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処刑見物

なんとかかんとか再開です

「ほおぅ」

 と感嘆した顔がよほどの馬鹿面だったらしい。

「なんて顔してんだよ」

 ケイトに笑われた。

 盗賊討伐から帰ってきて三日後、公開処刑をやるというので見物に来たところである。

 で、なんでまたケイトに笑われるような馬鹿面をさらしているかというと――

「まさか、こんな立派な競技場でやるなんてなあ」

 てっきり、その辺の広場にでも断頭台を組んでバッサリやるのかと思っていたら、それはもう大きな競技場が処刑場なのである。

 以前リアッセと決闘した時の競技場とは比べ物にならぬ、いくら栄えているとはいえ地方都市と王都の差が一目でわかる。

「入ってるなあ」

 その規模に見合うだけの人数が客席を埋めている。

「下手な剣闘士興行より入ってるな」

 父の死後は借金返済でそれどころではなかったが、存命中はケイトはよく剣闘士興行などに連れてきてもらっていたそうだ。

「まあ、入場料取ってねえってのもあるけどさ、やっぱりこう極悪盗賊団の処刑じゃけんね、みんなその断末魔を見てやろうと正義の心でやってくるわけよ」

「そうなんだ」

 そういう正義の心とかいう大層なものと、物売りの掛け声はそぐわないような気がしてしまうのだが、まあ人が集まれば物を売りたい人間もやってくるということか。

「おい、食え」

 ずい、と横合いから串に刺して焼いた肉が差し出される。

「あ、ああ、ありがとう」

 その串を受け取る。

「ケイトも、食え」

「おう、あんがとよ」

 肉の串を持って来たのはアンである。物売りを呼び止めて三本購入したようだ。

 彼女は、ケイトに治療代四百を払った残りの六百ゴールドを貰って、しばらくはどうしたものか途方にくれていた。

「買い物すりゃいいんだ、買い物を」

 と、ケイトに教えられて、それまでは恵一やケイトが買ったものを受け取るだけだったのを、はじめて自分で物を買ってみて、徐々に貨幣経済に順応しつつある。

 だが、節約とかそういうことは頭に無いようで、このように無造作に恵一たちにも振る舞っているので、六百ゴールドもすぐ無くなりそうである。

「もっとお金は大切にした方がいいですよ」

 と、エリスなどは注意しているのだが、あんまり効果は無い。

 で、そのエリスだが、この場にはいない。処刑の見物には興味が無いとのことでお留守番である。

「お、はじまんぞ!」

 ケイトが嬉々とした様子で言い、それに呼応するように歓声が上がり始める。みんな正義の心がうずいているようだ。

 まず最初に引き出されてきたのは、おそらく下っ端連中である。彼らは順々にクマやらなにやらの猛獣と戦わされた。

 はっきり言ってレベル差がある、というかレベル差があるようなのをあてがっているために勝負らしい勝負にならずに、牙と爪に引き裂かれ、生きたまま食われ悲鳴を上げ、観客たちの正義の心を満足させた。

