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悪い奴を倒してゴールドが貰える仕事

 ずっと、さっき見たことについて考えていた。

「ケイトは、どう思う?」

 夕食をとりながら、ケイトに聞いてみた。

「さっきのアレか? まあ、治癒士のおっさんが怒るのはわかるけどよ、すぐに怪我治してくれておまけに安いってんなら、そりゃそっちに頼むだろ」

 そりゃ、そうである。恵一もほぼ同じ考えだ。怒るのはわかるんだけど、しょうがないよなあ、と。

「だけどまあ、あの兄ちゃんも、なんでそんなことしてんだかな」

「それは、まあ、いい人なんだと思うけどさ」

 怪我して治療が長引いて困っている人のところに現れて、その怪我をさっと治して礼は少ししか受け取らない。

 それを見たら、たぶん、いや間違いなく、この人はなんていい人なんだろうと思うだろう。

 だが、今回の件については、その際に客を――つまり収入を横取りされて激昂する治癒士を見ているだけに、それが引っ掛かってしまって、あの青年を掛け値なしの善良な人だと思えないところがある。

「あの人は、どうやって暮らしてるんだろうなあ」

「あ? そんなん知らんけど。まあ、元々金持ちなんじゃねえの」

 そうなると、いわば金持ちが慈善事業でやっているということであろうか。金は持ってるから礼金は心ばかりでいい、というのはそれはそれで納得いく話ではあるが、どうしても引っ掛かるのである。

 しかし、情報が少な過ぎて、判断はできかねる。

 青年のやったことが悪いこととは思えぬが、治癒士への同情もあって善いこととも断定できぬ。

「んなこと真剣に考えてても疲れるだけだぞ。飯食え、飯」

 ケイトのその言葉こそが正しいのかもしれない。所詮、自分は通りがかりに事の一部を見聞きした立場に過ぎないのだ。

 食事してくつろいでいると、ふわっと叩かれた。

「誰か来たぞ」

 アンが尻尾で叩いてきたのだ。

 アンは尻尾だけ、ケイトは指一本たりとも動かす気配が無いので、しょうがないので恵一が出ていく。

「はいはーい、どちらさんですか?」

「ごめんやっしゃ」

 来客は、エリスだった。さっきも持っていたカバンと別に背中に大きなリュックサックを背負っている。

「あれ? どうしたの?」

 さっき、一ヶ月後に利子を貰いに来ると言って別れたばかりだ。なにか言い忘れていたことでもあったのだろうか。

「まあ、上がってよ」

 とにかく、エリスが用事ということはケイトに対してであろうから、中へと誘う。

「ケイト、エリスが来たぞ」

「ああん!?」

 椅子に無理矢理横たわるようにしていたケイトは、叫ぶと同時に起き上がろうとして体勢を崩して倒れた。

「あーあ、もう大丈夫か」

 恵一が起こしてやろうと手を差し伸べても、それが目にも入っていないようで、その視線はエリスへと一直線だ。

「な、なんだよ! 次の利子はずっと先だろ!」

 呪術師なんぞと契約結んじまってこれであたしの人生おしまいだあ、という落ち込みぶりも、エリスと別れてから時間が経つにつれていつものケイトに戻ってきていたのだが、この取り乱しようである。

「利子の話ではありません」

「じゃ、じゃあなんだよ」

「よい話を持ってきました」

「な、なにがよい話だよ! 嘘つくなコラぁ! あたしは騙されないからな!」

「ケイト、とりあえず話聞いてみようよ」

 あまりにもケイトの態度が頑ななので、恵一が宥める。恵一としては、エリスはけっこうしっかりしてるというか、筋の通らんことするような人間にも見えないので、利子の支払いが滞っていない現時点では何かケイトの害になることをするとも思えないのだ。

