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決闘前夜

「いやぁ、腕が鳴ります」

「うむ」

 リアントゥム家の逗留先では、リアッセが明日の決闘に心を浮き立たせていた。

 要するに、好きなのだ、そういうことが。

「しかし、私は、ついつい受けて立ってしまったのですが、兄様が許してくださるとは意外でした」

 リアッセは嬉しいながらも、そこへ一抹の不審が生じるのを押えかねるようだ。

 一対一で代表を出し合って決闘して、その結果で両男爵家間の調印の条件などという極めて政治的なものを決めてしまう。

 そのようなことを、正しい為政者の態度ではないとして拒むような印象を、彼女は兄に対して持っていたのである。

「もちろん、最初からそれで決めようなどと言っても認めんさ。でも、今回の場合はお互いに言いたいことは言い尽して、もう後は戦争しかないとまで踏み込んでしまった状態だったからな」

 お互いに、もうこの条件以外は認めない――その線からの後退はできない、という状況だった。

「確かに、私はこれまでならば、こんなことを認めなかっただろう。決闘などという一人の人間の強さに、重大な案件の成否を賭けるようなことはな」

 この辺りは、為政者としての性かもしれぬ。

 為政者にとっての武力とは軍隊だ。

 個々の人間の強さよりも、複数のそれを総合した集団としての強さを重視し、個の強さを重んじることを、どこかで軽んじるとまでは言わぬまでも自分で戒めているようなところがリードにあった。

 それは一面、正しい態度ではある。

 レベルが高い者がいればいるほど有利なのは当然で、そのために日々の訓練の奨励や、高レベルの者や素質のある者を召抱えるように努めるべきではあるが、それに頼っていてもよろしくない。

