戦い終わって
「ケーイチ!」
リーンの声がして、それが近付いてきた。
「ああ、リーン、大丈夫……じゃ、なさそうだね」
リーンの右腕が明らかに本来曲がらない方向に曲がっていた。魔王に横から殴られた時に負った怪我だろうが、腕を犠牲にしたおかげで内臓などに損傷を負わずに済んだのだろう。
いつのまにか、左手にどこかで拾ったらしい剣を持っているのはさすがだなあと思いつつ、ぱぁんとかなり強く背中を叩かれてびくりとした。
あー、肝心の魔王の首を他の人に獲られたからなあ――
アレンはそれでいいと言ってくれたが、リーンにしたらあれだけ危険をものともせずに負傷もして戦ったのだから、自分ではなくとも魔王の首は「隊長」の恵一に挙げて欲しかっただろう。
こりゃ、怒られるな、と覚悟した恵一の背中が意外にも今度は優しく叩かれた。
「よくやったわね。見てたわよ」
で、さらに意外なことにお褒めの言葉をいただいた。
どうも、リーンは勇敢に命を捨てて、真っ先に先陣切って戦うという行為そのものへは執着するが、それによる結果はけっこうどうでもいいらしい。
よく考えてみれば、結果を重視するならあんないつ殺されたって構やしねえ、という戦い方にはならない。
「うおーい」
遠くからまた自分を呼ぶ声がする。
ケイトとアンがてくてくと歩いてくる。
周囲を見回す――彼女たちがけっこうのほほんと歩いているということは、と推測してのことだったが、やはり思った通り、最大というか唯一の脅威である魔王が討たれて、既に数が激減していた魔王の部下たちはいよいよ抵抗らしい抵抗すら諦めて十人ばかりの捕虜を除いて皆殺しの憂き目に遭っていた。
「そうだ……あの子」
戦いは終わった、と実感して溜め息をついて緊張を払うと、魔王の盾にされるわ斬り付けられるわリーンに蹴られるわで散々な目に遭った少女のことを思い出した。
「あ……」
少女は、いた。
先程と寸分違わぬ姿勢で、おそらくは先程と全く同じ場所で丸くなっている。
「ん? なんだ、そいつ?」
ケイトが恵一の視線を追ってそれに気付き、首を傾げる。
「うちのもんじゃねえよな。こんな小さいのが魔王の手下なんか?」
リーンのように戦場に出て思い切り戦う少女が皆無ではないが、やはりそれはある程度の腕と度胸あってのことだ。
「いや、この子は、たぶん捕まってたんだろう」
恵一は、ケイトとアンに、彼女がどのような扱いを受けたのかを話して聞かせた。
「ふぅん、えらい災難だったな」
ケイトは単純に同情し、アンはどうでもよさげであった。
「まあ、でも、その状況で命があったらめっけもんだな。後は、家族が生きてたらいいんだが、そっちは望み薄か……」
恵一は、残念だけど、という気持ちをこめてケイトの言葉に頷いた。
「……で、いつまで丸まってんだ、こいつは。……死んでるんじゃないだろうな?」
微動だにしない少女に、ケイトが持ち前の気短さで言った。
「死んではいないと思うけど……怖い目にあったから」
「そうか……おーい、もう大丈夫だ。悪い奴らは大体殺して生きてるのも捕まえたから」
ケイトが声をかけ、無反応なので肩の辺りを叩くと、少女は震えてからさらに縮こまろうとした。と、言っても既に限界までちっさくなっているのでそれ以上は無理だが、無理でもなんでも、とにかく小さくなろうとした。
「あー、もう少しそっとしておいた方が……」
「つーても、顔とか怪我してんじゃんか、早く治癒してもらった方がいいぜ。治癒魔法使える人間は後方で大忙しだから、連れてってやんねえと」
「あー、そうかあ」
エリスを呼んでこようか、と考えていたのだが、そういうことならこちらから行かねばならない。
リーンも、けっこう平気な顔をしているが、右腕があからさまに骨折しているのだから早めに治療を受けた方がいいだろう。
「んー、どうしようか、この子」
「とにかく、運ぶしかあんめえ。ちっちゃくなってるから運びやすいだろ」
で、まあ、この一行の中でとなると、恵一が運ぶことになる。
うつ伏せになっているので、腹のところへ手を通して持ち上げようとしたところ、激しく抵抗された。
「ああー」
