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生きる目的

「お頭!」

 その声に、リーンは敏感に反応した。

「グールト!」

 駆け寄ってくる忠実な男へ、明るい声を発した。

「聞きました。よくぞ……」

 グールトは、よくぞやりましたという意味のことを言いたいのだろうが、後が言葉にならず嗚咽になった。

「やったわよ」

 父の仇をとった喜びを最も強く共有できるのは、グールトしかいない。それがわかっているリーンは今こそ歓喜を爆発させるように笑っていた。

 突然父が死に、そのままその場から逃走していつか仇をと念じつつも、そのような機会は訪れそうもなく、そのような機会を引き寄せるような力もなく、いつかは、いつかはと思いながらさすらっていた。

 その艱難辛苦の思い出も、共有できるのは彼だけなのだ。

「……ありがとう」

 不意に、リーンは言った。グールトに向けて言ったのはわかるが、その礼は恵一たちにも向いていた。

「なんだかんだで、あんたらに協力してなかったら父さんの仇は討てなかったわ」

 拾った剣を鞘におさめる。

 それが、一種の儀式であったかのように、その瞬間、リーンが身にまとっていた悲壮な気は消えた。

「さ、好きにしなさい」

 両手を前に出して、すすんで縛につく姿勢を見せる。

「あー、まあ、すぐに縛ろうとかそういう気はない」

 その様子から、もうこいつは逃げないだろうと判断したのか、ガルスはそう言って手を振った。

「ケーイチ、あんたには特に世話になったわね」

 歳相応の少女の笑顔で、リーンは恵一に言った。

「ああ、いやぁ、それほどでは……」

 初めて会ったかのような新鮮な気持ちになり、ちょっとドキッとしてしまった恵一は視線を外しつつ返す。

「謙遜しないでいいわよ」

 明るく透き通った声に、言いようのない不安に駆られて外した視線をリーンに注ぐ。

 なぜ、不安になるのかが恵一にはよくわからなかった。

 リーンの声は、聞いていて心地よくなるような温かさがあり、不安などという負の感情を掻き立てるものは無いはずだった。

 それでも、やはり恵一の目を向けさせたのは、不安と呼ぶしかないものだった。

「ふふ」

 笑っているリーン。

 印象がこれまでと随分と違う。

 考えて考えて、ようやくその不安感の輪郭らしきものを掴む。

 彼女と出会ってから、常に感じ続けたものが無いのだ。

 それは、純粋なエネルギーとでも言えばよいのか――とにかく、明確な目的を持ち、そのためならば命をも惜しまぬという境地に達し、それゆえにそれまでは絶対に生きてやるという生きる力と意志そのもの。