「だが、今回のことで、私はそれに固執する必要はないということを悟ったよ。それで事態がおさまるならば、その選択肢を排除しないのが為政者として正しいのだ」

 つまり、これまでのリードは、為政者として正しくあらねばならぬと自らに枷をはめていた。

 だが、その枷が、少し歪な形をしていたということに気付いたのだ。

 目的がそれで達成されるならば、そんなことはしてはいけない、という思い込みに囚われることはなかった。

 無論、リードは十分に倫理的な人間なので、それから大きく外れることはこれからもしないつもりだ。

 だが、今回のように、倫理に触れるようなことでなければ大いにけっこう。

「ふむぅ、つまり兄様は今回の件で為政者として成長されたわけですね」

 楽しそうに笑うリアッセに、お前にそう言われると認めたくはないがそうだ、と答えてリードは嬉々として剣を振っている妹を見ている。

 彼女には言わぬが、今回の決闘という解決法の最大のメリットは、まさにこの妹なのである。

 そこは、アレンの推測通りである。

 急先鋒のリアッセ自身に責任を全部おっ被せてしまうのだ。

 勝てばよし、負ければ自分の責任であるから、この上は戦争だなどと言わないだろうし、そのような動きを見せる家臣たちを制止に回るだろう。

 相手側であるアレンが本気で戦争までやる気の無いことは、リアッセのおかげでわかった。その点で、彼の強硬な言動を恐れる必要は無くなった。

 だが、まさにそのリアッセのせいで、こちらも適当な所で引けなくなってしまった。

 こうなれば、アレンよりもリアッセの方が厄介な存在である。

 ゆえに、そのリアッセを暴発させぬ方法ならば、なんでもよかった。

「これが、政治、か……」

 相手方だけでなく、身内の不穏分子も……いや、そちらこそを上手く制御しなければならぬ。


「おう、おつかれ」

「おつかれ」

「……いや、ホントにな……」

 ヘトヘトになって部屋に帰ってきた恵一を、ケイトとアンがお菓子食いながら迎えてくれた。

 決闘は明日に決まった、という話が知れるとハウト男爵家有志一同がやってきて恵一を連れ去り特訓してくださったのである。

 もうさっきやったじゃねえかという話なのだが、さっきはいなかった人間も加わってしごきにしごいた。

 と、言ってもそこは彼らは玄人なので、翌日に疲労が残るまではやらない。

 なんとか夕食前に開放されて、こうして帰ってきたというわけだ。

「でも、みんなそれなりに経験ある人らだろ。ためになったんじゃないか」

「いや、まあ、そりゃそうなんだけどね」

「まあまあ、明日はお嬢様にいいとこ見せたれよ。ただでさえケーイチは命の恩人じゃけんね、ここでビシッとしたとこ見せたら、お嬢様の覚えもさらにめでたいぜ、ふへへ」

 勝利報酬一万ゴールドのために、ケイトはこうやってさっきっから煽ってくる。

「いや、まあ、やるからには勝ちたいけどさ」

 手取り足取り罵詈雑言で鍛えられて、この一日でけっこう色々覚えて自信もついた。

 だがしかし、思えば相手がアレなのである。

 リアッセ・リアントゥム男爵令嬢――

 美人だとは思うのだが、そんなのどうでもよくなる烈しさがあり、それを初対面から幾度となく感じる場所に恵一はいた。

 多少の技術を覚えたところで、アレと対峙して自分は冷静でいられるだろうか。

 いや、まず無理であろう。

 技術云々の以前に、気力で負けそうだ。

 決闘がどんどん迫ってきて、ついつい引き受けてしまったことを後悔する気持ちが芽生えてきた恵一は、そんなようなことを愚痴ってしまった。

「気迫で負けたら駄目だぜ、でも、その向こうのお嬢さん、きっつそうだからなあ」

 ケイトは、リアッセを間近で見たわけではないので伝聞になるが、恵一のあまりのビビりぶりにきっつそうだというのは嫌でもわかっている。

「吼えろ、ケーイチ」

 と、言ったのはアンだ。

「ほ、吼える?」

「吼えるんだ。こう……」

 息を吸い込んで、アンが咆哮した。

 それは正に獣の咆哮であり、耳と尻尾などの見てくれ以外で、やはりこの子は獣人族なのだとはじめて思わされた。

「私たち獣人は、決闘の前にこうやって吼えて、相手をビビらして自分を勇気づけるんだ。ケーイチも、やれ」

「え、うーん、アンみたいに上手くできないと思うけど……」

「やれ」

 アンにじっと見つめられて、恵一は、口を大きく開けて吼えた。

 獣人とは声帯からして違うのだろうか、やはりどうやってもそれは獣の咆哮とはならなかった。

 ただ、大声で喚いているだけだ。

 それでも、少し、気分がすっとした。錯覚かもしれない……いや、まあ間違いなく錯覚であろうが、それでもすっとした。

「ケーイチさん」

 ノックの音と、声がした。

「あ、お嬢様」

 ドアを開けると、そこにいたのはミレーナだった。

「どうしましたか?」

 もしかして、明日の激励に来てくれたのだろうかと思いつつ、恵一は尋ねた。

「いえ、なにか凄い声がしたものですから」

「あー、いや、それは……」

 出せる限りの声を出したのだ。宿中に響き渡っていたのかもしれない。

「……あの……すみません」

 ミレーナは深々と頭を下げた。

「ケーイチさん……私のために、決闘を引き受けてくださったのですよね」

 いや、ゴールドのためにケイトが受けたみたいなもんなんです、とは思ったがなにかそれを言えない重さがミレーナにはあった。

「また、恩ができてしまいました。まだ最初の恩もろくにお返ししていないというのに……」

「あー、そんな気にしないでください。負けちゃうかもしれませんし」

 少しおどけた調子で恵一は言った。僅かにでも、ミレーナの気が楽になるかもしれぬと期待してのことだったが……

「いえ、勝ち負けは問題ではありません。決闘をしてくださるというだけで……」

 あんまり効果無しである。

 正直、こうまで恩に着ていただけると悪い気はしないのは確かであるが、そこまでミレーナのためにと思ってのことでもないし、無償ではなくしっかり報酬も貰うのだから却って後ろめたい感情が生じてしまう。

