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一転二転

「まあ、兄様。落ち着いてください。私はもう落ち着きましたよ」

「これが落ち着いていられるかっ!」

 取っ組み合いつつ調印式の席上から引っ張り出されたリアントゥム兄妹は、あれからすったもんだの末に宿屋に戻り、兄は怒り続け、妹はこのようにしれっと落ち着いているのであった。

「仕方ないでしょう。ギリギリ間に合ったとはいえ、あそこまで行っていたら、ああするしかありませんでした」

「調印の邪魔をするなと言っとるんだ!」

「え? そんなの、邪魔しますよ」

 嫌ですねえ兄様ぁ、とでもいうような甘ったれた感じでリアッセは言った。

「今回ばかりは、お前のそれには騙されんぞ」

 甘ったれた感じのに今まで幾度となく騙されてきたらしいリードだが、厳しい顔である。

「調印式で文書を破るという事の重大さをだな……ああ、もう、なんでこんなことわざわざ説明せねばならんのだ」

「まあまあまあまあ、兄様の言いたいことはわかりますよ」

 わかってねえとしか思えねえからこんなに困ってるんだろうが、という気持ちでリードは彼の妹を見たが、彼女はニコニコしている。

 ふーっ、と溜め息をついて、リードは椅子に腰を下ろした。

 早くも騙されかかっているように見えなくもない。

「話は大体承知しました」

 宿までの帰り道に、リードが散々この「なんにもわかってない妹」に対して事の経緯を説いていた。

「でも、やっぱりまずいですよ」

「なにがまずい」

 元々、感情が突っ走らず、例えそうなったとしてもすぐに立ち止まってしまうタチのリードは、表面上は落ち着いた様子で言った。

「一度、あちらの代官と交渉して話はまとまったんですよね」

「ああ、ブレンニール殿だ。……彼は話のわかる男だった」

 話のわからんアレンと我が妹のせいで、ブレンニールが懐かしくなったのかリードは少しだけ穏やかな声になっていた。

「で、後は調印だけだ、と。ハウト男爵の名代として娘が派遣されてくる、と」

「うむ」

「そこで、ほっつき歩いてたアレン・ハウトが突如帰ってきて、その話のわかる代官を押し退けて交渉やり直しを言い出した」

「ああ、そうだ」

「そこで、向こうは戦争になってもかまわないという態度で押してきた。しかも、もしもそうなったら陛下やその他の世の人々にことの是非を問う、とまで言った。兄様は、それに腰が砕けて先方の要求を呑んだ」

「……全体の流れとしてはそうだ」

 腰がアレしたとかいうところに何か言いたいのは明らかであるが、リードはそこは流した。

「いやぁ、駄目ですよぉ、兄様ぁ」

「なにがだ」

 もうホント駄目ですねえ、困った兄様だことと言わんばかりの妹の苦笑面にリードは不快そうに返す。

「なんで一度まとまった話の、交渉のやり直しなど受けたのです」

「……それは、とりあえず話を聞かんと始まらんだろう」

「なんでです。もう終わった話をまた始めてどうするのです」

「……リアッセ、お前の言うことにも一理はある。だがな、それを求めてきているのはあちらの長男なのだ。私が合意したブレンニール殿よりも上位者であり、彼がそう言い出した以上、あちらは調印には応じない。そうなれば、とりあえず話を聞くしかあるまい」