「ざまぁねえな、ガハハ」

 と、ケイトは物売りから買った酒をやりながら楽しそうだ。

「おら、根性見せろ!」

「逃げてばっかじゃしょうがねえだろ! もっとも戦っても勝てんがな!」

「女子供は殺せてもクマは怖えか!」

 正義の心が、観客たちを叫ばせている。

 いや、さすがに恵一とて、ただの娯楽じゃねえか、とは思っているのだが、一応みんな一通り楽しむと、

「いやぁ、やっぱり悪いことはするもんじゃねえな!」

 とか、なんか道徳的なことをおっしゃるので、そんなこと言ったら怒られそうなので黙っていた。

「おーい、ケーイチぃ!」

 突然、後ろから呼ばれて、恵一は振り向いた。

 もっとも、聞き覚えのある声で、誰かはわかっていた。

 ガシャンガシャンと音を立てながらやってくるのは、リーンだ。

 音を立てているのは手枷足枷である。

「んしょ、んしょ」

 足枷のせいで、小刻みにしか歩を進められないようなのだが、器用にちょこちょことやってくる。

 そんなものを装着しているので目立つこと甚だしく、注目が集まり、それに名前を呼ばれている恵一にまで視線が集中する。

 囚われの身であることを示すそれを見られても、なんとも思っていないようで、リーンは笑顔で、ちょこちょこ歩いてくる。

 後ろには、見張りらしき男がいて、その男が握った縄が、リーンの腰に巻き付いている。

「ケーイチたちも来てたのね」

「そういうリーンも、来れたんだね」

「うん」

 ジェークたちが公開処刑されるのを見物したい、というリーンの願いはガルスの方からそのようにしてくれと嘆願はしてくれるということになっていた。

 それもあってか、手枷足枷腰ひも付きで来ることができたようだ。

「おっ、そろそろね」

 物々しい器具が、設えられている。

 どう見ても拷問危惧である。

 そこへ引き出されてきたのは、ジェークであった。さすがに憔悴しきっている。

「もっと近くで見たい」

 と、ちょこちょこ数歩進んで面倒臭くなったリーンは、恵一に運べと言ってきた。

「えー」

 見張りの男に、それは駄目だと言われるのを期待していたのだが、男は別になんも言わない。

 しょうがないので苦労しながら手枷足枷つきのリーンを抱き上げる。

 言われるがままに、観客席の階段を下りて最前列の方へと行った。

「あ、すいません。通してください。はい」

 手枷足枷の少女を抱き抱えた男と、それから伸びた縄をつかんでいる男という異様な風体の三人組なので、けっこうみんな道を開いてくれた。

「おっほう」

 丁度、ジェークが盗賊団の頭であったことと、その極悪非道ぶりが述べられているところであった。

 ただの娯楽にしか見えない残虐ショーだが、一応建前としてはとても悪いことをした奴を成敗する正義のアレである。

 おごそかに、罪を並べ立てる間、その犠牲者のことを想い、静かにしていたのは最初のうちだけで、そのうちにジェークへの罵倒が上がり始める。

 ジェークは、途中一回だけ何かを言おうとした。

 おそらくは、まったく身に覚えのないようなことまで自分のせいにされているのに抗議しようとしたのだろうが、じゃっかしいとばかりにぶん殴られていた。

 この辺り、極悪指定されてしまったものの悲しさ、なんでもかんでもおっかぶされてしまっているところはある。

 その影でまんまと逃れている悪人もいるのだろうが、これまではジェークが正にそれで危うしと見るやさっさと逃げていたのだ。

 それが、今回とうとう年貢の納め時というわけだ。

 拷問、いやさ処刑は手慣れた様子の執行人によってそれ自体は淡々とした感じで行われた。

 最初から大盛り上がりの観衆たちの声に、最初は耐えていたものの、ついに激痛によって閉じていた口を開かされたジェークの悲鳴が加わった。

「ジェーク! ジェーク! ほら、私よ私!」

 リーンは、なんとかジェークに自分を認識させたいのだが、それどころではないので気付いてもらえない。

 だが、やがてぐったりとしたジェークの様子を確認した執行人がなにやら手を振って合図らしきものを送ると、それに応じて一人の男がやってきた。

 ジェークに向けて手をかざす。

 男は治癒士だ。瀕死の状態となったジェークに治癒魔法を施しているのである。なんでそんなことするかというと罪を許して助けて上げるためでないことは言うまでもあるまい。

 ジェークは、三回死刑の判決を受けている。

 どういうことかというと、まあそのまんまの意味である。

