決闘してくれないか
交渉終了後、宿に戻るとアレンから呼び出しが来た。
三人で行ってみると、ミレーナも来ていた。
「いやぁ、大変なことになったな。えっと、なんだっけ?」
「あ、恵一天本です」
「うん、そう、アマモトだ。大変なことになったなあ」
「あ、はい、そうですね」
怒っているとも言えず、機嫌がよさそうとも言えず、なんとも微妙な態度であった。
「で、確か君、レベル10って言ってたね」
「あ、はい」
何気なく答えつつ、なんか凄い嫌な感じがした。
レベル10……一応そう認定されている。実際のところ、鑑定士も自信なさげではあるのだが、ギルドの鑑定書もそれで発行されてしまっているので、世間的には恵一はそのレベルということだ。
ある意味慣れ親しんだともいえるレベル10という言葉なのだが、なんだか引っかかる。自分のレベルであるという以外に、なにかそれを、そう、それこそごくごく最近、その言葉を聞いたような覚えがある。
「うんうん、そうか、レベル10か」
「あ、でも、おれ、記憶喪失でして、戦い方を忘れているというか……イリアさんに少し教えてもらったんですけど、まだまだで……」
もう、半ば習性的に念を押しておく。レベル10ということで一目置かれたりして、それで色々とメリットを得ているのは確かだが、そんなに期待されても困るのだ。
「まあ、大丈夫さ」
何が大丈夫なのだろうか。
「君ねえ、ちょっと決闘してくれないか」
殊更に軽い調子でアレンは言った。
こういうことを殊更そういうふうに言うのは、事の重大さを認識させぬうちに言質を取ろうという手口なのだが、恵一もさすがに引っかからない。
「いやいやいや! 無理ですって! 記憶喪失なんですって!」
「でも、野盗を何人も倒したのだろう」
「あ、いや、あれは……相手のレベルが凄く低かったからだと……」
「クマを殴り殺したそうじゃないか」
「え、いや、それは……まあ、なんというかたまたま最高のタイミングでヒットしたと言いますか……」
「相手もレベル10だからちょうどいい」
「いや、相手って……あの人ですよね」
リアッセ・リアントゥムだ。そういえば、さっきレベル10だと言っていた。
正直、同レベルと思えない怖さなので真正面に立つのも嫌である。
「大丈夫大丈夫。別に我々は殺し合いをさせたいんじゃない。さっきの話聞いてたろ」
「ええ、まあ……」
出ていけと言われないのでその場にミレーナと突っ立っていた恵一は、あれからの話し合いを全て聞いていた。
条件としては単純である。
リアントゥム男爵家の代表が勝てば、一番最初にリードとブレンニールとの間で合意した条件――すなわちエリックの遺族への慰謝料支払い、エリック殺害の首謀者の追放刑、その他の者への謹慎罰金、そしてリード自らハウト男爵家領へ足を運んでの謝罪、にて調印を行う。
ハウト男爵家の代表が勝てば、アレンが乗り出してから一旦合意した条件――すなわち先の条件の慰謝料を倍増し、首謀者の追放刑を殺人刑に相当する禁固刑に処した上に、リードが謝罪に赴くことは変わらず、という内容にて調印。
さらに、それに加えて、決闘の方法についても話し合いが行われた。
まず、レベルはできるだけ同じレベルの者を出すこと。リアントゥム男爵家はその場でリアッセが代表になることを表明したのでハウト男爵家も、レベル10の者を選出せねばならない。
そして、決闘の内容であるが、できる限り決闘者が死なぬようにすることをリードは求めた。
武器は真剣を使わずに、木製の木剣を使用し、片方が倒れた場合、それへの追撃は禁止、倒れてから五秒の間に立ち上がれぬ時に、勝敗が確定する。
五秒という時間の理由は、倒れてそれだけの間に起き上がれないならば実際の戦闘ならばトドメの一撃を貰ってるだろうから、ということであった。
ぬるい、とリアッセは不満そうであったが、この決闘はお互い譲れぬところを譲るために、家臣たちを納得させるために行うものであり、これで新たな死人が出て新たな遺恨が発生でもしたら目も当てられぬとリードが押し切った。