「まあまあ、お嬢様、あんま気にせんでくださいホントに。アレン様からしっかりコレは貰いますけん」

 親指と人差し指で丸を作りながら、ケイトが言った。

「それと、さっきの声を聞いて、ケーイチがビビっとるとか思ってるかもしれませんが、そんなこたぁありませんぜ。な、ケーイチ」

「……お、おう」

「ちょっと、明日の決闘が怖くてしょうがない、というように解釈しようがあるような悲鳴みたいな声でしたが、あれは決闘を前に気が高ぶって、気合いを入れとったんですわ。な、ケーイチ」

「うむ。こう、気合いが入りまくってしまって、声が裏返ったみたいになったのであります」

「そ、そうなのですか?」

「そうなんです!」

 ケイトが断言し、その後ろで恵一は腕組みをして頷いた。

「へえええ、そうだったんですねえ」

 完全に恵一がビビってると思っていたらしいミレーナは、心配が全く霧散したというわけにはいかぬが、少しだけ恵一を頼もしく感じているようだ。

「おう、ケーイチ、今日は早く寝とけよ」

「ん、そうだな。じゃ、風呂入ってくるわ」

「あ、それじゃ私もこれで……明日、頑張ってください。でも、無理はしないでくださいね」

「ありがとうございます。まあ、おれも死にたくはないんで、そんな無理はしないです」

 その後、宿の風呂に入ってから、早く寝ろ早く寝ろとケイトに言われるままにベッドに潜り込んだ。

 決闘である。

 もちろん、はじめての経験だ。

 これまで、恵一の戦闘経験といえば三度――ミレーナを追っていた野盗を蹴散らしたのと、借金取りの兄貴分を撃退した。これらは突発的な戦闘であり、無我夢中になって切り抜けた。

 あとは、クマとの対決だが、これはあらかじめ発生が予想されたものであり、またなんらかのルールがあるものではなかったので、前もって色々と罠などの準備ができたし、ケイトの助力もあった。