 ケイトが落ち着いて……はくれないので、とにかく黙らして恵一が話を聞くのをケイトが横で聞いてるみたいになった。

 エリスの用件というのは、部屋を貸してくれということだった。

「どこがいい話だコラ!」

 同じ家に同居するということは、当然ながら毎日嫌でも顔を合わすことであり、ケイトにしてみたらたまったものではない。

「お金は払います」

「ああん? ……いくら?」

 相変わらず態度には敵意があふれているが、金と聞いてケイトは話を聞くつもりになったようだ。

 てっきり、ちゃんと返済のために仕事してんのかとか、無駄遣いしてないだろうなとか、そういうことを監視するために同居しようとしているのであり、家賃の類を出すとは思っていなかったのだ。

「そうですね。とりあえず横になれればいいです。それと台所などを使わせていただければ……それで月に千ゴールド払いましょう」

「千か……つまり、月の利子が三千ゴールドになるってことか」

「そういうことです」

「物置に使ってたような部屋だけど、それでもいいのか?」

「かまいません」

「よし、来い」

 ケイトに促されて、エリスはその部屋を見に行った。入口のすぐ横にある小部屋だ。物置に使っていたのだが、利子を払うために中にあったものをほとんど売ってしまい今はほとんど空になっている。

「ベッドとか無いぞ」

「寝床はこちらでなんとかします」

「よし……それじゃあ」

 と、そこまで言ってケイトは後の言葉を飲み込むように沈黙した。

 こんな使っていない小部屋を貸すだけで月に千ゴールド分も楽になるのだ。エリスの言う「よい話」というのは嘘ではなく、これはとてもよい話なのだと頭ではわかっているのだが、どうしても彼女と一つ屋根の下で同居するというプレッシャーを感じてしまいその一言が言えないようだ。

「ケイト……」

「わかってるよ。……これがいい話だってことは」

 恵一に促すように名を呼ばれて、ケイトは言った。

「よし、それじゃ契約だ」

「はい」

 そして、ケイトとエリスは新たに契約を交わした。

 どっと疲れた様子のケイトであるが、しかし、これで確かに楽になるのだ。

「エリスは、今までどこに住んでたの?」

「ここに来てから一週間程度です。今までは宿屋に逗留していました」

 王都は、初めてらしい。やってきて、同業者を回って投げ売りされている債権を探し、ケイトと、それともう一つの債権を買い取ったので、腰を落ち着けることにしたようだ。

 宿屋に逗留し続けるのはもちろん金がかかるので、部屋を借りようとしたのだがさすがに王都だけあって基本的に家賃が高い。

 そこで思いついたのが、この家だ。恵一たち三人で住むには広く、一部屋ぐらいは空けられそうだ。

 それになんといっても便利なのは、家賃を利子と相殺にすれば、いちいち現金を用意する必要が無いということだ。

「まあ、これからよろしくな、エリス」

「はい」

 ゴールド目当てで部屋は貸すが、よろしくするつもりは一切無いケイトの代わりに、恵一が挨拶しておく。

 筋は通しても情がらみの甘さは無い人物に思えるが、それにしてもなんだかんだで仲良くやっておくことに損は無いだろう。ケイトに全くその気が無いので恵一がやっておくしかない。

 色々やっていたら夜も遅くなっていて、アンなどは既に爆睡中である。

 この時間にベッドなど調達できるわけもなく、寝床をどうするのかと思っていたら、荷物から寝袋のようなものを出してきてそれで寝るつもりのようだ。

「野宿はしょっちゅうですから、慣れています」

 とのことらしい。

 翌朝、昨晩の残り物を食べている横で、エリスは例のスライムみたいなアレをごくごくと飲んでから、また新たにアレを作るために持参の鍋に色々ぶっ込んだのをコトコトやり出した。

 それをじーっと見ていたケイトは、材料を尋ねる。

 エリスが口にした幾つかの野草については恵一も覚えがあった。ギルドで買い取りしているやつだ。

 ケイトとエリスの間でやり取りがあり、エリスの手持ちが少なくなっているいくつかの野草について、持ってきたらギルドよりやや高く買い取ることで話がついた。

「よし、ギルド行って、いいの無かったら野草取りだな」

「うん、いつもの感じだね」

 その、いつもの感じで結局野草取りに落ち着いてしまう、すなわちいい仕事が無いのが最近の常である。ていうか、結局ギルドでやった仕事はクマ退治以外はそればっかりである。

