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ゲオルグの話

 剣を振る。

 上段から斬り下げ、そこからの変化。

「うん……」

 剣を振っている恵一を、ゲオルグが見ている。

「どうです?」

 その背後にいるエリスが言うと、ゲオルグは頷いた。

「うん、基礎はけっこうちゃんとしてるね」

 イリアの手ほどきと、ハウト男爵家の面々による特訓と、なによりリアッセとの実戦によって、恵一はそれなりに使えるようにはなっている。

「で、肝心のあなたはどうなんです? やれますか? やれないって言ってもやってもらいますけど」

「なんとかなる、と思う」

 甚だ頼りなさそうにゲオルグは言った。レベル8といっても、それに認定されたのは十年も前の話でここ数年は働いていない……つまり戦闘などもやっていないということだ。

 彼は今年で二十九歳……ということは、十九歳でレベル8だったということであり、かなり有望な若者だったはず。

 それが、この体たらくである。契約違反の激痛にことごとく耐え抜いた辺りに、若き頃の素質の片鱗が見えるが、そんな見せ方したってしょうがあるまい。

 木の棒を持って寸止め前提で打ち合ってみたところ、恵一のレベルがやや高いというのを差っ引いても動きが鈍い。

 だが、鈍り切っているのかと思うと、時々びっくりするような流麗な動作でこちらの攻撃をいなして反撃をしてくることもある。

「どうです? あの人」

 エリスに聞かれたので、そのことをそのまま述べる。

「そうですか……まあ、さすがにただのボンクラではありませんね」

 十九歳でレベル8だったのだから、やはりそれなりに修練を積んだのだろう。恵一のようになんかの拍子にレベル10になったのとはわけが違う。

 また少し打ち合ってから休憩した時に、その辺のことを聞いてみた。どう考えてもなんらかの理由で転落したとしか思えぬので、彼にとっては決して愉快な話ではないのだろうが、好奇心が勝った。

「ああ、うん」

 ゲオルグは、思っていたよりも淡々と話し始めた。

 幼い頃より将来有望と言われて、剣術などに励んできた。

 十五歳の時にレベル5になり、前から好きだった一つ上の少女に告白した。レベル5になったら告白しよう、と前から決めていた。

 初恋だった。村一番の美少女で、明るく優しくみんなに好かれていた。

 結果は見事に玉砕であった。

 他に好きな人がいて、その人から先に告白をされていたのだという。

 その相手というのが、自分が前から見下していた男だった。彼よりも三つぐらい年上だったがレベルは3止まりで、もう戦士として強くなることは諦めていて稼業を継いで靴職人になる、と言っていた。

 なんでまた、あんな男がいいのだとゲオルグは疑問であった。

 靴職人としての腕は悪くなく、このままいけば上手く稼業を継げるだろうとも言われていたが、それだけのことだ。

 靴職人の嫁になって、どうするのだ。

 自分と一緒になった方がよいに決まっているのに、とゲオルグは信じて疑わなかった。

 もっとレベルが上がれば、王都に行き、ギルドに登録して仕事をする。

 稼業と言っても、親方と二人か三人ぐらいの職人を抱えているだけの靴屋なのだ。

 それよりもたくさん稼げるだろうし、ギルドの仕事で名を挙げていけば、ゆくゆくは貴族や果ては王族に召し抱えられることだって夢ではない。

 そこで、どうしても諦められないゲオルグは、もっとレベルを上げようと思った。

 腕っ節にものを言わせて、相手の男を恫喝しなかったのはよいことだが、それはそれでズレていたと言わざるを得ない。

 別に相手の男が自分よりレベルが高いわけではないのだ。

 冷静に考えれば、その少女が男を選ぶのにレベルという強さを全く基準にしていないということは容易にわかるであろうに、それがわからなかった。

 それは、ゲオルグ自身が、男というか人間の価値を「レベル」で測っていたということであった。

 レベル5なら無理だけど、もっと上ならば彼女は振り向いてくれる、と。

 そこから鍛錬にはいっそう身が入ったものとなり、十九歳にはレベル8である。

 ほぼ、一年に1レベル上がったということで、周囲の人々も、もともと有望視していたがこれは期待以上だと褒めそやした。

 この周囲の反応も、ゲオルグの勘違いの一助となっていた。

 レベルが上がれば、みんな褒めてくれるのだ。

 幼い頃よりそうだったため、いつのまにか人間の価値をレベルに置くようになってしまった。

 レベル8なら、とゲオルグは勇んで突撃して、まあ既におわかりであろうが見事に玉砕した。

 王都に行こう――。

 その思いが、ゲオルグを救った。

 王都に行って、ギルドで働き名を挙げよう。

 そうすれば、もっと自分に相応しい女が現れる。

 アレも可愛くてよい子だったが、なぁに、あくまでもド辺鄙な村の華だ。

 王都に行けば、もっと美しい女がたくさんいるはず。

 あいつらを見返してやろう、とそれだけを胸にゲオルグは王都へとやってきた。

 ギルドに登録し――もちろんその際もその歳で、と驚かれたものだ――仕事を幾つかこなして、大金とは言えぬまでもそこそこのゴールドを得て余裕のある生活を送ることができた。