 リードの言うことは、概ね正しい。

 だが、その正しさは、ハウト男爵家との間に無事に調印を交わすことを目的にした場合の正しさであるとも言えるのだ。

 リードは、それを至上目的にしているために、自らの正しさを疑ってはいない。

「じゃあ、調印しなければいいじゃないですか。なにか困るんですか?」

 それゆえ、リアッセの言葉には、意表も衝かれたし僅かにだが考えさせられるものもあった。

「いや、だがしかし、そうなればあちらは戦争に……」

「そんな度胸ありませんよ」

 ケラケラと、とても軽い調子で笑いながら、リアッセは言った。

「兄様は、戦争と言えばそれは困るって態度をするからナメられるんです」

 と、まで言われてはリードとしても心穏やかではない。一応彼はリアントゥム男爵家の跡取りとして育てられてきている。

 生来の温厚な性格から、尚武の気風にあまり馴染めているとは言い難いところはあるけれども、そういう教育は受けて来てはいるのだ。

「私は、なにも無闇に戦争を恐れているのではない。ただ、負け戦はするわけにはいかんのだ」

「負け戦ですか? 負けますか?」

「お前は、そこがわかっとらんのだ」

 リアッセのある意味無邪気な言い方に、こいつはあくまでも戦争というのをリアントゥム男爵家とハウト男爵家の一対一の勝負のように捉えているのだ、とリードは思った。

「さっき自分でも言っていただろう、あちらはそうなったら陛下に是非を問うと言っているのだぞ。そもそもの非はこちらにあるのは明白だ。残念だが、陛下もそう判断されるだろう」

「だから、その非は謝るって言って、ちゃんと両方とも納得したのが最初の条件でしょう」

「む、そうだが……」

「だったら、陛下がなんとおっしゃられても、これこの通りこちらはきちんと謝罪するつもりで一度話をまとめていたのに、それをハウトの馬鹿息子が蒸し返してきたんですって言えばいいんです」

「む、しかしだな……」

 リードの語勢が明らかに弱くなった。リアッセの言うことに、一理どころではなく二理、三理があることを内心認めたのだ。

「それに、一度まとまった話に向こうの長男が出てきて、それに兄様が引いた形になってるのはやっぱりまずいですよ」

「むう……」

 リードは言われて気付いて低く唸った。

 自分のメンツにあまりこだわらず、自分が耐えて引けば事態が円満に解決すると思えばそうすることに抵抗が無い。

 個人であれば、美点にもなりうることだが、男爵家という集団の長としてはそれはリードの欠点とも言えた。

 なんとか今回のことでは納得しかねるが耐えている者たちも、その忍耐の結果、ますますハウト男爵家への怒りが溜まってそれがいつか爆発し、また今回のような「やり過ぎ」の結果の惨事を招くかもしれない。

「とにかく、私は絶対に認めません。なんとしてでも邪魔しますよ」

「むう……」

 そこへ、アレンからの使者がやってきて、明日にも調印をやり直すことを伝えてきた。リアッセの姿を認めた使者は、妹は拘束しろ云々については口を噤んだ。

「ああ、そのことだが……」

「調印は一旦なし。再交渉に応じると伝えなさい」

「待て待て、リアッセ」

「こうなったらもう一回仕切り直すしかありませんよ」

 兄妹の言い合いを、使者は困惑して眺めていたが、さらに彼を困惑させるどころか身の危険すら感じさせるものがやってきた。

 数人の、鎧姿の男たちであった。

 見た目で屈強なことと、ある程度年齢が行っていることがわかる。

「何をしに来た。城館で待機していろと言ったはずだ」

 というリードの言葉からして、それらは今回の調印に同行してきた者ではないことがわかる。

「リアッセ」

 お前が呼んだのか? という意図でリードは妹の名を呼んだ。

「いいえ」

 それを察して、リアッセは首を横に振る。

「いやぁ、リアッセ様が向かったと聞き、何か事があったらと思い駆け付けました」

「おお、よく来てくれたわね」

 駆け付けんでいい、と言おうとしてリアッセに先んじられたリードが、苦虫噛み潰した顔でいる。

「それでは、私はこれで」

 アレンの使者が上ずった声で言った。

「あ、使者殿待たれよ」

 というリードの声が聞こえないかのように、逃げるように使者は走り去った。

 いや、聞こえないフリをしつつ、はっきりいって逃げたのだ。

「他にも何人か来とります」

「それはいいわね」

「よくない!」

 心底よくないと思ったので、リードの声は荒くなった。

「なにがよくないのです」

「この状況で兵士が集まってきているとなったら、あらぬ誤解を受ける」

「誤解ですか」

 それならそれでいいではないか構うこたぁない、というリアッセの意思を感じ、さらには駆け付けてきた男たちが彼女を見る熱っぽい視線に、リードは顔はさらに苦いものへと変わっていった。