「なあ、ケイト、もっとこう細かい仕事を積み重ねてもいいんじゃないか」

 というか、恵一としてはあんまり危険を伴わない報酬もそれなりな仕事を数多くこなす方がよい。

「エリスもそう思うだろ?」

「まあ、大きな仕事が無いからと言って野草取りばかりやっているのはどうかと思いますよ」

 エリスにしたら、当然そう答える。

 ギルドへと行くと、少し雰囲気が違っていた。

 いつも、仕事の一覧表が貼り出されているところのすぐ横に、人だかりができているのだ。

「おっ、これはアレだぜ。なんか来てんぜ、でけえのが」

 と、ケイトが言うので行ってみると、なるほど特別に仕事の募集要項が貼り出されていた。

「盗賊退治か……おう、極悪指定されてんじゃねえの! これはビッグイベントだぜ」

「極悪指定?」

「要するに、盗賊団のランクだよ」

 盗賊団というからには、それだけで悪さしてるということではあるが、その悪さにもレベルはある。

 極悪、というのはそのランクづけでも最上位であり、子供でも殺したり売り飛ばしたりするようでないと指定はされない。

 対して、子供は見逃したり、或いは取ろうにも大して取れない貧乏人も見逃したり、所持金の半分だけ取ったりという盗賊団もいて、それらの悪ランクは低い。

 この辺り、そういうシステムに盗賊団も対応していると言える。

 いざとっ捕まった時に、ランクが高いとまず間違いなく全員死刑、極悪レベルだと楽には死なさねえという苦痛を伴った刑になる。

 逆に、それほどランクが高くないと死刑を免れることもできる。

 その指定をしているのは国なのだが、国の方でも、そういう「いざという時」のために手加減するようなことを期待して、極悪ランクに対して見せしめの凄惨な刑を下しているところがある。

「つまり、かなり悪い奴らなんだね」

「おう、悪い奴を倒してゴールドも貰える、とてもいい仕事だぞ、こういうのを待ってたんだ」

 なんかもう、受ける気満々なのだが、相手は盗賊団である。

「いや、おれらだけじゃ無理だろ」

 戦力としては、盗賊とまともにぶつかれるのは恵一だけだ。ケイトはクロスボウで少し離れたところから支援し、アンは偵察などには使えるだろうが、戦闘は無理だ。

「あたしらだけじゃないよ。よく読めって」

 言われてよく読んでみると、盗賊団討伐のための募集である。つまり、これを見て応募した者で討伐隊を組むということだ。

「いいんじゃないですか」

 と、言ったのはエリスだ。彼女としては、また野草取りに落ち着きそうになったら誘導するつもりで着いてきたのだろう。

「いや、でも、危なくないか?」

 根本的にビビりの悲しさ、相手が極悪盗賊団と聞けばまずそれが気になる。

「いんや、却って危なくないぜ、こういうのは」

 ケイトが言い、エリスも頷いている。

「どういうこと?」

 どう考えても相手が極悪指定されるような連中ならば、それだけで危ない気がする。

「別に極悪指定されてるからって強いとは限らんぜ」

 言われてみれば確かに、子供を殺すなどは悪行には違いないが、それは強さとは関係が無いことだ。

「それに、こういうものは失敗しないように、ちゃんと勝てるだけの戦力が整わなければ討伐には行きませんから」

「な、なるほど」

 なんか、そう聞くと、自分とケイトだけでやらねばならなかったクマ退治なんかよりはよっぽど安全な仕事に思える。

「よっしゃ、早速応募すんぞ」

 報酬はレベルに応じて要相談であり、恵一は二千ゴールド、ケイトは三百ゴールド、アンはギルド登録していないので報酬無し。

 着いていくつもりはなかったのだが、治癒魔法が使える者が今のところおらず、エリスも参加することになった。こちらは戦闘に加わらず、治療することのみを条件に千ゴールド。

