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発作

 夜になって、エリスは帰ってきた。

 相変わらずの不機嫌ぶりであり、すぐに部屋に引っ込んでしまった。

 夕食を終えて、明日辺りギルドに行ってみるか、とか他愛も無い話をしていたところであったが、エリスが帰ってきて部屋に行くまでの間、重苦しい沈黙が満ちた。

「……ふぅ、なんかエリス、おかしいな」

 ある意味、ケイト以上に他人に気を遣わないアンがそういうのだから相当なものだ。

「まあ、まず間違いなくなんかあったんだろうけど、ケーイチ、なんか知らん?」

 周囲の空気を変えてしまうようなエリスの不機嫌ぶりに、空気をあんまり気にしないケイトといえどやや困っているようで、恵一に心当たりを尋ねてきた。

 で、心当たりは……ある。

「へえ、返済の日ねえ」

 恵一は、ケイトに、今日獄舎に行く途中まで行をともにした時にエリスから聞いた話をした。

 それまで返済を延ばしまくっていた債権をエリスが買い取り、本日はその最初の返済日で、一応先方は返済日までに大金が入るアテがあるのだと言っていたという。

「あー、そらアテが駄目になったんだ。間違いねえわ」

「うん」

 ケイトに言われるまでもなく、まあ、そんぐらいしか理由が思い付かない。

「まあ、とにかく下手に刺激せん方がいいな。八つ当たりで何されるかわかんねえ」

「うーん」

 どんなに憤っていても八つ当たりをするような人間だとは恵一は思っていないのだが、下手な刺激をするべきではないというのには同意である。

 そうとなったら、ここでくだらん話して笑ったりするのも刺激になるだろうか、とか思ってしまい、またまた重苦しい沈黙がやってきた。

「なんでそんな機嫌悪いのか聞いてくるぞ」

 それに耐えかねたのか、アンが立ち上がった。

「うおあ! 止めろよ、下手に刺激すんなっつったろうが」

 慌ててケイトが制止する。

「うー」

 アンは少し不満そうだ。

 ケイトに比べると、アンは呪術を恐れておらず、従ってエリスに対しても隔意が無い。

 エリスの方も、アンには少々甘い気がする。

 甘いというか、ごく普通に年少者への接し方をしていると言うべきか。

 同年の上に債務者と債権者という関係のケイトと、年上である恵一に対するよりは柔らかい感じなのは確かである。

「まあまあ、静かに静かに」

 ケイトはちらちらとエリスの部屋の方を気にしつつ言った。

 で、言った直後に、音がした。何かが割れるような音。

 音の出所は、エリスの部屋だ。

 恵一はケイトと顔を見合わせて、どうしたものかと思案する。

 刺激すべきでないというものの、明らかに割れる音がしたのだ。

「……よし、様子見に行こう」

「あ、ああ、それがいいね」

「これでなんかあって、シカトされたって恨まれてもたまったもんじゃねえぞ」

 そういう恨み方はしないと思うのだが、一々反論してもしょうがない。恵一とケイトは恐る恐るエリスの部屋へと行ってみた。

 部屋を覗くと、まず目に飛び込んできたのはうつ伏せになったエリスである。

 静かに、足音を立てぬようにしていたために、エリスの息が荒くなっているのがすぐにわかった。

 声をかけるのを躊躇っていると、エリスの手が泳いで空を掴んだ。

 その手の先には、破片が幾つも散乱していて、その中に例の乾燥させた葉っぱが混ざっていた。

 大体のことはわかった。

 あの葉っぱを入れた壺を落として割ってしまったのだろう。

 そして、発作で苦しんでいる。

「エリス」

 手助けするなとは言われていたが、これはちょっと放っておけないだろう。前方に壺を落としてしまったようで、エリスの手と葉っぱの距離が遠い。

 恵一は、壺の破片の間から、葉っぱだけを丁寧に取り上げた。

「おい、これ空だぞ」

 部屋の隅に幾つか置いてあった壺を物色していたケイトが、中に何も入っていない壺を見つけてきた。

「おっ……ほら、エリス」

 葉っぱを壺に入れて、それをエリスに差し出す。

 エリスは、心配そうな顔をした恵一と、その後ろでしょうがないなあまったくもう、と言わんばかりの顔をしたケイトを一瞥すると、ほんの一瞬だけ床に目を落としてから、震える手を壺の中に入れた。