 昔から、分別はあるがありすぎておとなしいと言われてきた兄であった。それに対して妹のリアッセは、少々無茶無軌道なところはあるが、そのぐらいでちょうどいいと、特に好戦的な古参兵――正に駆け付けてきたこの連中のような――に評判がよかった。

 彼らは、はっきりそうとは言わぬが、

「リード様は頼りにならんなあ、それに比べて、やっぱりリアッセ様だな!」

 というのが態度から透けて見えており、気分は当然よくない。

 リードの個人的気分を抜きにしても、家中の統御という面からも好ましくない状況であった。

 リードが止めても、リアッセが旗を振ればそれに着いて行きかねない連中が一定数以上にいるということである。

 一縷の救いといえば、こんなでも一応は兄のことは彼女なりに愛しているであろうということである。たぶん。

 本当に嫌なタイミングで帰ってきたな、とリードは思った。

「そういえば……」

「なんです」

「ヘイムヴルス留学は、どうだ。ちゃんと学校に通って学問に励んでいるのだろうな」

 一時帰郷の予定ではあったが、帰郷してそのままこういう事態になってしまったので聞きそびれていた。

 そもそも、あんまりそっち方面に関心を示さず剣術やらなんやらに励んでいた妹である。なかなかの才能を見せてレベル10に認定されており、本人としてもこっちの道に行くのだと思い定めていたようだが、父親のリアントゥム男爵はそうは思わず、ちょっとは学問もせんかいとヘイムヴルスに送り込んだ。

「ちゃんとやってますよ!」

 リアッセは、ぐっと顔を近付けて、リードの目を射抜くような視線で見据えて断言した。

 以前に、お前は嘘をつく時に目をそらすからすぐにわかる、と言ったらそれから嘘をつく時は必要以上に人の目を見て必要以上に断言するようになったので、ああ嘘だな、学問とかろくにやってねえんだなとリードは思った。


「ったく、妹一人制御できんのか」

 アレンは、逃げ帰って来た使者の報告を聞いて吐き捨てた。

 お前んとこの妹とは違うんじゃとリードがいたら言いたかっただろうが、アレンにしてみれば、とんでもないことこそ起こったが、それでも翌日やり直しすれば済む話だと思っていたのに、交渉のやり直しを求めている妹をリードが抑えきれないという事態になっている。

 腹立たしいのは、リアッセが自分がやっている無茶を、アレンがやったことの模倣だとして開き直っている節があることだ。

 あちらとしては「調印前だった」という一点において同じだと言いたいのだろうが、ものには限度があろう。調印前は前でも、調印式は始まっていたのであり、そこでこちらが魔術印を施した文書を破り捨てるというのはそれ自体が非礼としか言いようがない。