実際は、木剣といっても、刃が無いから斬れないというだけで木製の棒という武器であることには変わりないので、当たり所などによっては死ぬことも十分ありえない話ではない。
それでもあらかじめそのように「ぬるい」ルールを定めているのだから、それでもし死んだとしても不運だったという扱いになる。
それに、この街で一番腕の立つ治癒士を雇って待機させておくので、そうそう死ぬことはありえない。
とまあ、以上のような話をアレンたちがしているのを聞いていた。
運が悪くなけりゃ死にゃしねえ、ということなのだが、自分の運がよいと思うことはあまり無い恵一である。
「いや、それにしても、勝てる自信はありませんよ。大体、他にいくらでも自分がやりたいって人がいるんじゃないですか?」
両男爵家の代表が行う決闘なのだから、人々の注目を集めることは間違いない。それに勝って名を上げたいと思う者は多いだろう。
先に述べたように、危険度もかなり軽減されたルール設定にされているとあらば、尚更だ。
「レベル10、ってのはなあ、けっこういいレベルなんだ」
「それは……まあ、わかってますが」
何度も言われたのは、その歳でそのレベルは凄い、ということである。
これは、まだまだ成長するであろう年齢でそのレベルは凄い、という意味合いも込められているのだ。
「でなあ、今、うちでレベルがそのぐらいの手頃なのが正直、おらん」
「はあ……」
アレン曰く、10まではいかぬが、7とか8ならば全くいないわけではないのだが、大体がまだ若いこれからに期待している連中であり、彼ら自身に話を振れば、若さゆえの勇気と功名心で受けるであろうが、アレンとしては出したくない。
「なぜですか? 死ぬ可能性は低いわけですし、いい経験にもなるのでは?」
「主家の名誉を賭けた決闘だぞ。注目も集めている。……そこで負けてみろ」
当然、負けたけど頑張ったからいいじゃないか、とはいかない。
大事な決闘に負けやがって、というのを筆頭に散々罵倒されるであろう。
そうなると、若い者ほど居辛さに耐えられず、若い者ほどその身軽さを生かして飛び出してしまう可能性が高い。
アレンとしては、期待をかけている若者たちがそうなることは避けたい。
そして、その逆のベテランとなると、これがレベル12とかそれ以上の者ばかりだ。先にレベル10のリアッセが名乗りを上げているのに対して、後から相手を選出するのであるから、やや低い者を出すならともかく、高い者を出すわけにはいかない。
これはガチガチの真剣勝負ではなくあくまでも「儀式」だ。
「同レベルの者を出し合う」という条件を崩すわけにはいかない。
「いや、ちょっと待ってくださいよ」
話をふむふむと聞いていた恵一だが、一つのことに思い当った。
「それ、おれが負けたら、おれも散々罵られるってことですよね?」
「うむ」
うむ、じゃねえよ! と言いそうになるのを手前でぐっと我慢して、恵一はそんなのはおれだって御免です、という顔をしてみせた。
「別にいいじゃないか。お前は臨時雇いの護衛なんだから。王都に住んでるんだろ? さっさと帰っちまえばいい」
「いや、まあ、そう……ですけど」
「お兄様」
と、そこでミレーナが話に入ってきた。
「ケーイチさんは、私の護衛として来ていただいたのです。それ以上のことをしていただくわけにはいきませんよ」
「ん、ああ、そうか金か」
「いえ、そういうことでは……」
「金なら、もちろん護衛の報酬と別に払うぞ」
「ほうほう、それはとても興味深い」
ケイトがいつの間にか恵一の横にいた。
さっきまでずっと後ろにいたはずなのに、アレンの口から金という言葉が出た瞬間に前に出てきたらしい。
「そうだな……二千ゴールド……勝ったら一万ゴールドでどうだ」
「よし、ケーイチやるぞ!」
「え、あ、はい」
ゴールドの響きには逆らおうとしないケイトが受けてしまったので、恵一も勢いで頷かされてしまう。
「ケーイチさん、そこまでしていただかなくても……」