 そういった熱い、熱量を持ったものを彼女には感じ続けていた。

 それが、無い。

 やることはやったから、もう何も生きてやることはなく、それゆえに生きることへの執着が極度に薄くなっているような。

 リーンは、ジェークと対峙した時、よくて相討ちと思っていた。

 事態がどう都合よく転んでも、本来の実力差から言えば、よくて相討ちに持ち込めれば僥倖だという認識は、彼女にしっかりとあった。

 目的のためならばと捨てた命を拾った。

 拾ってしまったそれを、持て余しているようなところが、今のリーンにはあった。

 こんなものを拾ってしまったけど、別にこれを使ってやるべきことはもう無いのに、どうしようか――

「リーン!」

 恵一は、唐突に、と言ってもいいような大きな声でリーンを呼んだ。

「ん? なによ?」

 その唐突さに面食らったらしいリーンが苦笑する。

「リーン、死んだら駄目だよ」

「は?」

 恵一としては、それなりに整合性のある言葉を絞り出したつもりなのだが、リーンにはそれは突拍子も無いものに聞こえたようだ。

「えっと……今のリーンはさ、戦いの前とは、別の意味で生きることをどうでもいいと思ってる感じがする」

「んー、そうかもね」

 リーンは、言われて初めて自分のその感情の状態に気付いた。

「でもさ、リーンは立派にお父さんの仇をとったんだ。もう、あとは好きに生きればいいんだ」

「でも、もう目的が無いのよね」

 それに、心底困っているらしいリーンは、呆けたように言った。

「目的なんて、なんでもいいんだよ。美味いもの食べたいとか」

「ああ、ジェークが公開処刑されるの見物しないと死ねないわね」

 ふっ、と笑ったリーンの顔に、微かに以前の活力が戻ったように見えた。

「そうだよ。それ見ないと駄目だよ!」

 勢い込んで、恵一は言った。

「で、その後は――」

「後は?」

 と、言ったものの、後のことなんかなんにも思い付かない。

「後は……目的を探すために生きたっていいじゃないか」

 そんな上手いこと言えないので、苦し紛れに言った。そもそも当の恵一からして生きる目的など無く、生きてたらなんかいいことあるかもしれないからとりあえず生きとこうという程度の理由で生きているのだから仕方ない。

 でも、大概の人間はそうだろうとも思う。リーンのようにこれだけはという明確な一つの目的を持って生きている人間の方が少ないだろう。

「ああ、うん」

 リーンはにこやかに頷いた。

「あんたが、なんでか知らないけど私に生きてて欲しいってのはようくわかったわ」

 明るく、透き通った――でも、そのまま朝靄のように消えてしまいそうな儚さは無く、地に足のついた生命力を感じさせる声で、リーンは言った。

「まあ、とりあえず生きてみるわよ」

 笑って、リーンは捕虜に案内させて砦の中を探索するという声を聞き付けて、そっちに行ってしまった。

 目先のことでいいから、何かに興味を持って、それに向けて躍動するように動いてくれるのはいいことだと思う。

「ケーイチ、ありがとう」

 その姿を見送っていると、横合いからぼそりと声がした。

「え? ああ、グールトさん」

 声の主は、グールトだった。

 それ以上は何も言わずに、頭を下げ、リーンの後についていった。

 推測するしかないが、おそらく、グールトもリーンの目的達成後の虚脱したような状態は心配しており、それを解消してくれた恵一に、感謝しているのだろう。

 あまり上手いこと言えず、適当に言っていたらそれがたまたまよい結果になったという自覚のある恵一としては、そう感謝されても面映ゆい。

「うぉーい、エリスぅ」

 少し遠くから、エリスを呼ぶ声がする。この声は、ケイトだ。

 見やれば、少し離れた所にいるケイトがこっちを見て手招きをしている。

「なんでしょう?」

 呟きながらエリスがそちらへ向かうのに、なんなのか気になったので恵一も同行した。

 行けば、ケイトとアンだけでなく他にも何人かいて、それが輪になっている。

 自然、その輪の中心に視線は行き、そしてそこに倒れてのた打ち回っている一人の男を見た。

 息が荒く、口から出るのはまともな声になりきれなかったかすれた音である。

 一目見て、それが相当に苦しんでいるのだということがわかる。

「治療ですか?」

 エリスがそう言ったことにより、恵一もエリスが呼ばれたわけがわかった。作戦はこれ以上無いぐらいに上手く行ったが、怪我人が皆無というわけではない。

 この男は、特に手酷くやられてしまい、それで治癒魔法の使えるエリスが呼ばれたのであろう。

 と、それぐらいしか思いつかないのでそうだと決め付けていたが、そうではなかった。

「こいつ、味方じゃなくって盗賊だよ」

「あ、そうなんだ」

 なにしろ四十人もいるので、全員の顔を覚えているわけではない。

 では、なにゆえにエリスが呼ばれたのだろうか。できるだけ生け捕りにしたいとはガルスも言っていたが、こうまで苦しんでいるということは傷は深いはずで、わざわざ治さないでこのまま死なせてやった方がいいのではないか。