 しかし、気になるのは、呼び寄せたのか勝手にやってきたのかは不明だが、城館に残っていたリアントゥム家の兵士が何人かこのエイロンに馳せ参じているということである。

「まさか……やる気か」

 既に述べた通り、アレンはどれほど強硬な態度をとってはいても、戦争までやるつもりはなかった。

 当然、打倒リアントゥムを叫んでの訓練なども含めた一連の態度は、脅しに過ぎない。

 だから、リアントゥム家の態度もそれだと思いたいところなのだが、リアッセを見てしまっているので、まさか、と思わざるを得ないのである。

 あれはアホである、とアレンとしては断定しているのだが、アホだけにやらかしかねないのではないかという恐怖があるのもまた事実。

「こちらも兵士を呼ぶべきか……いや、しかし」

 そんなことをすれば、緊張が高まるばかりだ。

 エイロンはリアントゥム家の領地であるから、そこへハウト家の兵を入れるのは、それは対抗上仕方なくなのだと言ったところで、無法な行いと非難される恐れもある。

「……とりあえず、大事をとってエイロンから離れるか……」

 やるならば、そちらの方が無難だろう。ハウト家の領内の最寄の街にでも引くのだ。

 アレンは悩んだ末に、とりあえず、いつでも発てるように準備を命じた。


「いやー、グッダグダになってきたなあ」

「ああ、うん、そうだね」

 その命令は当然ながら恵一たちのところにも来たが、なにしろ荷物など無いに等しいので出発しようと思えばすぐにできる。

「なんかもう、こうなってくると一度戦争してからまた話した方がいいんじゃねえのって思うな」

「いやいやいや」

 やはりどうしても、戦争そのものがいけないことだという意識が、いくらこの世界における「常識」に触れても拭い去れない恵一は、ケイトの一度戦争してみぃという意見には同意できかねる。

「事の顛末どうなるか興味あるから、最後まで見届けたいなあ」

 ケイトはタイムリミットがあるので、あんまり長引くようなら先に王都へ帰らねばならない。

「まあ、お嬢様をお守りすればいいんじゃけん、深く考えるな、なっ」

「いや、まあ、それはもうわかってはいるけど」

 恵一としても、事態が一転二転してのこのグダグダもいいとこな状態になって、いちいち深刻に考えてもしょうがないので自分の任務であるミレーナの護衛のみに集中しようという気持ちである。

 第一、自分にはどうにもできないことに関して深刻になっても疲れるだけだ、ということにようやく気付いた。

 で、戦争になったら……別に特段やることはないのである。

 以前ケイトが心配していた戦争に兵士として駆り出される事態は、絶対に御断りだという意思を固めておけばそれほどに恐れる必要は無いだろう。

 臨時雇いという立場はこういう時は有利だ。

 唯一不安なのは、ミレーナに頼まれた時だが、可能性は低いだろう。そもそも今回の護衛任務はそれを名目に恵一に報酬を払うのが目的であり、戦争という危険な場所へ命の恩人を送り出そうとはしないだろう。

 一時はそれを心配もしたが、やはりそういうことはしない人間だというのが、幾度となく接してみてよくわかった。

 護衛にしても、別に戦争になったらミレーナが前線に出ていくわけではない以上、やることはない。

 リアントゥム家は武を重んじているそうだ。

 それならば恵一の知る武士道やら騎士道やらと同じとは言えぬまでも、なんらかの「士道」のような思想は持っているだろう。

 敵の一族とはいえ、後方にいる非戦闘員で、ましてや女性であるミレーナを狙ってくるとは考えにくい。

「遊びましょー」

 んで、一転二転する事態にいちいち深刻に付き合うことの徒労についてはミレーナも思うところがあるようで、今日もにこやかに遊びに来た。

「それにしても今日は驚きました。いきなりビリビリって」

「ああ、そうですねえ」

 あんなもん驚くなというのが無理な話である。

「でも、あの方、凄いんですよ。ヘイムヴルスに留学してるんですから」

 ヘイムヴルスに留学しているだけで実際大して勉強してなくても箔になる、とは既述した通りだが、つまりミレーナみたいな人間がたくさんいるということである。

「お嬢様も、父上にお願いしてみたらどうです」

 ミレーナの口ぶりから、羨望を感じ取って恵一は言ってみた。彼女とて男爵令嬢、頭から無理という話でもないだろう。

「ううーん、大丈夫かなあ」

「リアントゥム家の娘も行っている、って言ったら?」

「おう、それはいいな。なにぃ、そんならうちの娘もヘイムヴルスに留学させるぞ、ってなるかもしれんね」

 ハウト男爵がどういう人間かよく知らないが、やはり一応は同格である領地が隣のリアントゥム男爵への対抗意識は多少なりともあるだろう。それを衝くのはなかなか有効に思える。