 だが、明日の決闘は、それらのものがない。

 一対一で、同じ条件での勝負だ。

 突発的であれば、心の準備もへったくれもない。気付いた時には始まっているのだから、我を忘れて事態に対処するしかない。

 ルールなどないのならば、あらかじめあれこれと自分が優位に立てるよう準備をして、これだけの準備をしているのだから大丈夫さと自分を安心させることもできる。

 だが、それらが無い。

 心臓が鼓動を刻むリズムが、全身で感じられるぐらいに緊張している。

 明日、やるしかないのだ。

「ケーイチ、寝てる?」

「ん、いや」

 けっこう時間が経っていた。その間、眠れもせずにいたようだ。

「ちぃとこいつを調達してきたから、少しやりな」

 底の深い器を差し出してくる。その中には白く濁った液体がささやかに波打っていた。

「これは?」

「酒だよ」

「え?」

 近付けて臭いを嗅ぐと、確かにそれっぽい香りがする。

「いや、でも、未成年だし」

「みせいねん? なんじゃそら」

「ああ、いや……えっと」

「それ、記憶の手掛かりじゃないか」

「ん、うん、そ、そうかも」

 慌てて誤魔化しつつすっとぼける。

「年齢で酒飲んでいいかどうか法律で決まってる?」

 ケイトはそう言って、唸った。

「あたしは知らないけど、まあ、どっかにそういう国もあるのかもな。子供が飲んだら体によくねえってのは、まあ、そうだしさ」

 ケイトによると、少なくともこのヤシュガル王国領内においては、年齢によって厳格に飲酒してよいか悪いかが線引きされているわけではないらしい。

 ただ、なんとなく、十五歳を過ぎていて仕事をしているのならば咎めることではないという風潮があるようだ。

「えっと、つまり、おれは……」

 十七歳で、一応仕事もしているのであるから、よいということだ。

 それでも、やはり未成年で飲酒には抵抗がある。

「あんま飲んだら駄目だけど、寝れないぐらいなら少し飲んで寝た方がいいって」

 と、ケイトは強く勧めてくる。確かに、過ごさねば明日の決闘において不利になるほどに体に不調は出ないであろうし、それなら寝不足による体調不良の方が怖い。

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」

 郷に入りては郷に従え、か。

 元いた世界でも、外国に行けばそこの法律に従うべきなのだから、ましてや異世界なのであるから問題あるまい。

 と、決意したら、はじめて飲む酒というものへの興味も湧いてくる。

 くい、と舌で舐め取るように口に含んでみた。

「んー」

 さすがに少な過ぎるのか、味らしい味が感じられぬ。

 少し、多めに行ってみた。

「うーん」

 カーッと来た。それが喉を下っていく。

「うーん」

「あんまし美味くないか?」

「んー、正直」

 口に合う合わぬという以前に、初めてのアルコール摂取に対して、軽くだが体が拒絶反応を起こしているような感じがする。

「まあ、睡眠薬だと思って飲めよ」

「うん」

 何回かに分けて器を空にすると、再びベッドに入る。

「ケーイチ、怖がることはないんだ」

 隣のベッドから、ケイトが声をかけてくる。

「ケーイチだったら勝てるさ。心配することなんてない」

 ゆったりとした語り口はちょっといつものケイトらしくなくて、目を閉じて聞いていると、別人のようだ。

「クマを殴り殺したのを、あたしはこの目で見てたんだ。ケーイチは強いんだよ」

 はじめての酒で、体が火照っている。その状態で横になって暗い部屋の中、よく知っているはずなのに、初めて聞くような声を聞いている。

「だから、明日はなーんも心配することないし、あたしもぜんっぜん心配なんかしてないよ」

 声に、全身を浸すように、聞き入っていた。

 ふわりと落ちる感じがする。

 落ちるけど、決して怖いとかそういうことはない。

「なんっつっても、勝つと負けるじゃ八千ゴールドも違うけんね。明日は頼むぜえ」

 ああ、やっぱりケイトだなあ。

 そう思った時には、眠りに落ちていた。


「どうだ」

「うん、いいよ。よく眠れた」

 翌朝、差し込む陽光に目を覚ますと、体調はすこぶる良かった。

「あ、おはようございます。今日は頑張ってくださいね」

「はい」

 ミレーナに激励されて、けっこうやる気も出たところへケイトが背中を叩いてくる。

「おれは強いおれは強い、って言え」

「は? なんで?」

「自己暗示だよ。ケーイチはどうも、本当は強いのに自信が無さ過ぎるから駄目なんだ」

 自信の無さは我ながら痛感するところではある。

「よ、よし……おれは強い、おれは強い、おれは強い」

「そうそう、あとはそうだな……絶対に勝つ! とか負けるはずがない! とかさ」

「おう……絶対に勝つ、絶対に勝つ、絶対に勝つ、負けるはずがない、負けるはずがない、負けるはずがない」

 ブツブツ繰り返すと、なんだかそんな気にもなってくる。

「よし、朝飯食って出陣だ」

「おう、おれは強い、おれは強い」

 朝食は、もちろん重たいものではなく軽く済ませて、決闘の舞台である競技場へと向かった。

 競技場は、閑散としていた。

 収容人数を遥かに下回る人間しかいないのだから仕方ない。

 両男爵家の決闘である。注目を集めているのは間違いなく、金払っても見たいという人間も多いだろうから、客を入れたらけっこう入ったであろう。

 だが、当然見世物ではないので、競技場内にいるのは両家の関係者と、立会人のイリアと今日のために呼ばれた治癒士、そして例の初老の魔術師だけであった。

 さっさと事を終わらせたいアレンとリードは、もう決闘が終わったらこの場で調印を済ませてしまう気なのだ。

 ちなみに、何度も駆り出されてあの魔術師の人も大変だな、と恵一などは思っていたのだが、先日のリアッセがアレした調印式は、ハウト男爵家側だけとはいえ魔術刻印は捺されていたので料金はしっかり発生しており、予定の倍の収入になるのでむしろ大喜びだろうとアレンが言っていた。道理ですこぶる上機嫌そうである。