 中で火の魔術を使ったらしく、すぐに壺から独特の臭いをした煙が立ち昇る。

 エリスは、その上に顔を乗せるようにして煙を吸い込んだ。

 彼女が、落ち着きを取り戻すのに、この前よりもだいぶ時間がかかった。

「……ふぅ」

 エリスが壺から顔を離した時には、中の葉っぱが燃え尽きたようで煙はもう出なくなっていた。

「……世話になりましたね」

「ああ、まあ」

 そんなの困った時はお互い様だと言おうとした恵一の目の前に、エリスの手が突き出された。

「へ?」

「はい」

 エリスの手には、幾許かのゴールドが輝いていた。

「手です。手」

「へ?」

 わけもわからぬうちに、促されるままに恵一が掌を出すと、その上にエリスの手からゴールドが移ってきた。

「え? え? なに、これ?」

 戸惑いながらも、50ゴールドぐらいあるな、と勘定する。すぐに100倍する癖がついている恵一は、約五千円か、と思った。

「世話になったお礼です。取っておいてください」

「え? 世話って、今の?」

 部屋に駆け付けて、葉っぱを拾い、新しい壺に入れて差し出した程度のことを「世話になった」といい、50ゴールドという手間には見合わぬ大金を渡すエリスの感覚に理解がいまいち及ばない。

「この前も言いましたが、私は発作が起きた時の手助けを基本好みません……ですが、今はいつもよりも発作が強く、正直、助かりました」

「う、うん」

 だったら、素直にありがとうって言ってくれりゃそれでいいのになあ、とどうしても釈然としないものを感じる。

「まあまあ、エリスは人に借りを作りたくないんだろう。気持ちは少しわかるぜ」

 意外にも、ケイトがエリスに同調した。

 いや、お前、おれに借り作りまくってるじゃないかよ、あっ、借りだと思ってねえな。

「まあまあ、貰っとけ貰っとけ」

 ケイトが懐に入れていいというのでありがたく貰っておくことにする。

 受け取り拒否しても、エリスのことだから絶対に押し通してくるに決まっている。

「ふむ、ではこれで」

 貸し借り無しです、とでも言うように、エリスは頷いた。

 そこまでかしこまらんでもなあ赤の他人じゃないんだから、と恵一は思うが要するにエリスの方は恵一を赤の他人だと思っているのだろう。

 まあ、むしろ恵一が少し一緒に住んだだけで仲間意識を持っている方がおかしくて、本来の関係から言えば、エリスの方が正しいのかもしれない。

「いつもより発作が強かったって、大丈夫なの?」

 たまたまなのか、なんらかの理由によるものなのか。

 もし、体の状態が一線を超えてしまって、以前よりも強い発作が当たり前に起こるようではこれから色々と大変ではないか。

 その辺のところの懸念を伝えつつ尋ねると、エリスは少し悩んだようだが、ため息をつきながら言った。

「そういうことではないのでご心配なく……今回のは、私の感情の問題です」

「感情?」

「発作は、感情が激すると、起こりやすく、またその苦しさも増します」

 激する……とは、つまり激昂したりすることだろう。

「あ、そうか、エリス凄い不機嫌だったから」

 それが、発作を、それもいつもよりも強い発作を誘発してしまったのだ。

「はい」

 と、答えつつ、なんだか今はとても落ち着いているように見える。

「強い発作が出てしまいましたからね、落ち着くように努めているのです。実際ははらわた煮えくり返っています」

「そ、そうなんだ」

 とてもそうは見えんのだが、腹ん中はグツグツいってるらしい。しかし、そこでそうやって感情をコントロールできるのは大したものだ。

「慣れてますからね」

 エリスの無感情っぷりは完全に地というわけでもなさそうである。発作発生のメカニズムに従って発作を起こしにくいようにするには、そもそも感情を大きく動かさぬように日頃から心がけるのがいいのだろう。