恵一は嘆息しつつ思い当たった。腹に手を回して持ち上げられるのは、魔王に抱えらていたのを想起させるのかもしれない。
「かまやしねえから、運んじまえよ」
「いや、そうは言うけどさ」
激しい抵抗――と言ったところで、はっきりいってたかが知れている。無視して持ち上げて運ぶ、というのは決して不可能ではないが……
「ケーイチ、鎧を脱げ」
突如、アンに言われて戸惑う。この戦いのために買って着込んでいた皮鎧、いまいち役に立ったのか立ってないのかよくわからないが、もう戦いは終わったのだからそんな窮屈なものは脱いでしまえ、という意味なのか。
唐突に思ったが、アンは自由度が高い子なので、けっこう唐突と思わざるを得ないことをよく言う子ではある。
「それに乗せて、運べばいい」
「おお、そうか。よし、ケーイチ、脱げ」
理解せぬままに鎧を脱ぐ。
ケイトが、それを地べたに置いた時に、恵一も理解した。要するにこの皮鎧を担架の代わりにしようということだ。
「おし、ちょっと上げろ」
「うん」
少女の腰を掴んで持ち上げる。ジタバタ暴れるが、少しだけの辛抱だ。
浮いている間にケイトが下に滑り込ませた皮鎧に少女を下ろす。もしかしたら逃げるのではと危惧していたが、手を離すと少女はそれで安心したのか、また動かなくなった。
これは都合がいいのでそのままにして、ケイトと二人で持ち上げて運んで行った。
「うわー、すごいな」
後方では、治癒を待つ列が出来ていた。
「軽傷の者は後にしろ」
アレンの傍らにいるのを見たことのある男が、そう言って歩いている。
これは軽傷なのかな、とリーンと少女を見る。腕の骨折も、顔に傷をつけられているのも恵一としてはけっこうな外傷なのであるが……
「うーん……」
こっち、重傷なんでお願いします、と言うのを躊躇われるぐらいには、一目で重傷とわかる者がゴロゴロしていた。
「おい、こっち先にやってくれ」
右手に、切断された左腕を持った兵士がやってくると、道が開いた。あのレベルの怪我じゃないと順番を飛ばして、というわけにはいかないようだ。
「まあ、しょうがねえだろ。リーン、大丈夫だろ」
「ん、まあね」
「で、こいつも……別に、すぐにどうこうってこともねえだろ」
目立つ外傷は、顔の傷ぐらいだ。リーンの蹴りによるダメージがどの程度のものかは見た目ではわからないがあからさまに息苦しそうにしている、ということもないので内臓には影響が無さそうである。
しょうがない、列の後ろで順番を待とうとその場に腰を下ろすと、少し離れたところで声が上がった。
穏やかな声音ではなく、明らかに抗議の意志のこもった声だったので何事かと視線が集まる。
どうも話を聞くに、治癒士を一人連れて行こうとしていて、それに順番待ちをしている連中が文句をつけているらしい。一人抜けたらその分だけ待つ時間が長くなるので当然だろう。
だが、治癒士を連れにきた兵士が何事か言うと、渋々とだが頷き、治癒士は連れて行かれてしまった。
治癒を必要とする人間はここにも山のようにいるのになぜ連れて行ってしまうんだ。近くにいた奴らはなんで引っ込んだのだと不審の声が上がった。
その状況を察して、治癒士を連れて行こうとしている兵士が、
「オーレン様が危ない状態なので、一番腕がいい治癒士をこちらから派遣することになったのだ。我慢してくれ」
と、呼び掛けた。
それを聞き、納得すると同時にざわつく。
そういえば、オーレンは魔王の一撃を喰らってその場で応急処置を受けたのちに搬送されていったが、戦闘中のこととてそのことは皆の頭からは消えていた。
危険な状態と知って、どうなるのかと声が上がる。
だが、ここにいるのは大半は臨時雇いの傭兵である。
「ってこたぁ、アレしちまったら、伯爵はどうなるんだ?」
「そりゃ、もう一人の息子ってのが後継ぐんだろう」
「もう一人って……例のビビって仇討ちに来なかった奴だろ?」
「そんなもん、伯爵家の連中が納得すんのかねえ」
「……これぁ、転がりよっちゃ血ぃ見るど」
もう、遠慮無しに楽しそうに会話に花を咲かせている。
「おおー、どうなんだろうなあ、それ」
「私だったら、そんな仇討ちに来なかった奴なんて認めないわよ」
「まあ、あたしでも、そうだろうなあ」