 おどれのような極悪人は一回死んだぐらいじゃ足りんから、死の寸前の状態で二回蘇生させてから殺してやる――つまり、三回殺されるに等しい痛苦を受けるのだ。

「あれが、あともう二回かあ」

 極悪人なのは重々承知しているが、やはりその被害を自分が受けたわけではないので同情心がわくのが押さえられない。

「あ、やった!」

 リーンが嬉しそうに叫んだ。

「今、目が合ったわ!」

 意識も朦朧としているであろうし、距離もある。

 本当に目が合ったとしても、果たしてそれをリーンだと認識しているかどうかは怪しいものだが、リーンはそうだと思い込んでいる。

「ふふふ、私にあんな姿を見物されて、さぞや悔しいでしょうね」

 だがまあ、リーンがすこぶる満足そうにしているので、そういう疑問を提示するのは止めて思い込んだまんまにさせておく方がよいだろう。

「おう、飽きたぞ!」

「もっと違うことやれ!」

 その後にもう一回治療されて、さていよいよファイナルラウンドとなったところで、似たようなことの繰り返しに飽きてきた見物人たちが執行人たちに文句をつける。

 だが、正義の怒りの名を借りたただの酔っ払いの要望であり、建前としてはこれは公的な処刑である。

 執行人たちは、まあよくあることとでも言った顔で、淡々と自分の仕事をこなしていった。

「おらぁ、もっかい! もっかい治療しなさいよ!」

 死刑の回数を増やせ、というリーンの要望ももちろん無視である。

 やがて、遂にジェークは事切れた。

 ブーイングが上がるが、執行人たちは別に観客を満足させることで報酬を得ているわけではないので、やはり淡々と死体や器具を片付け始める。

 観客たちも、これは決して娯楽ではない、という建前は承知しているのでブーイングもほどほどにして帰り支度をする。

「ぬるいわねえ。あんなもん罪の半分も償ってないわよ」

 そういう建前を全く承知していないリーンだけが文句をつけていたが、ジェークが死んだ以上、もうどうしようもないことは彼女もわかっている。

 そう、それで、もう終わったのだ、ということはわかっているのだ。

「……これで」

 だから、一頻り文句をつけた後に、突如として小さく呟くと、大きく溜め息をついた。

「また、そんな顔する……」

 思わず言った恵一の言葉に、リーンは微かに笑っていた。

 これでもう未練は無いと思っていた。

 やるべきことをやり遂げ、見るべきものを見届け、すっきりとした気分だ。不快ではなく、その逆でリーン自身はとてもよい気分なのだが、そういう自分のことを恵一が嫌っており、そういうことを言ったり、そういう態度をしてしまったりすると彼はとても困ってしまうのだということは、わかっていた。

「おい、獄舎に帰るぞ」

 腰から伸びた縄を持っていた男が言った。恵一が抱きあげていくのを咎めなかったり、随分と好き勝手させてくれたが、処刑が終わったら速やかに帰ってこいという命令を受けていて、それだけは絶対に違えるわけにはいかないのだろう。

「そんじゃね、ケーイチ」

「ああ……って、そういえば裁判はいつあるの?」

「え? 知らないけど、裁判があるの?」

「いや、そりゃあるでしょ」

 裁判で証言する気の恵一としては、日取りを確認しておきたかったのだが被告席に座るべき人物がこの体たらくである。

 だが、実を言うと、裁判があると聞いた時、無いと思ってたのにあるのかと驚いたのが事実である。

 なにしろ、盗賊団討伐の際に捕縛した盗賊を、討伐隊のリーダーという立場とはいえ、そういった公的資格など持っていなさそうなガルスの一存で処遇を決め、その場で斬り殺しているのだ。

 てっきり裁判などというまどろっこしいものは存在自体しないものだと思い込んでいたのに、これがよく聞くとあるらしいのだ。

 しかし、無論のこと恵一が知っているそれとはだいぶ違っている。

 裁判自体は弁護人もおり、資格を有する裁判官が数人いてそれが合議で判決を決めるもので、それだけ聞くと恵一がイメージするものとそれほどの乖離は無い。

 大きな違いとしては、それが誰にも与えられた権利ではないということだ。

 それこそ、あまりにも凶悪なことをした犯人には弁護人がつかない。引き受け手がいないのだ。

 金目当てにやろうとする者もいないことはないのだが、裁判が終わった後にそれを不服に思った被害者遺族や傍聴人に、あいつが悪人を弁護などするからだと恨まれて報復されることもあるため、どうしても名乗りをあげる者は少ない。