 しかし、ド辺鄙な故郷と違い、王都は誘惑の多い所だ。

 金さえ払えば遊ぶ場所に不自由は無い。

 十九歳という若さである程度まとまった金を持っているところへ、それである。抵抗できるものではない。

 いや、むしろゲオルグは、今でもあの娯楽の少ない村で暮らしている、自分をフッた女とその相手の靴屋にあてつけるような気持ちで大いに遊んだ。

 どうだ。こんな面白い場所はあの村にはあるまい。

 毎日のように食べている食事も、あの村では一年に数回祭りなどの催しがあった時にだけありつけるような御馳走だ。

 勝った、と思った。

 そんなことで、確かに勝利の喜びに浸っていたのだ。

 若くして高レベルで、金を持っているゲオルグはモテた。

 それもまた勝利の喜びを与えてくれるものであった。

 あの少女のことを、自分は世界一の美少女だと思っていたが、まったくそんなことはなかった。

 王都には、彼女よりも美しい女はいくらでもいた。

 そんな女たちに騒がれ、好かれ、数人から自分を選んでと言い寄られる。

 男だったら絶対に悪い気分ではない状況である。ましてや、ゲオルグにとってはそれは暗い過去を払拭してくれるものなのだ。

 ゲオルグは、瞬く間に女に溺れていった。

 修練はおろそかになった。

 それでも、元々が高レベルなのである。仕事はなんとかこなせたので問題は無かった。

 ――その女と出会ったのは、ゲオルグが王都へ来て二年。二十一歳の時だった。

 いつものように酒場に繰り出して、一緒に酒を飲み、流れ次第ではその後寝床も一緒にする相手を探していたが、その日に限って知っている女がいない。

 まあ、そういう日だって珍しくは無い。

 若いので精力は有り余っているが、毎日のように励んでいるわけではない。

 こういう日もあるさ、とその日は酒と食事を楽しもうと決め込んでいると、前の席に一人の女が座った。

 美しい女だった。

 そのつもりはなかったが、あちらからモーションをかけられれば俄然その気になる。なにしろ色々と有り余っているのだから。

 さて、どのようにアプローチをしてくるのか、お手並み拝見というような態度でゲオルグは微笑んでそれを待った。

 しかし、女は俯いていて何も言わない。

 はてさて、他にも席は空いているのに、わざわざ男一人の席へ腰を下ろしたからには相手はもうそのつもりに違いないと思っていたのに、どういうことか。

 モジモジとしている女を、改めて観察する。

 まず、美人である。

 だが、よく見ると化粧が薄く、このような盛り場で男を見繕うような女性には見えなかった。

「あの……」

 意を決したように顔を上げて、言った。

「うん、なにかな」

 相手がそんななので、ゲオルグは余裕のある紳士的な態度で対応した。

「その……」

 また、俯いてしまう。

 その挙措動作は、ここ二年間、遊びと割り切った女たちを相手にしていたゲオルグには却って新鮮であった。

「ああ、おれは酒飲んでるから、話したくなったら話せばいい」

 ゲオルグのその言葉にハッとした女は、再び決然と顔を上げて、言った。

「私を、買ってください」

「はあ?」

 この場合の「買う」というのは、まあ、そういうことだろう。

 しかし、このゲオルグ、買うほど不自由していない。むしろ女の方が金を払ってでも――と、まではさすがにいかぬが。

「ええと……」

 女は思いつめているのが一目瞭然の顔をしており、それを無下に断るのも気が引けて、ゲオルグは言葉を探しながら言った。

「あの、二百……いえ、百ゴールドでいいんです」

 ゲオルグの反応をよろしからぬと見たのか、ガンガン値下げしてくる。いや、自分は不自由していないので買うつもりなどないが、これだけの美人だ。百は安過ぎだ。

「あー、いったいどういうことなんだい? わけを話してみな」

 その態度から、どう見ても常習的にやっている――すなわちプロではないと見て、話を聞くことにした。

 わけは、それほど入り組んだものではない。

 幼い弟妹がいるが両親が寝込んでしまって収入が無い。

 借金をしたが、返せるアテも無い。

 借金取りに、あんたならきっと稼げるよ、と、暗にそれをしろと言われ、考えれば考えるほどそれしかないと思った。

 そして、数日前に、それをした。

 「そういうところ」と聞いた道に立ち、かといって自分から声などかけられずにいると通りがかった男があちらから声をかけてきた。