「そもそも、なんでそんな腹立ててんのよ」

 ケイトが口を挟んできた。

 純粋な好奇心からであろうが、恵一も半分はエリスが心配でもう半分はやはり好奇心によってだが、そのことは気になっている。

「……まあ、特にあなた方たちには関係の無い話です」

 予想はしていたが、素っ気無く拒絶された。

 だが、エリスはまた少し悩んだ様子で、考え込んだ。

「エリス?」

「もしかしたら、その件に関して、アマモトさんに頼み事をするかもしれません。そうなったら事情はお話します」

「え? あ、ああ」

「もちろんお礼はいたしますので」

「え、そんなの」

 いいよ、と言おうとして、言えばむしろエリスは気分を害するのではないかと思い飲み込んだ。

「さて、それでは私はもう休みます。……さすがに疲れました」

 そう言って、エリスが寝袋に潜り込んだので、恵一たちは台所に戻った。

「頼み事かあ、なんだろうね」

「まあ、大体想像つくだろ」

「いや、まあ、そうだけどさ」

 おそらくは、借金を返さない不届き者をなんとかせい、という類の話であろう。まさか殺ってしまえ、とは言わんだろう一応金貸しなのだから。

 でも、ちょっと痛めつけたれや、程度のことはあるかもしれない。エリスはいざとなったら契約書にある罰則――おそらくはお決まりの後遺症等の残らぬ激痛を与えることができるが、それに呪術を使う必要があれば、できるだけそれをせずに済ます方法を選ぶことはありうる。

「まあ、ちゃちゃっとやっちゃえばいいよ。エリスのこったから金はしっかりくれると思うぜ」

 ケイトの言う通り、エリスは決してケチではない。

 金貸しなどを生業にしている人間に対して、正直程度の差こそあれ守銭奴みたいな連中ばかりなのだろうと恵一は思い込んでいたのだが、エリスはそれとは違う。

 金よりも、契約――約束を遵守することを重んじているところが強い。

「それよりも、ケーイチは明後日のことは大丈夫か。証言するんだろ」

「え、ああ、うん」

「ちゃんと、どう話すかとか考えて覚えておいた方がいいぞ」

「う、うん、そうだね」

「ケーイチの話し方一つでリーンの刑が重くなったりするかもしれないからな」

「そ、そうですね」

 あんましプレッシャーかけないで欲しい、とは思うものの、確かに言う通りではある。

 とりあえず、あったことをそのまま話し、それゆえに彼女たちはそれほど悪質な盗賊ではないという結論に持っていくべきだろう。

 しかし、いざ思い出そうとしても細部が不安である。

 うん、こうだったなと思っても、あれ? ホントにそうだっけ? と一度思うと不安になってしまう。

 堂々と証言して、それに矛盾があったりしてそれを突っ込まれたら、証言内容の信憑性も揺らいでしまう。

 リーンのために一肌脱いでやるか、とある意味、自分が被告席に座っているわけではないので、まあ見たままを話せばそれで十分に彼女の有利に働くだろうと軽く考えていたところが無いとはいえぬ。