「逃げずによく来たわね……って、ケーイチ・アマモトってあんたなの?」

 リアッセは、自分の決闘相手の名前は聞かされていたものの、それが恵一だとは思っていなかったらしい。しっかり名乗ったはずなのだが、右から左で忘れていたようだ。

「同じレベル10だって聞いてるけど、ホントなの?」

「あ、はい、本当であります。あ、レベル鑑定書見ますか?」

 疑われるのが当たり前と受け容れるのに慣れ切った恵一は、流れるような動きで鑑定書を出そうとする。

「いや、別にわざわざ見せないでもいいけどさ……」

 リアッセは、そう言いながらも、なおも疑わしげな目付きである。

 もう、そんな胡散臭いものを見る目をするぐらいなら、鑑定書出すから是非見て欲しいと思う。

 リアッセが近付いてきた。やっぱり鑑定書見る気になったのだろうか。

「……あんた、なんか騙されてない?」

「え?」

「いや、何言われて引っ張り出されたか知らないけどさ、いくら木剣って言っても、叩かれたらけっこう痛いのよ? わかってる?」

「い、一応、わかってます」

 昨日の特訓で何度か食らったので、木剣を侮ってはいけないというのは嫌ってほどにわかっている。

「……まあ、事情は知らないけど、それなりに覚悟してきたんでしょうね。遠慮はしないからね」

 少し、彼女の印象が変わるような、恵一のことを心配しているような感じだったリアッセが本性現したというべきか、当初の印象通りの、やたらと鋭い眼光で恵一を射抜いた。

「あ、は、はい。お互い頑張りましょう」

 恵一が思わず言ったアホみたいな台詞は、颯爽と身を翻したリアッセの耳には届いていないようだった。届いていたとしても、無視されていただろうが。

「おい、ケーイチ、こっち来い。ほら、剣」

 ケイトがぶんぶんと手招きしているので行くと、今回の決闘で使う木剣を渡された。寸法重量等々、全て同じものをリアッセも使う。

 文字通り、木製の剣であるが、切っ先はそれほど尖っていないので突きは真剣ほどには効果が見込めないだろう。とはいえ、真剣でないゆえに効果が見込めないのは斬りつける方こそ大きく、突きが最も強力な攻撃になるのは間違いない。

「よし、ケーイチ、やったれや。お前は強い、お前は強い」

「負けても死にゃしねえ、負けても死にゃしねえ、負けても死にゃしねえ」

「……ケーイチ、どうした。ほら、さっきみたいに、おれは強い、とか、絶対に勝つ、とか、負けるはずがない、とかさ」

「い、いや、なんかこっちの方が安心できるって言うかさ。……負けても死にゃしねえ、負けても死にゃしねえ……」

 そうだ、負けても死にゃしねえんだから、安心さ。

「やる前から負けること考える馬鹿がいるかよ!」

「いや、そうは言いましてもですね」

 ケイトの言いたいことは凄くわかるのだが、わかってたってどうしようもねえことってあるじゃん!

「ほら! イリアさんが呼んでる!」

「あ……」

 競技場の中央に、既にイリアとリアッセがいた。

 イリアが手招きしている。

「おれは強い! 絶対に勝つ! 負けるはずがない! ……負けても死にゃしねえ」

 恵一は、ブツブツ言いながら歩き出した。

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