で、遠慮無しな立場は彼らと変わらないケイトとリーンも、好き勝手に話している。
「まあまあ、死ん……アレするって決まったわけじゃないんだから」
「そんなに、よくないか」
その少し前、苦り切った顔から苦り切った声を発したアレンは、報告者にさらに念を押してから、その返事に唸った。
オーレンの傷が相当に深く、内臓などの各器官に大きな損傷を与えており、治癒魔法を施しているものの安心できる状態には至っていない。
それにあたり、伯爵家の者がやってきてこちらに従軍している治癒士について尋ねてきた。
一番高レベルの者でレベル20だと教えると、そちらも怪我人が列をなして大変だろうが是非に、と貸与を懇願された。
同程度のレベルの者はあちらにもいるのだが、そのぐらいの者がもう一人いれば心強いと言う。
「こちらは、それほど逼迫してはいないな」
「はい」
アレンは念の為確認した。
実のところ、魔王とまともにぶつかってしまったこの部隊においては、怪我人も多いが即死した者も多く、そのことが逆に火急に治癒を必要とする者を少なくしていた。
「ならば、そのレベル20の治癒士を貸してやれ。……ただ、治癒士が多ければいいというものでもないとは思うが……」
治癒魔法とて、万能ではない。
術者の魔力はもちろん体力による制限もある。
しかし、複数の術者が同時に、或いは入れ替わり立ち替わり施術することによってそれらはカバーすることができる。
だが、そのように工夫をこらしても、それらは術者の側のことであって、最後にものを言うのは、結局は受け手――患者の体力、そして気力だったりする。
それにしても、飛び抜けたレベルの者がいないのならば、レベル20クラスの治癒士が一人多いのは確かに心強いことには違いない。
逼迫していない、ということで迷わず承諾したが、少々逼迫していたとしてもオーレンの状態がそれほど悪いのならば貸すことになっただろう。
「オーレン殿が助からなかったら……面倒なことになるな」
小さく、口の中にだけ響くような小さな声でアレンは言った。
無責任な傭兵どもが、無責任に放言していたことには、無責任というのを第三者的と言い換えてもいいような真実が含まれている。
オーレンが死んだら、当然唯一人残っている伯爵の息子であるウィレスが伯爵を継ぐことになるだろうが、果たしてそれを人々が、特にオーレンとともに命を賭けてこの弔い合戦に挑んだ兵士たちが受け容れるであろうか。
しばらくすると、治癒士を連れ出してあちらに届けた者が戻ってきた。
「どうだった」
オーレンの容態はもちろん、あちらの兵士たちの様子なども併せて尋ねる。
「はっ、戦勝気分などとは程遠く、オーレン様の御快癒を祈っている者が多数跪いておりました」
「ふむ」
思った通りの光景である。
魔王の首は治療を受けるオーレンの枕頭に持ち込まれ、周囲の人々がこの通り御父上の仇は我らの手で討ち取りましたと声を励まして告げた。
このことが、オーレンの気力を奮い起こす一助ともなれば、という気持ちであったが、オーレンは嬉しそうに頷いたものの、すぐに目を開いているのが辛くなったのか瞼を下ろしたと言う。
「それと、ガスパー殿が……」
治癒士を送り届け、戻ろうとするとガスパーが声をかけてきた。
あちらでも、賊を何人か生け捕りにして尋問しているが、そちらにもそのような者がいたら絞り上げたいからよこして欲しい、というのである。
「ほう、そうか」
どうも話を聞くに、あちらは仕方が無いことかもしれぬとは言え、全軍こぞってオーレンの容態を見守っているばかりで組織として機能していないとしか思えぬのだが、その中にあってガスパーはやるべきことを着々とこなしているようだ。
やはり、できる人物だな――
伯爵の縁者ながら、わけあって家を出て伯爵などという高位貴族に連なる者とは思えぬような苦労を積んできた人物らしいが、それが今、活きている。
周囲の者にも、さぞや頼りにされているであろう。
「ん? そうか、うん、そうだな……」
アレンは呟きつつ、報告者が命令を待っているのに気付いて、こちらで確保している捕虜を引き渡すことを命じた。