「どうせ報酬貰えないんだから、アンは来なくてもいいぞ」

 と、ケイトは言ったし恵一も同感であった。戦闘に加わらないと言っても危険が全く無いとは言えないのだ。報酬無しなら来ることはない。

「いや、行く」

 アンは、一応これでもクマにやられた怪我を治療する際に、治癒士にケイトが金を払ったのをそれなりに恩に感じている。

「そうか、じゃあケイトと一緒にいな」

 ケイトとて、前線に出て戦うつもりはない。クロスボウで後方支援だ。彼女と一緒にいればそれほど危険はあるまい。

 未だに戦力が揃っておらず、実際の討伐は即日ではない。

 だが、極悪ランクの盗賊団などそうそう放置しておけないために、あと三日以内に必要とされる人数が集まらなければ、国の正規軍から人材を派遣してもらってでも討伐隊を組むとのことであった。

 三日後には討伐が開始される。

 よくよく考えてみれば、突発的ではない戦闘で人間相手の真剣勝負は初めてだ。

 自分の手で人間を殺してしまうという行為には、どうしても漠然とした不安を感じてしまうが、今回の場合、相手が極悪人どもだというのはいいことだ。

 というか、はっきり言ってしまうと、極悪人なら殺っちまってもかまやしねえだろうというのが正直なところである。恵一は、そこまで人の命の平等性を認めていない。清く正しく生きている人間と、その逆の人間では命の重さには差があると自然に思っている。