ミレーナがすまなそうに言う。
いや、正直頷いてしまったのはケイトのせいなのだが、ちょっとミレーナにいいとこ見せるチャンスなのでは、とかいう下心が、そのすまなそうにしている顔を見て芽生えてしまったりもする。
だが、相手がアレなのを思い出す。
いいとこ見せるどころか、二度と顔合わせられないレベルの無様さらす可能性の方が遥かに高いような気がする、というか高いに決まってる。
「いや、ちょっと待ってくださいよ」
「あっちが、妹殿出してきたのはなんでだと思う」
「え? いや、それはあの人がやりたいって言うから」
「うむ、それはそうだが、リード殿も止めなかっただろう。止めないということはリード殿もそれでいいと思っているということだ」
「なんで、なんでしょう?」
「まずはレベルが10とけっこう高い。あんまり低いのを出しても男爵家同士の決闘として見栄えがよろしくないからな。それで、なんといっても、敗北した時のリスクが無い」
リスク……というと、アレンが先ほど言っていた、負けた者は主家の名誉を賭けた決闘に負けたことによる重圧と、周囲の白眼視に耐えられずに出奔してしまう、ということであったが、それは当人が男爵家の者なのだから、まさかそれで家出はしないだろう。
それに負ければ、頑張ったのだからでは済まないと述べたが、それが主家の令嬢ともなると、まあ頑張ったのだからで済んでしまう。
それに、情報によるとあの性格のせいで、リアッセはリアントゥム男爵家の特に好戦的な連中には好かれているので、その彼女が決闘に負けたのなら仕方ないと彼らが納得する効果も見込んでいるのだろう。
「えっと、それじゃ……」
こっちも同じ立場の者を出せば、と言いそうになるが、それはミレーナだというのに気付いてアレンを見る。
「おれは駄目だぞ。……正直、勝てんしな。おれが出て負けるわけにはいかん」
リアッセは、あくまでもリードという跡取り息子の妹であり、リアントゥム男爵家の者ではあってもトップを継ぐ立場の人間ではない。
「だからまあ、ミレーナの代わりに出ると思って頼む」
そんな理屈あるかボケと思わないでもないが、勝利報酬がおいしいのは事実である。
「負けたら、もうすぐに逃げますからね」
「おう、馬車を用意させておく。それじゃ頼むぞ」
「ケーイチさん、すみません」
部屋を出ると、ミレーナがすぐに頭を下げてきた。
「ああいや、いいですよ。別にお嬢様のせいじゃありませんし」
なんだか責任を感じてしまっているようなので、却って恐縮してしまう恵一。
「そうですよ、ゴールドはしっかり貰うんですけん。仕事としてきっちりやりますぜ。ふへへ」
ゲスい笑みがこぼれるのを押え切れぬケイト。
「うー、飯まだか」
状況を理解していないし理解しようとも思っていないアン。
「おし、ケーイチ、負けても死にゃしねえし、ゴールドも貰えるけど、やっぱりここは勝っておきたいとこだな」
「うん、まあ……さすがにおれも負けてもいいやとかは思ってないさ」
技量では、どうやったってリアッセの方が上だろう。
しかし、自分には相手の殺気に反応して発動するらしき謎の力がある。
どうせリアッセの性格からして、木剣を使った死人が出にくいようにしているルールとか知ったことかと言わんばかりに、殺気をむき出しにして襲いかかってくるに違いない。
そうなれば、まあ、なんとかなるだろう。とけっこう気楽に恵一は考えていた。
それでも、最後に勝ったとしても、その途中であんまり無様な姿を主にミレーナに見せるのが嫌なので、それなりに剣の振り方ぐらいはちゃんとしておきたい。
そういうわけで素振りなんぞに精を出すことにした。
本当は、イリアに見てもらいたいのだが、完全中立宣言の彼女なのでハウト側の代表になった恵一への剣の手ほどきなどもっての外だろう。
だが、教師に不自由することはなかった。
ハウト男爵家の人々が、代表になった恵一を激励しながら練習を見てくれたのだ。
「おう、なんじゃそのへっぴり腰は」
「おどれ、うちの代表ちゅうんわかっとんのか」