 その証拠に、ケイトからリーンの刑が軽くなるとは限らず、むしろその逆に作用してしまう可能性を指摘された程度で激しく動揺しているのである。

「大丈夫か? ケーイチ」

「う、うーん」

 見かねてケイトが言うのに、はっきりと応えられずに腕組みなどしてみる。

「記憶に自信が無いなら一緒にいた人間に確認してみりゃいいじゃんか」

「一緒に……あ、そっか」

 そうだ。あの場所には恵一とリーンとグールト以外にももう一人の人間がいたのだ。

「よし、じゃ、早速明日にでも行ってみるよ」

「おう」

 そんなわけで、明日と明後日はギルドでの仕事探しはお休みである。

 翌日、いざ訪ねる段となって、いったいどのぐらいの時間に行けばよいだろうかと思ったのは一瞬で、どうせ仕事してやしねえだろうから基本いつでも家にいるだろうと乗り込むと、案の定在宅していた。

「お、兄ちゃん、どうした」

 と、明らかに頬が痩せこけているゲオルグは、それでも一応笑顔で出迎えてくれた。

「実は……」

「ああ! いいとこに来てくれた!」

「へ?」

 用件を切り出そうとしたら、凄い勢いで詰め寄ってくるのに若干引きつつ、なんか向こうの用の方が切迫感がアリアリなので先に聞いてみることにする。

「アレの機嫌は……どうよ?」

 で、まあ、聞いてみれば御機嫌伺いである。アレとは誰か、とは問うまでもあるまい。

 絶対に仕事をしたくない周期に入っているというゲオルグは、指一本たりとも労働に使うつもりはなく、結果、あまりにも当然のことながら収入が無い。

 金は1ゴールド残らずエリスに徴収されている。

 日々の食費などその都度稼げ、お前はそうでもせんと働かんだろうという方針であり、それでも働かないゲオルグはやせ細っているというわけだ。

 一応、エリスはどうしても腹が減ってしょうがないというのならば来れば少し金を渡してやるとは言っているのだが、そんなことしようもんなら確実に僅かなゴールドと引き換えに罵詈雑言の嵐を叩きつけるつもりである。

 全て、こいつはそんぐらいせんと働かん、という立派な理由があり、まあ、恵一も確かにそうだろうな、とゲオルグに接してつくづく思う。

 だが、それでも、多少は機嫌がよければ浴びせられる言葉の刃も幾分かは鈍くなろうという期待を持っての問いであろう。

 だが、もちろん嘘は言えないので、言うしかない。

「いや、すっげえ機嫌悪いです」

 と――。

「悪いか」

 恵一が、思いっきり感情を込めて言ったので、それが十二分に伝わったゲオルグが絶望的に呟く。

「そうか、そんなに悪いか」

 それでも、少し悩んでいるようである。よほど腹が減っているらしい。

「あのー、ところで、おれの用件があるんですが」

「ん? あ、そうかそうか」

 そもそも、わざわざ訪ねてきたのは恵一である。

「なんだ」

「実は、明日リーンの裁判がありまして、証言することになってるんです」

「リーン?」

「ほら、盗賊の」

「ああ、はいはいはいはい、あの盗賊のお頭な」

 それで、その証言に関して自分の記憶では怪しいところがあり、一緒にその場にいたゲオルグの記憶と突き合わせてその精度を高めたいので手伝って欲しい、ということを頼むと、

「おう、そんぐらいなら」

 快く快諾……しそうなことを言ったのだが途中で言葉が止まってしまった。

 無言で、じーっと見てくる。

「な、なんすか?」

「うん、まあな、おれもホントはこんな程度のことはさ、いいよって二つ返事で受けてやりたいのさ」

「はあ……」

「腹が減って腹が減ってしょうがねえのよ」

 あまり鋭敏ではない恵一だが、この状況でそう言われたら、まあ言わんとするところは察することができる。

「ああ、飯奢りますよ。食いながら話しましょうよ」

「おお、おおう、うん! おう!」

 感極まって歓喜の声を上げるゲオルグに連れられて、よく行くという飯屋に行った。

「あんたか……払えるのか?」

 店の戸をくぐった途端に店主からのこの言葉である。

「こいつが払う」

 満面の笑みで言う。忸怩たる思いとか芥子粒ほどにも感じちゃいねえ。

「はい、おれが払います」

 と、恵一は言ったのだが、店主の表情が全く変わらない。

 あれ?