「いや、こいつさ、上手いこと逃げそうになったから、あたしが撃ったんだよ」

 言われて見れば、背中に矢が刺さっている。

「ああ、アレですか」

 と、エリスは得心がいったというふうに頷いた。

「そうだよ、アレだよ」

 と、ケイトも頷く。

「アレって、ああ、アレか」

 こんなにこの男が苦しんでいるのは、アレことエリスが調合した毒の効果に違いない。

「きちんと効いてるみたいですね」

「効いてるっていうか……苦しんでるばっかりで全然死なないぞ、こいつ」

「ふむ、そうですか」

「最初はすげえ苦しんで殺してくれ、って言ってたんだけど、そのうちまともに喋れなくなってさ」

 いや、そんなら楽にしてやろうよ、と言いたいとこだが言ったら、じゃお前がやれと言われそうなので黙っている。

「さすがエリスだ。えげつない毒作ったな」

「いえ……失敗です。そんな遅効性の毒のつもりではありませんでした。むしろそんなに痛みを感じずにあっさりと死ねるはずなのです」

「あー、そろそろ楽にしてあげたら」

 いい加減に耐えられなくなって、お前がやれと振られるのを覚悟して言ってみた。

「駄目です。効果を見届けるまでは」

 それって、このままほったらかすってことだよね。

「まあ、余ったのは返すよ」

 ケイトが、毒の入った小瓶をエリスに渡す。

「ふむ、拷問以外に使い道なさそうですね」

 拷問という言葉に、びくりと反応した男がいた。

「……あ」

 エリスに見つめられて、男は視線を明後日の方向に飛ばしている。

「ああ、ゲオルグさん」

 その男――ゲオルグは、名前を呼ばれて、嫌々というのがはっきりとわかる態度で、エリスを見た。

「借金返済、頑張りましょうね」

「お、おう」

 冷汗を流しながらぎこちなく返事をするゲオルグのことを気の毒には思うけど、関わりたくないので、恵一は視線を逸らす。

「うー、一人も倒せなかったぞ」

 逸らした先では、アンが悔しそうに地団駄を踏んでいた。

「まあまあ、お前は偵察で大活躍してたじゃんか」

 ケイトがアンを慰めているのを横目で見つつ、なんか当たり前のように二人が仲良くしているのに今更ながら気付いて、よかったと思った。

 もともと、アンの境遇に純粋に同情した恵一は彼女を連れていこうとして、しかし家主のケイトになんと頼んだものかと思案しているうちに、当のケイトが治癒士に払った金の恩を返してもらうと連れてくることに決めたのだ。

 そういう経緯から、ケイトはアンを収奪の対象……とまではさすがにいかないが、それに準じるような扱いをするのではないかと思わないこともなかったのだが、いざ一緒に暮らすようになったら、ごくごく自然に友人のような家族のような関係になっている。

 少なくとも、恵一に対してよりはよほど扱いが穏当なのは間違いない。

 ざわざわと、声が聞こえてきたので、また何かあったのかと好奇心につられて行ってみたら、見になんか来るんじゃなかったと思わされるものが待っていた。

 砦から、下を向いた女が何人も出てきていた。

 鈍い恵一だが、さすがにわかる。

 盗賊団に捕らえられて慰み者にされていた女たちだ。

 そっとしておいた方がいいだろう、と恵一は思ったし他のみんなも思ったらしく、皆、目を逸らしていた。

 だが、そんな中、果敢にというかなんというか、女たちに話しかける者がいた。

「いやぁ、酷い目にあったわねえ」

 リーンだ。もう無神経がそのまま人間の形になったみたいな感じである。

「ほら、あそこに何人か生きてるのいるから」

 と、今や縛られて座らされている盗賊どもを指差す。

「殺っちゃいなさいよ。ほら、短剣貸してあげる」

 どうも、無神経なつもりは毛頭なく、それどころか全て善意からのことのようだ。

 女たちは俯いたまま、反応しない。もう精神が摩耗しきっているのだろう。

 リーンは、それがどうも納得できないらしく、頻りに復讐をすすめている。

「まあまあ、リーン」

 見かねて恵一が引き離す。

「なによ、せっかくの機会なのに」

 やはり釈然としない様子で口を尖らせる。リーンにとって、この状況であれば大喜びで短剣を手にして、それで縛られた盗賊どもをめった刺しにして復讐を遂げるというのがあるべき行動であって、せっかく立場が逆転したというのにうなだれているばかりの女たちのことが信じられないらしい。