「そうじゃない、お前は上半身ばっか気にして、下半身が適当すぎじゃ」
「おうコラ、負けたら承知せんぞ」
「すぐに戻さんかい。反撃されること考えちょらんのか」
「お前、ホントにレベル10か」
「何回言ったらわかるんじゃボケぇ」
「お嬢様の命の恩人じゃなかったらぶち殺しとるぞ」
「相手は木石じゃないど、動くんじゃ、それ考えて剣振らんかい」
「おどりゃ、置物か。お前も動くんじゃ」
口は悪いけど、みんなとても恵一のことが心配みたいで、嫌だと言っても(怖いから実際には言えない)色々と教えてくれるんだ。
「いや、もうホントすんません。絶対勝ちますんで」
こうなる事態は全く想像していなかった恵一だが、実のところ、実戦形式と称するただのイジメではないかという練習も、終わってみればけっこうためになっていた。
考えてみれば、今までイリアには基本的な動作を教えてもらっただけで、実戦形式――それこそ動く相手を想定した練習などはろくにしたことがなかった。
相手も動くんだ、というのは言われてみれば当たり前だが、正直言われるまではあんまり気にしていなかったことでもある。
「……お前、一応はレベル10なんだな」
一応レベル10なのは最終的に認めて貰えた。
実戦形式で打ち合ってみて、それなりに腕の立つ彼らには、恵一の基本的な能力はレベル10に見合ったものであることはわかるのだ。
恵一としても、色々と教えてもらうのは、なにしろ口が悪い方たちなのでそれが辛いと言えばそうなのだが、楽しいところが無いとは言えなかった。
いわば、恵一は体は出来上がっている状態になっている。
その状態なので、教えられたことをけっこうすぐに実践できたりする。そもそもそんな動きできる筋力が無いんで動き自体を覚えてもできません、ということがないのだ。
イリアにも色々教えてもらったが、そこはやはりミレーナの恩人であるということもあり、多少は彼女も遠慮していたのだろう。
まあ、この人たちも、ミレーナの恩人であることで多少は遠慮していたには違いない。なにしろミレーナの恩人でなかったらぶち殺されとるのである。
「ありがとうございました」
色々教えてもらったのでお礼を言った。
「おう、まあ、がんばれよ」
「筋は悪くはないな」
「しっかりやれよ」
最後は、ちゃんと激励してくれた。
根本的に流されやすく素直な恵一なので、教えられるがままに従い、短時間でそこそこ上達したのが少しは好感を勝ち得たようだ。
自我が乏しい、と言ってしまえばしまえるが、素直であるとすれば、恵一の美点であろう。
「おう、ケーイチ、凄くよくなったじゃないか」
情報収集と称するいつもの買い食いに出掛けていたケイトにも、褒めて貰った。
「街の声はどうだった?」
「おう、なんかようやく決着すんのか、ってことでいい感じだな」
実際のところ、一転二転する事態に、もういい加減にさっさと終わらせろよという感じになっており、とにかくこれで終わりそうだということで歓迎されているようだ。
このエイロンは既に述べた通り、リアントゥム男爵領ではあるがすぐそばにハウト男爵領との境界線があるような立地条件なので、両男爵家が戦争になるかもしれないとかいう状態でいられると、色々と主に商売上の都合などでよろしくないのである。
争点となっている条件も、はっきり言ってしまえば領民レベルの人間にはどっちでもいいことである。
もうさっさと終わらせてしまいたい。
そう思っているのは、街の人ばかりではない、例えばリード・リアントゥムがそうであろうし、そしてアレンもまたそうであった。
アレンとしては、ほぼ望んだ通りの結果を掴めそうだというところに、リアッセという不確定要素が現れてそれを諦めざるを得なくなった。
後退には違いないが、とにかくリアントゥムに対してただ引くだけでなく、戦う気概を持った人間なのだということは内外に示せたということで満足するしかない。
しかし、今後リアッセは要注意人物だ。