 遊んでいたら、同行していた――例のケイトと軽く癒着している召使が来た。

 最初の頃は、ミレーナが部屋にいるのに気付くと恐縮していたが、最近では慣れたものである。

「なんだか……また交渉をするみたいですよ」

 また、というか、正確に言うとまたまた交渉らしい。

 まあ、いきなり戦争にならないのはいいことだ。

 恵一は、そんな程度の考えでいたのだが、これに関してはアレンとしては苦渋の決断であった。

 戦争も辞さずという態度で押し通したと思ったら、先方に新たな要素が現れて、そいつがどうも本当に戦争になっても構わんと、本気で思っていかねないシロモンであった。

 そんなものが現れては、本当は戦争などする気が無いアレンとしてはどうしても強く出れなくなってしまう。

 つい先日の、リードの立場に立たされてしまったと言っていい。

 リアッセの高笑いを心中に聞きつつ、アレンは決断を下した。

 とにかく双方納得できるようにもう一度話し合おう、という使者を送ったのだ。


「あっはっはっはっは」

 で、リアッセは、それに接して高笑いしていた。

「うむ、それではアレン殿へ伝えてくれ」

 その高笑いを背後に聞きつつ、リードは例の公会堂で明日会うことを使者に承諾していた。

「ほーら、兄様ぁ」

 と、甘ったれたような勝ち誇ったような声で、リアッセはリードが座っている椅子の背もたれに寄りかかった。

「だから、戦争する気どころか、陛下や世に是非を問うような大事にする気すら無いんですよ、アレは」

 アレ呼ばわりされたアレンとしては、言いたいこともあるだろうが、リアッセの言ってることは概ねその通りだったりする。

「大体、調印するために名代を送ってきてるんですから、ハウト男爵だって最初の条件で納得してるんですよ」

「うむ、それはそうだ」

「アレが何を言っても、それで突っぱねればいいんです。なんだったら、無視して名代の、えーっと名前忘れたけど、あっちと交渉して調印しちゃえばいいんです」

「ミレーナ嬢だな。さすがにそれは無理だろう。彼女がアレン殿に逆らえるとは思えん」

 うちと違って、と心の中で付け加えつつ、リードは言った。

「まあ、とにかくあっちが本気じゃないとわかったからには恐れるものはなにもなし! 兄様も明日は強気で行ってくださいね」

「いや……しかし、それでもあまりにアレン殿を追い詰めると、彼が自暴自棄にならんとも限らん」

「その気は無かったけど、ヤケになって戦争を決断しかねない、と」

「うむ」

「その時は戦争ですよ。受けて立ってやりましょう」

「いや、しかし」

「戦争を恐れるリアントゥム家なんて、誰も恐れませんよ。我が家は武に寄って立つ家です。ナメられたらおしまいなんですから、兄様も次期当主としてしっかりしてください」

 妹に説教されてしまったが、彼女の言うことにやはり幾らかの理を認めざるを得ないとリードは思っていた。

 リアントゥム男爵家が、過去の悪名をも含む武名によって他家に恐れられ、王家にはその蛮勇紛いの強さを恃みにされているのも事実なのだ

 その点、リアッセの方がリアントゥム家の家風を体現しており、代々仕えているような者ほど、リード様よりリアッセ様の方が……と思ってしまうのも仕方ない面がある。

 リードにとっては悔しいことだが、男と女が逆ならばよかったという囁き声が嫌でも耳に入ってきてしまっている。

 リアッセについては、リアントゥム男爵十代の当主中でも特に豪勇でリアントゥムらしい当主と言われている三代目のリグートと、七代目のリゲルの風を受け継いでいるとの評判が高い。

 ちなみに、同僚をぶん殴ったのが三代目で、総司令官の命令を無視したのが七代目である。

 どっちも、お取り潰しの危機を招いたアレなのだが、それらを賞揚して語り継いでいるところは、もうそれこそリアントゥム男爵家の家風と言うしかない。

 だが、リアッセの戦争になっても構やしねえ、受けて立つぞ、という気迫がアレンに、一度手にした戦果を手放させるような決断を促したというのはわかっているので、リードとしてもあまり強くも言えないのである。

 結局、本気で戦争やってもいいと心から思っているリアッセに、リードもアレンも強く出れないのだ。

ちょっとこの話の最後の方が上手く書けずに、書き溜めなくなってきたんで次回から週1更新になりそうです。

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