 この辺り、リーンらしい、精神が摩耗しきった人間に対する推察が行き届かない無闇な活力が、彼女を無神経にしていた。

 対応自体はどうかと思うので引き離したが、リーンに活力があること自体は、嬉しく思った。

「おう、エリス、あの毒もっかい貸してくれよ。あいつらに使ってやろうぜ」

 まあ、ケイトなんかも非常に義憤に駆られたらしく、苦しむだけ苦しんでなかなか死なない毒を使おうとしている。

「まあ、待て」

 と、それらの喧騒を制したのはガルスだ。

「こいつらは、連れ帰って、然るべき裁きを受ける。あとはそちらに任せよう」

 実のところ、ガルスとしては公開処刑の素材というべき捕虜が、思っていたよりも多く獲れたのに内心喜んでおり、それをこの場で殺されて数を減らされてはたまらんと思っている。

「あの、ガルスさん」

「ん? どした兄ちゃん」

「あの人たちは、どうなるんですか?」

 あの人たち、というのは解放された女たちのことだ。

「さあ、家族がいたらそこに戻るんじゃないか」

 だが、家族がいない――さらわれる際に殺されてしまったという者も多いだろう。

 その場合は、どうなるのか。

「あー、まあ、色々だろう」

 そのガルスの口ぶりから、まあ予想していたことではあるが、なんらかの支援のようなものはありそうにない。

 だが、そこで自分が、というにはちょっと人数的にも手に余りすぎる。

「おう、ケーイチ」

 ケイトが背中を叩いてくる。

「まーた自分がなんかしなきゃいけないと思ってんな」

 的確に内心を言い当てられてしまい、恵一は僅かに動揺する。

「ケーイチのいいとこだと思うけど、キリねえぞ、そんなもん」

「ああ」

 言われんでもわかってはいるつもりなのだが、こうしてはっきり言われるまでは割り切れんのが事実なので、ケイトみたいにはっきり言ってくれる存在はけっこう貴重だ。

「よし、撤収するぞ」

 もう仕事は終わったという感覚はみなが有していたのだが、ガルスが改めてそう言うことで、終わったのだという実感が強くなる。

 王都へと帰還し、報酬が支払われた。

 恵一は当初の二千ゴールドに特別ボーナスとしてプラス千ゴールドを貰った。その辺りの裁量がある程度はリーダーであるガルスに任されているのだ。

 で、その裁量で、アンも千ゴールド貰った。本来はギルド未登録者が勝手に参加した扱いで無報酬のはずだったのだから破格の報酬と言ってよい。

 むろん偵察による功績を評価されたからであるが、運もよかった。

 そもそも、最初の荷馬車を装った囮作戦が上手くいっていれば偵察の出番などはほとんどなかったはずで、森の中にあるアジトを攻めるという方針になったために獣人のアンが偵察で活躍できたのだ。

「千ゴールド貰ったぞ」

 アンはそれを全部ケイトに渡そうとしたのだが、ケイトは治癒士に払った四百だけ受け取って残りはアンに返した。

「好きなもん買え」

「借金あるのにいいのか?」

「借金はケーイチが返すから大丈夫だよ。な」

「う、うん、そうだね」

 で、揉めたのがリーンだ。

 お縄を受けて収監されること自体にはまったく逆らわなかったのだが、父の形見の剣を没収されるのに強硬に反発した。

 いかにリーンが父の形見だと主張しても、その父が盗賊だったのだから、そもそも盗品じゃないのか、という話である。

 リーンは物心ついた時には父はそれを持っていたし、長年愛用していると言っていたから断じて父の物であると主張した。

 盗品ではない、とは言わないのが、盗み自体を罪悪視していない彼女らしい。

 とりあえず、収監者に武器を持たせるわけにはいかないので一時預かるということでなんとか引き剥がした。

 リーンは、収監が終われば返してもらえるものと思い込んでいるが、持ち主が現れれば当然そちらに行くことになるだろう。

 とはいうものの、少なくとも十年以上はリーンの父の手にあったことは間違いないようで、例え盗品だったとしても十年前の盗まれた剣の持ち主が今更見つかるかどうかは疑問である。