 戦闘そのものには、それほど不安は無い。

 相手は子供でも殺すような連中だ。殺す気でかかってくるに違いなく、そうなればあの力が発動するだろうから、むしろ下手に殺す気の無い相手よりも楽なぐらいだろう。

 また掘り出し物の債権を探しに行くというエリスと別れて、恵一たちは帰宅した。

 食事を終えた頃にエリスも帰ってきて、例のアレをごくごく飲んだ後に、部屋に戻ろうとして、コケた。

「おいおい、大丈夫か」

 それほど激しい倒れ方ではなかったので、恵一は少し笑みすら浮かべながら言ったのだが、エリスから返事は無かった。

「お、おい!」

 心配になって呼び掛ける。

 ずり、ずり、と這って部屋へ向かってはいるので、死んでるわけではなさそうである。

「お気に……なさ、らず」

「いや、そんなの」

 気にせんわけにはいかんだろ、と思いつつ、恵一はエリスに駆け寄った。

 蛇蝎のごとく嫌っているケイトも、さすがに心配そうに見ている。近寄りはしないが。

 アンは、いまいちよくわかっていないようできょとんとした顔だ。

「例の……です」

「あ、ああ」

 これが、例の呪術による健康障害なのだろう。そういえば、突然苦しみ出すことがあると言っていた。

 で、その時は遠慮せずに放置しろ、と言われていて、いざその場に居合わせたらそんなことできるだろうか、と思っていたのだが。

「ほら、つかまって」

 手を差し伸べた。こんなもん目の前にしたら放っておけるわけがない。

 しかし、エリスは完全にそれを無視して、ずり、ずり、と這っていく。

「ああ、もう!」

 恵一は、思わず叫んでエリスを抱き起こした。強引すぎるかとも思ったが、当人に全く手を借りる気が無いので強引にやるしかない。

 エリスはぼそぼそ呟いているようだったが、明瞭ではなく聞き取れない。

 おそらく、放っておけという類のことを言っているのだろうが、聞く耳持つ気の無い恵一は、聞き取れないのをいいことに無視して肩を貸して引きずって行った。

 部屋でエリスを横にする。寝袋には入れないと見て、寝袋の上に横たえた。

 エリスは、苦しそうに呼吸をしながら、喘いでいた。

 恵一は、狭い部屋の中に、幾つかの壺を発見した。

 気付くと、エリスが這ってきてそのうちの一つに手を伸ばしていた。

「これか?」

 恵一が、目当てらしい壺を持って差し出す。

 エリスは非難がましい視線で恵一を一瞥した。一応親切のつもりでやっているので、そういう目で見られるのはとても困る。

 だが、とにかくエリスはその壺の蓋を開け、喘ぎながら手を震わせていた。

 いつのまにか、その指の先に火が灯っていた。

 指を壺の中に入れる。

 壺から、ほのかに煙が立ち上り始めた。

 壺の中にある何かに火をつけて燃やしているのだということが、それでわかった。

 エリスは、その壺に顔の下半分――つまり、鼻や口を押し付けた。

 大きく、深く、息を吸う。

 吐いて、また吸う。

 三回ぐらい繰り返すと、壺から顔を離しすぐに蓋をした。

 蓋をしっかり閉めると、ごろりと寝転がった。

「エリス?」

 心配して覗き込むように顔を見る。

「ふいーっ」

 エリスは、幸せそうな、とろんとした溶けそうな表情をしていた。

 初めて見る顔である。

 少しすると、また壺の蓋を開けて顔を押し付け、吸って、吐いて。

 それを何度かしている内に、エリスの苦しそうな喘ぎ声は消え、呼吸は正常に、そして顔は無表情に戻って行った。

「あ、あの、エリス」

「ああ、お気になさらず」

「えっと、今のは……」

「薬です。あれが一番効くんです」

「あー、そのー、えーっと……やばい薬じゃ、ないよね?」

 恵一が、それを見て真っ先に思ったのは麻薬のようなアレである。

「やばくはないですよ」

「そ、そうか……それなら」

「私みたいな者は、今更体に多少害があるとかどうでもいいですから」

「お、おう」

 多少の害はあるらしい。やべえんじゃねえかよ。

 部屋の入り口の方を見ると、ケイトが渋い顔をしている。

 いくら利子が安くなるとは言え、こんなもんに部屋貸すんじゃなかった、とその顔は露骨に言っていた。

「なんだそれ、なんかいい臭いだぞ」

 くんくんと鼻を鳴らしてアンが言う。

 ほんのりと、独特な臭いが立ち込めているが、これを「いい臭い」というのはけっこうユニークな感想であると恵一は思う。

「ああー、アンは、あっちに行ってなさい、ウン」

「なんだなんだ、なんだそれ」

 ずんずん部屋に入ってくるアン。

「やばくはないけど、あんまり体によくない薬です」

「体によくないのか、いい臭いなのに」

「アン、いい臭いしても体に悪いものはあるんだよ。いい子だからあっち行ってな」

「うー、いい臭いなのに」

 アンは不満そうに、出て行った。

「これは、山奥に生えている野草を乾燥させたものですが……元々は、獣人族が痛み止めに使っていたものが彼らから人間に伝わったと聞きます」

「あ、もしかして……」

 アンの父親が、使ったことがあり、アンはその臭いを覚えていたのかもしれない。

「えっと、エリス……それアンには……」

「もちろん、健康な人が使う必要はありません。……アマモトさん、なにか勘違いしているかもしれませんが、私だって強い発作が起きない限りは使いませんよ、こんなの」

「ん? ああ、わ、わかってるさ」

 いや、わかってはいるつもりだったのだが、思い返せば、まるでエリスを常習者みたいに扱ってしまっていたかもしれない。

 彼女とて、純粋に痛み止めに使っているだけで、快楽のためにやっているわけではなかろう。

「とにかく、私はもう大丈夫ですから」

「ああ、そうか、それじゃ……」

「あ、そういえばアマモトさん、さっきは色々していただきましたが」

「ああ、それなら」

 感謝には及ばない、と言おうとしたのだが。

「ああいうことは止めてください。自分でなんとかしますし、しなければいけません。常にあなたのような親切な方がそばにいるわけではないのですから」

「あ、ああ、そうか。ごめんね」

 さっきの非難がましい目はそういうわけらしい。

 いいことのつもりでやったことにそう言われると、正直ガックリ来てしまうが、エリスも恵一の行為を親切であるとは認めているようなのが僅かに救いだ。

「それでは、私は疲れたのでもう休みます」

「ああ、おやすみ、エリス」

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