 弁護人がつかなかったら、そのまま裁判である。国選弁護人などというものは概念自体が存在しない。

 今回のジェーク一味などは、もう最初から死刑にするのは決まっていて、それをどの程度にするかを有資格者で話し合っただけであり、裁判らしい裁判は開かれていなかったりする。

 弁護人なども、どうせこんな奴ら弁護する奴はいねえ、という感じで考慮もされなかった。

 それに、ジェークたちに弁護人を雇おうという意思があったとしても、盗賊である彼らが持っていたものは全て盗品と見なされて没収されており、雇おうにも金が無い。

 裁判自体は公平な条件で開かれ、その裁判の過程において量刑が決する――という恵一のイメージからは程遠い。

 なんかもう、やったことによってそもそも裁判を受けられるのかどうかが決められてしまうことが珍しくないので、やはり恵一の思う「裁判」とはかなり違うシロモノと言わざるを得ない。

 だが、まあ、正直恵一としては全ての人間が公平な裁判を受ける権利があるのだ、というようなことはなんとなく「そういうもの」であると聞かされてきたために、そういうものなんだなと思っていただけのところがあり、はっきり言ってその辺に拘りは無い。

 とにかく、リーンがどうもそれほど悪質ではなかったようだということと、なにより討伐隊に多大な協力をして成果を上げたということがものを言ってかなりよい条件で裁判を受けられるようだ、ということを喜んでいた。

「いつだっけ? 明日?」

 リーンは、とうとう縄を持っている男に尋ねた。

「あー? 明後日じゃなかったか? いや、明日か?」

 こいつも甚だ頼りない。だが、別にリーン専属の獄卒というわけではあるまいし、本人が知らんのが悪いのだ。

「いや、その辺はっきりしてもらわんと」

 恵一は、わかんねえもんはわかんねえんだからしょうがねえ、とばかりに大して気にもしていないリーンに食い下がった。

 裁判のアレやコレにしろ、その他のことにしろ、恵一もそこそここっちの世界での暮らしが長いために、ある程度は順応ができている。

 この場合、恵一が心配しているのは、恵一が知らないうちに裁判が開かれ――おそらく死刑等はありえないだろうが、恵一の証言が無かったために重刑になってしまった、という事態である。

 元いた世界の感覚では、ギルドの人間に伝えているのだから、裁判所からこの日のこの時間に来い、という連絡が来るんだろう、とか思うのだが、この世界はそこまで親切ではない。