自分の代になった時に、彼と相対するリアントゥム男爵はリードであろうが、そのリードにはリアッセがついている。
あの、戦争を全く恐れない性格は、それだけで脅威であるだけでなく、それに頼もしさを感じた兵士たちが彼女を慕い、そのことが彼女を指揮官として一つ上のレベルに押し上げている。
やり取りなどを見たところ、一見弱腰をなじったりしているがリードとの兄妹仲は良好なようだ。
こっちも兄妹仲はよいつもりだが、ミレーナにリアッセの代わりを望むべくもない。そもそも、あんな貴族令嬢はそうそういない。
しかし、それにしてもミレーナはアレンから見ても、そちら向きに育てられていない。
嫁に出すのが惜しい、というのはけっこうアレンの本音だったりするのだが、まさかとは思うが父もそう考えているのだろうかと思うことがある。
順当にいけば、男爵の娘であるミレーナは結婚相手を自分では選べない。男爵が話を決めた、おそらくはどこかの貴族の家に嫁ぐことになるだろう。
しかし、そのつもりがあるのかがアレンから見ていささか不透明なのだ。
そもそも、ミレーナはもう十六歳になる。
この年齢だと、もう相手が決まっていておかしくないのに、そういう話が無い。
色々と話を進めているというのも、考えにくい、さすがにそのことは次代の当主たるアレンには早い段階で伝えるだろう。
過保護なのかと思うと、お忍びの外出などを放任しているところもあり、なんだか対応が一貫していない気がする。
愛していない……ということは無いと思うのだが。
もしかしたら、ミレーナの容姿がよいことをアテにして、高望みをしているということはありうるか。
普通ならば、ハウト男爵家では釣り合わないような家格の家との婚姻を、求めているのかもしれない。
だが、そう考えると、貴族のパーティーなどにほとんどミレーナが出席していないのがどうしても解せない。
そういった席にこそ、着飾った彼女を連れていき、見初められるのを期待するべきではないのか。
或いは、王女にやたらと気に入られているミレーナを敢えて結婚させず、王女につけておくつもりなのか。
下手なところに嫁いでしまうよりも、今のように王女と頻繁に付き合っていた方が、ハウト男爵家としては得なことも多い。
お気に入りの彼女がいつまでも独身でいれば、王女が相手を探してやろうとするかもしれず、王女のお声がかりとあれば、普通ならば高望みの相手でもこれを受け入れるかもしれないのだ。
「うむ、わからん」
いくらあれこれと想定しても、結局わからんのである。やはりミレーナに関しては、父の対応は常に揺れているようにアレンには思える。
「アレン様。ただいま戻りました」
「おう」
こちらの代表も決まったことを、リードに伝えに行った使者が帰ってきた。
「で、どうか」
「はい、こちらがよければ……明日にでも」
「早いな……まあ、早く済ませた方がいいな」
場所については、この街にある競技場を押さえてある。別に客を入れてやるわけではないが、その辺の野原でやるのも男爵家同士の決闘としてはみすぼらしい。
「こちらはそれでよろしいと伝えよ」
再び使者を送り出して、アレンは大きく息をついた。
色々と事態は転じたが、これでようやく終わる。
もちろん、恵一が勝ってくれるのが一番いいのだが、この決闘は儀式である。
決闘の勝敗で条件を決するということをリードとの間に合意した時点で、アレンとしては終わったのだ。
まさか、この上、事態を急転させることはないだろう。
一番の不安要素であるリアッセが当の決闘者になっているのだ。
勝つにしろ負けるにしろ、自分が当事者なのだ。
勝てばむろん文句はないであろうし、負けたとしても自分の力不足によるものなのだから、もはや何も言うまい。
メチャクチャなようで、いやまあ実際メチャクチャな人間だとは思うのだが、そこでああだこうだと言うのは自分の名誉を落とすばかりだという認識は、プライドが高いゆえに持っているだろう。
もしや、リードはそこまで見越してリアッセが名乗りを上げたのを止めなかったのかもしれない。