 結局、持ち主不明ということでリーンに返還されることになるだろうと聞いて恵一はほっとした。

 で、ほっとしつつ、そもそもリーンはいったいどんぐらいの刑を喰うのか、ということである。

「わからん」

 と、ガルスは言うのだが、今回の極悪盗賊団の討伐に際して彼女らの協力無くしてはこれほど完璧に任務を遂行することはできなかったと申請することは請け合ってくれた。

 恵一も、最初に襲われた時のリーンたちの様子から、彼女らはそれほど悪質ではない盗賊であると証言する意志のあることをギルドの人間に伝えておいた。

 その時は、リーンもグールトも恵一たちを討伐隊だとはまったく知らなかったのであるから、その振る舞いは減刑などを目論んでのものではなく、普段通りのそれであったという証明になろう。

「ふー、おつかれー」

 家の台所の椅子に座って、ケイトが言った。

 報酬も得たので、少し豪勢に色々買い込んできてあり、それらが食卓に並んでいる。

「今回のことで三千ゴールドです。利子の分は稼いだわけですが、もっと仕事をして元金を減らすようにしましょう」

 と、ご馳走には見向きもせずに例のスライムをやりながらエリスが言う。

「おう、言われんでも、やったるぜ、ケーイチが」

 ケイトもやる気満々である。

 こういうのを聞くと、恵一としてはやはりエリスの金貸しとしてのスタンスが気になったりするわけである。

 彼女は決して甘いわけではない。それどころか時に厳しいほどでもあるのに、基本的に元金を返済する、すなわち借金の完済をすすめるのだ。

 純粋にビジネスとして考えると、元金の返済はさせないで同じ額の利子を延々と払い続けさせる方が彼女は得である。

 ケイトはなんだかんだで、借金を返そうとするつもりはあるので、その辺りはエリスは好意的に思っているのかもしれない。

 その逆のゲオルグなんぞは頭からまるで信用しておらず、今回の特別ボーナス込みの報酬も問答無用で全額徴収していた。

 さすがに、それではその日の食い物にも事欠くのではないかと恵一は暗に止めたのだが聞く耳持たず、日々の食い扶持は日々稼げばよい、どうしてもというのならば自分とこに来ればいくらかは渡してやる、とのことであった。

 もう、ゲオルグが完全にエリスの顔も見たくないというのを知った上での処置である。

 これもエリスに言わせると、アレはこのぐらい追い込んでやらないと働かないのだ、ということになり、まあ実際その通りだったりする。

「利子がつかないという破格の好条件になっているのですから、コツコツと返せばいいのです」

 とエリスは言っており、これもその通りである。

 飲んで食って、その場で寝たケイトとアンを部屋のベッドに運んで、自分も自室に戻って寝転がり、天井を見ながら恵一は考えた。

 一つ仕事を終えてこうやって寝転がって考えるのが、恒例のようになっている。

 で、今回の件で得た情報などを考えると……有益なものはほぼ無かった。

 リーンをはじめ知己は得るところが多かったと思うが、元の世界に戻ることに繋がるもの、魔王やらなんやらのことについては収穫無しである。

「はあ……おれ、ホントに帰れるのかな」

 思っていても、口にはしなかった言葉が出た。

 知己が増えるにつれて、こっちに骨を埋めても……という気持ちもあくまでも諦めを伴って生まれてはいるのだが、でも、やはり帰れるものなら帰りたい。

 さすがに、王都とはいえ、ここまで情報が集まらないということは、限界かもしれない。

 ここで得られないということは、魔王やらなにやらの情報を得るには、この王国内にいては駄目なのかもしれない。

 ケイトの借金を返し終えたら、遠くへ旅立つべきか。

「いや、まだだ」

 この国の権力者であるメリナ王女へ話を聞けていない。

 彼女との繋がりはミレーナだけであるが、ミレーナ自身が相当気に入られているから彼女に同行する形でならば会うことはそこまで難しくはないだろう。

「よし」

 次に会った時に頼むことにしよう。

また一回章を改めます。

ついてはストックが1話しかないので、来週一回休みしてその間になんとか書き溜めたいと思います。


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