「いくら持ってんだ」

 あれ?

「ちょっと見せてみな」

 あ、これ、まさか、そういうことか。

「えっと、これ」

 辿たどしく持参の袋に入っていたゴールドを手の上に乗せて見せる。

「ふうん、いいだろ、座んな」

 50ゴールドである。ぱっと見で二人分の代金ぐらいはあるだろうというのはわかるぐらいの量だ。

「さぁて、なにを喰うかな」

 ゲオルグは、もうなにも特別なことは起きなかったという顔で喜々としてメニューを見ている。

 しかし、恵一は金を見せるまで座らせても貰えないという扱いを、客商売をしている人間から受けたことがなかったので、実はけっこうショックであった。

 ああ、信用されてないってこういうことなんだ、と嫌でも理解した。

「……十ゴールドまでならいいよな」

 探るようにゲオルグが聞いてくる。

 いや、まあ、信用されてないのはこいつであって自分ではないのだと気を取り直した恵一は、いいですよと頷く。

 肉を焼いたものやら固いパンやら、それをひたすための具があんまし入ってないスープやら、そこそここちらの暮らしが長くなってきた恵一には既にお馴染みの食べ物がテーブルに並ぶ。

 食べながら話を……とは言ったものの、空腹感から運ばれたものに片っ端から食らいついているゲオルグに話を聞ける雰囲気ではないので、しょうがなく恵一もとりあえずは食べることに専念した。

 どうやらここは安くてたらふく食える、味は、安くてたらふく食えるんだから気にすんな、という類の店らしく、十ゴールドだとかなりの量だ。

 これ、全部食べるのかな空腹だったみたいだからいけるのかな、と五ゴールドぐらいのものを食べながら見ていると、ある程度食ったところで、持参の壺に残りを入れて封をした。

 なんで壺なんて持ってるのかと思っていたのだが、そういうわけのようだ。

 思わず、せこいなあ、とか思ってしまったがゲオルグが特別というわけではなく、他にも壺などの入れ物持参の客が多い。

 どうやらこの店ではとりあえず多めに頼んで、食い切れなかった分は持ち帰るのが当たり前のようだ。

 まあ、ゲオルグの場合は食い切れなかったというよりも、最初から計算しているのだろうが。

「あのう、それで話を……」

「あ? ああ、うん、えっと、なんだっけ」

 食うもの食ったら速やかに目的を忘却しているので、改めて説明する。

「ああ、証言な。うん、じゃあさ、お前の記憶にあることを最初っから順に話してみろ。違うとこあったら言うから」

「はい」

 恵一は、記憶にあることを最初から話す。馬車での囮作戦をしていてリーンたちが現れて、彼女たちを捕縛するまで。

 ゲオルグからは細かい修正と、全体に対する提案等があった。

 結論として、リーンたちが殺すことは全く考えておらず、強奪するにしても一部だけで後は残していこうとしていたこと、さらには「とても残虐な盗賊団」に包囲されたと見るや恵一たちに逃走を促して自分たちはこれに立ち向かったこと、この二点を強調するのがよいだろうということになった。

「ふう、ありがとうございます。だいぶ整理できました」

 漠然とあったことを順に話すだけだった当初の案から、強調すべきところや詳しく説明すべきところ、そんなに重要じゃないから聞かれない限りは言わなくていいだろうというところなどなど、加えるべきは加え、削るべきは削り、なかなかよい感じに仕上がった。

 あとは、恵一自身が本番でちゃんと述べられるかどうかだ。

 正直、裁判で証言などという経験は元いた世界でも遠い世界の出来事であり、緊張するがやるしかない。

「あー、ところでさ」

「はい」

「結局、あいつなんでそんな機嫌悪いの?」

 ゲオルグは、やはり嫌で嫌でしょうがないけど空腹が極まればエリスんとこに金貰いに行かざるを得ないので、そこがどうしても気になるらしい。

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