 あれこれと聞かれて、このようなことをするのは初めてであり、そもそも男女の経験自体が無いと言うと、その男は喜んでそれなら高く買おうと申し出た。

 流されるままに着いていき、まあ、そういうことをした。

 言った通りに、男は相当の額を払ってくれたのだが、行為自体は初めてゆえの痛さを除いても、とても気持ちのよいものではなく、むしろ凄まじい嫌悪感を伴うものであった。

「ああー、そりゃ、悪いのに当たったねえ」

 ゲオルグは気の毒そうに口を挟んだ。

「初めてが好きなのいるんだよな。おれが女にしてやった、っていうのがたまらないんだろうな。まあ、大概そういうのに限って下手クソなんだ」

 そんなのに当たって痛い思いばかりして、どうも男性不信になっているようだ。

 だが、それでもまたそういうことに及ぼうとしている。その時の貰った金はそこそこだったが、生活費と借金の返済であっという間に無くなったという。

 それで、相手を探して道を歩き、ふらっとこの酒場に入ってきた。

 男一人でいる客を物色して、その中で優しそうな人に買って貰おうと思ったのだ。

「で、おれがお眼鏡にかなったの?」

「はい……」

 話しかけようとして途中で止めるという、普通ならば何か言いたいならさっさと言わんかいという反応をされてもおかしくないのに、話したくなったら話せというゲオルグに彼女は優しさを見たらしい。

 まあ、基本的には常に女性には優しくしようと心掛けているので、それはそれで悪い気分ではないが――。

「うーん」

 金を払ってする、というのはまた少し別の話である。

 しかし、女はもう貴方に買って貰わないとどうしたらいいのかわからない、とでもいうような儚げな表情でじっと見ている。

 買わんでも、おれと一夜をともにしたい女はいくらでもいる。

 だが、この女はおれが買ってやらんとしょうがないのではないか。

 幸い、仕事をこなしたばかりで懐は暖かかった。

 半ば恵んでやるようなつもりで、女を買った。

 女に同情したのならば、金だけくれてやればいいのではないか、という話ではあるが、そこはそれ若いのである。

 相手が美人なのも手伝って、どうせやれるもんならやりたいというのが正直なところである。

 それと、ある程度は本気で女が気に入ってもいた。

 既に述べたように、最近接することのなかったタイプであり、新鮮味があった。

 そのまま、酒場で一緒に飯を食い、ゲオルグが借りている部屋に移動し、行為を済ませた。

 その間に、話したり観察していてふと思ったのは、あの子に似ている、ということだった。

 あの子、というのはゲオルグが二回もフラれた故郷の少女のことだ。

 そう思ってから、いやいや別にどこも似ていないではないかと頭を振って打ち消した。

 強いて言えば、王都に来てから相手にしていた色々とスレた連中と違って、純朴そうなところが似ていると言えば似ているだろうか。

 それとても、真実はそうではなく、もう既に二人の男に我が身を売った女であり、純朴などとはとんでもない、と思わないこともないのだが、理由のあることで、その理由をゲオルグは知っている。

 やはり、彼女は純朴なのだ。

 そうではいられない境遇によって、そうではなくなってしまったように見えるが、未だ彼女の中身はそうなのだ。

 女は、ずっと抱きついている。精一杯優しくしてやったところ、絶頂を幾度か迎えていた。

 この女、完全におれに惚れたな、とか思うほどに自惚れてはいないが、最悪の初体験で芽生えかけた男性不信と性行為への嫌悪感を払拭することはできたのではないか、と自負していた。

 百ゴールドでいいというのを、さすがに安過ぎると二百払って、女を家の近くまで送ってやった。

 一週間ぐらい経った。

 その間、一つ仕事をして、いつもの女たちから二人ばかり誘って遊んだりもしていたけれど、時々、彼女のことを思い出すことがあった。

 こっちが惚れてしまったか、と思った。

 おそらくは、彼女のことを、あの子――初恋の少女と似ている、と一瞬でも思ってしまったことが、彼女への執着を生んでいた。

 王都で暮らし、ギルドで仕事をし、村では滅多に食えないものを食らい、何人もの、あの子よりも美人な女たちと付き合い、それらの享楽が過去を押し流して、過去は過去以外の何物でもなくなった、とゲオルグは信じていた。

 だが、やはり心のどこかにあの子への未練、或いは価値のある人間であるはずの自分があっさりとフラれてしまったことへの、いわば納得し難さは流されることなく残っていたのだ。