「まあ、うちの誰かが知ってるよ。その日は移動させなきゃいけないんだから」

「そうよ、誰かが知ってるわよ」

「はあ……」

 一度、獄舎に行って確認する必要がある。

「おい、帰るぞ」

「うん」

 また、ちょこちょこ歩いてリーンは獄に帰って行った。

 どうも危機感が無いのだが、死刑でも別に構わないという意識がどこかにあり、裁判なんてどうでもいいと思っているのでどうしようもない。

 リーンと別れて、ケイトたちと合流し、一度家に戻った。

「いやぁ、最後の方はちょっと飽きちゃったな」

 家では、ケイトが公開処刑の感想を述べ、あんまり興味の無いエリスが聞き流し、構わずケイトが話を続けていた。

「エリスの毒を使えばよかったのに」

「あれは、時間がかかり過ぎます。今回の場合は不向きでしょう」

 結局、エリスが作った(本人が言うには失敗作)毒の効果は、延々苦しみ続け、そのまま長時間をかけて死に至るという使いどころの難しいものであった。

 公開は公開でも、広場に拘束してほったらかしておくような場合は手間も要らずにいいのだが、今回のように競技場を使用して時間に制限があるような場合には適していない。

「さて、それでは私は出掛けます」

 エリスが席を立ったので、恵一もリーンの裁判の日を確認するために獄舎に行くことにした。

「はあ、ご苦労なことですね」

 道々、その話をすると、エリスは少し呆れたようであったが、それでも彼女にしては穏やかな顔をしていた。

「アマモトさん……」

「ん?」

「ケイトさんのことといい、今回のリーンさんのことといい……あなたは少し親切過ぎるようです」

「は? え? そ、そうかな」

「別にあなたがやりたくてやっているのなら止めませんが……そこまでやるなら、やり通してくださいね」

「やり、通す?」

「ええ、リーンさんはともかく、ケイトさんはあなたのことを頼りにしています。頼らせるだけ頼らせて、手を引くようなことはしないでください」

「え、そ、そりゃあ」

 そんなつもりは毛頭ない……と言いたいところだが、改めてそう言われると最悪の事態が発生したことなんぞを想像してしまい、はっきり断言できない。

「わかっているのならばよいのです」

 語尾を濁した感じの恵一であったが、エリスはそれを無視するかのように言った。

 なんだか、そうすることで恵一の行動を制限しているかのようにも見える。

 エリスにそのような意図はないのかもしれないし、恵一は彼女がそんなに悪い人間だとも思っていないのだが、なにしろ冷然としているのでついついそういうふうに解釈してしまうのだ。

「そういえば、エリスはなんの用なの? また債権探し?」

「いえ……今はもう新規の債権はやっていません」

「てことは……」

「今日は集金です」

 要するに、金貸しの業務で最も重要である取り立てである。

「返済を延ばしに延ばしていたのを私が買い取りました。再契約する時に、次の返済日までに大金が入ると言っていましたが……どうなっているやら」

 返済延期を重ねていた人間の「大金が入る」という話であるから、正直信用度は低いと言うべきであろう。

「エリス、おれもついてこうか?」

 つい、恵一がそう言ってしまったのも、大金が入るという話が最初から嘘っぱちか、アテ自体は本当だったとしても、結局上手くいかずに返済できないのではないかと思ったからだ。

 返済できないとあらば、基本的に遅延など認めぬエリスは実力行使に出る可能性が高いので、その時に揉めるに違いなく、自分でもいれば何かの役に立つのではないかと思ってのことだ。

「いえ、一人で大丈夫です」

「そう?」

「ええ、まあそんなに大きな額ではないので、人を使ったらほとんど儲けがありません」

「へ? いや、別に金なんか取らないよ」

 と、言うとエリスは一瞬だけ迷ったふうだったが、溜め息をつき、諭すように言った。

「あなたは親切過ぎます」

 それはさっきも言われたことだ、と思ったものの、さっきとは明らかに声のトーンも表情も重苦しい。

「そんなことでは、いいように使われて痛い目見るだけですよ」

「まあ、確かにケイトには使われてるけど」

「ケイトさんなどどうということはありません。あれは、なんだかんだで根本的には善良です」

 恵一も、そう思っていたのであるが、エリスがケイトのことをそういうふうに捉えていたというのは少し意外であった。

「もっと悪辣な人間に、騙されて使われるのを心配しているのです」

「は、はあ」

「タダ働きしたり、あなたが損したりで済めばいいですが、いいことをしているつもりで悪事に荷担していた、なんてこともありえない話じゃないんですよ」

 ちょっと、そう言われると、こっちの世界に来てレベル10に認定される強さや例の謎の力などを手に入れたことにやや舞い上がり、元いた世界ではやりたくてもできなかった「善行」というか、なにか人助けをしたいという気持ちがあるのを自覚せざるを得ない。

 言われてみれば、あまり深くも考えずにこれは人助けだと軽々しく力を振るってしまいかねないような危うさが自分にあるような気がする。

「ありがとう、エリス」

「礼には及びません。……私はそういう、いいことしてるつもりで浅はかに力を行使するような人間が嫌いなんです。あなたは、そんな人にならないでください」

「うん、気をつけるよ」

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