな可愛い子になんであんな程度の男が? というような視線ならばいくらでも来いという感じだが、あれは騙されているのではないか、という疑惑を向けるのは地味に傷付くので止めて欲しい。
「あ、そういえばもしかしたら近々姫様にお会いできるかもしれません」
「えっ、本当ですか」
「日取りが決まったらお知らせしますね」
「お願いします」
期待に胸が高鳴る。
その一方、これで駄目ならいよいよ打つ手が無いぞ、という不安もどうしようもなくある。
もうその時はしょうがない。ケイトの借金問題を片付けてから旅立つしかあるまい。
しかし、旅――と言っても、自分にそれができるかというと心許ない。
ミレーナの護衛でハウト男爵領に行った時は、馬車についていけばよかったし、宿の手配なども当然自分ではしていない。
こういう時に頼りになるのはケイトなのだが、これに限ってはちょっと頼れない。
そもそもケイトは借金を返済し終えたらそのまま王都に住めばよいのである。万が一、恵一に同行してくれると言ったところで、王都にずっと暮らしていたケイトは、旅先でのことなど慣れてはいない。
アンは、旅自体はできるかもしれないが、おそらく彼女にナビゲートを頼めば森から森へと野宿を重ねる獣人スタイルになるであろう。
となると、あとはエリスである。
で、定住しないで旅をしているエリスならば、道先案内人にはうってつけだ。
ただまあ、その代償として何を求められるやら、という不安だけがネックである。
彼女のポリシーとして、おそらくタダでは引き受けてくれまい。なんかしら求められるはずである。
その時に、少しでも手心を加えていただけるように、仕事を頼まれたらそれを受けようと恵一は思っている。
まあ、その仕事に対してはきっちりと報酬を支払うのだから、手心もへったくれもあるかと言われる可能性も高いのだが。
「ここでけっこうです。ありがとうございました」
男爵邸の裏側で、ミレーナとは別れた。一応、彼女が邸内に入るまで見届けてから、家路につく。
薄暗い、夜の幕が下り始めていた。