 仕事の報酬も入り、金はあった。

 あの時の酒場へ行ってみようか、と思った。

 その時である――。

 彼女が、部屋のドアを叩いたのだ。

 いったい、どうしたのかと問うゲオルグに、女は何も言わずに俯いていた。

 しかし、どうしたもこうしたも、二人の関係は一つしかない。買う者と売る者だ。

 それならば、用も一つだろう。もともと、確実に会えるアテはないが酒場へ行ってみようか、などと考えていたのだ。ちょうど金もある。

 ゲオルグは、もう完全にその気になって彼女を招き入れようとしたのだが、女が思ってもみなかった言葉を投げかけてきた。

「あの、タダでもいいですから!」

 いったい何を言い出すのか。百ゴールドどころではない。自分を安売りし過ぎ、というかタダなんだから売ってすらいない。

「ああ、まあ、とりあえず中に入って、そして話をしよう」

 全く想定していなかった言動に、多少面食らってしまったゲオルグは、却って落ち着いてしまった。

 話を聞いてみると、こういうことであった。

 あれから一週間、何度か自分を売った。できるだけ優しそうな人を選んだつもりだったのだが、男は見た目ではわからんというか、そういう状況になったらどいつもこいつも豹変するというか。

 もう、痛いし恥ずかしいし気持ち悪いしで耐えられない。

 それでも耐えねばならぬと必死に耐えていたが、とうとうこれ以上は本当に耐えられないというところまで精神が追い詰められた。

 その時、いや、耐え難い責めを耐えている間、常に思い出していたのはゲオルグのことだった。

 もう一度、あの人に抱かれたい。

 その一念だけに突き動かされて、訪ねてきたのだという。

「……そうか」

 他の男とするのは苦痛でしかなかった。幸せを感じたのは、あなたとした時だけだったとまで言われて、悪い気はしない……というか、もうはっきり言って凄くいい気分であった。

「お願いします。お金なんか要りませんから」

 縋り付いて涙で潤んだ目で見つめてくる。

 元々が、同情もし、好意も持っていた女である。そのようなことをされては、応えぬわけにはいかない。

 前回以上に、女は感じていたし、乱れた。

 終わった後に、またしがみつくように抱きついている女を見ていると、愛しさがこみ上げてきた。

「お前、借金ってどのぐらいあるんだ。利子は?」

 何気なく、あまり意識もせずに言っていた。

 女は、きょとんとした表情をしていたが、やがてそれを言った。

 ゲオルグの収入で返せない額ではなかった。

「お前、もうこんなこと止めろ。借金ならおれが……」

 そこから先は、引き返せぬ大きな、大き過ぎる一歩であることは自覚していた。だからさすがに言葉に詰まった。

「おれが……返してやる」

 たっぷりと一分は沈黙した後に、遂に言った。言ってしまった。

 女は意味がわかりかねる、というような顔で、その言葉の意味をなんとか理解しようと頭を捻っている様子であった。

「おれが、ずっとお前を買ってやるって言ってんだ」

 そう言ってから、偽悪的であることにすぐに嫌気がさした。そうじゃない。

「お前に惚れた。おれ以外の男に抱かれるのがたまらなく嫌だ」

 ようやくゲオルグの言わんとすることを理解した女は、堤が決壊したように泣き出した。自分も貴方が好きだと泣きじゃくった。

 自分みたいに汚れた女に惚れられても迷惑でしかないと思ったから、とてもそんなこと口にするわけにはいかぬと思っていたと、泣いた。

「馬鹿、お前は汚れてなんかいねえ」

 金で体を売ったから、体が汚れているというのなら、確かにそうかもしれない。

 でも、問題なのは心だ。どんなに体がきれいでも、心がそうじゃなかったらなんの意味も無い。

「お前の心は、きれいなままじゃねえか」

 女は、泣きに泣いた。その体を抱き寄せながら、ゲオルグは妙にすっきりとした気分になっていた。

 早まったことを言ってしまったのではないか、これまでのように毎晩飲みに繰り出したり、色んな女をとっかえひっかえ楽しむなんてことはもうできないぞ。

 そう思う気持ちは、やはりあった。

 それでも、それ以上に、すっきりとしているのだ。爽快感があるのだ。

 心の奥底に、流されずに残っていたもの。

 初恋の少女への未練。

 それが、ふっきれたような気がした。もう、あの子のことは追わない。

 あの子よりも美人で遊び慣れた王都の女たち。全くあの子とは違うタイプの女たちとばかり付き合っていた。

 方向は逆のように見えるが、実のところ、ゲオルグはそうすることであの子を追っていたのだ。

 いや、追うなどという殊勝な態度ではない。

 そうやっていれば――自分より美人で洗練された都会の女たちと浮き名を流す自分を見れば、あの子は自分の価値に気付くのではないか、と。

 そんな、ありえない妄想だ。

 気付くもなにも、あの子は今頃のどかな村で、愛する靴職人の旦那と幸せにやっているはずだ。

 全てが、馬鹿げた妄想だ。

 それに気付き、笑う。

 それが、たまらない爽快感だった。

「おれに、全部任せとけ」

 力強く言って、女を抱き締めた。

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