報告者がその命令を携えて行くのを見送りながら、アレンは自分の思い付いたことに改めて思考を巡らせた。
ガスパー殿、伯爵の縁者なんだったな、そう言えば――
いきなりオーレンの側近くに仕えていることから、それほど遠い縁者ではないであろうと推測はつくが、どの程度の近親者なのか。
――もしかして、伯爵となってもよいぐらいに血縁が近いのではないか。
アレンの関心はそこである。
もちろん、通常であれば優先順位は直系男子であるが、そもそもそれを言うならばオーレンではなく長子のウィレスで決まりだったのだ。
それがウィレスは凡庸であり、今は亡き伯爵に迷いを生じさせ、その結果としてオーレンの台頭をもたらした。
その時点でも、決して不利ではなかったのに、伯爵の死に際して当然やるべき仇討ちを腰砕けになる形で断念したために、勇敢にそれをなそうとしたオーレンに取って代わられた。
それでも、オーレンが死ねば、唯一の選択肢ということになり、不平不満はあれどもこれを担がねばヴェスカウ伯爵家が存続しない。いくらウィレスに不満を持つ者でも、自分たちの寄って立つべき伯爵家が滅びるのは望むまい。
そこに、もう一人、本来の継承順位ではウィレスに劣ると言っても、それほどに遠縁というわけでもなく、さらにはその力量が認められている人物がいたら……
どうしてもウィレスを認めたくない、という人々にしたら喜んでこれを推戴したいと思うだろう。
これしか無いというのならばウィレス様を認めてもよい、という者でも別の選択肢があるのならばそちらがよい、と雪崩を打つ可能性もある。
「ようやくか」
並び始めて、かなりの時間が経過した後に、恵一たちの番となった。恵一にはエリスがついてくれたが、
「……どこを治せばよいのですか?」
と、聞かれてしまった。見た目では、恵一は怪我をしているようには見えない。
ただ、今はややおさまったものの、戦闘中から主に腕の辺りが痛いのだと訴えた。
「まあ、全体的にやっておきますが……ただの疲労ではないですかね」
しょうがねえからやってやるけど怪我じゃねえなら寝てろよと言わんばかりだが、しょうがなく治癒してくれた。
申し訳なさそうにそれを受けていた恵一だが、もしかしたらエリスの言う通りかもしれないけど、不安でしょうがないので治癒魔法かけといてもらいたいのが本音である。
「ケーイチの後でいいから、こっちも頼むぜ」
と、ケイトとアンが皮鎧に乗せた少女を運んできた。さっきから微動だにもしないのでいよいよ生物ではなく置物みたいに見えるが、よく見ると息はしている。
「……なんですか、これは」
「いやぁ、実は……」
ことの経緯を掻い摘んで話す。
「ふむ、そういうことですか」
同情に値する話なのだが、さすがと言っていいのかそういう素振りは一切見せずにエリスは淡々と治癒を始める。
「顔の傷と、他には?」
「あー、腹んとこ。見た目はそうでもないけど、もしかしたらけっこう痛いかもしれないから」
「ふむ……この子は、喋れないのですか?」
思い付いたように、エリスが言う。
「いや、そういうわけじゃないんだけど、この通り、全く話そうとしないから」
「自分でどこが痛いって言ってもらった方がいいのですが」
エリスは言いつつ、顔の傷を治そうとして、少し困っているようであった。
腹部にしてもそうだが、身体の前面を治療するのに、この丸まった格好はあまりよくない姿勢である。
「おい、顔上げろ」
見かねたケイトが少女の頭を軽く叩いて言うが、全く動かない。どうも完全に心を閉ざしているようである。
「しょうがねえ奴だなあ。痛いぞ」
止むなく、ケイトは前髪を掴んで引っ張って無理矢理に顔を上げさせた。
悲鳴を上げて、必死に元に戻ろうとするが、見た目通りに非力らしく、それほど力があるわけではないケイトにも抵抗できない。
少女の傷は、それほど深いものではなく、すぐに塞がった。
「よし、塞がったな。ほら、じっとしてりゃすぐ済むんだよ。大体おめえ、治療してやるって言ってんだからおとなしくしてろよな」
ケイトがぶつくさ言いながら、次は腹だと丸まってる少女を強引に反らせようとする。
「おい、ケーイチも手伝えよ」
「ああ、うん」
少女の意志などお構いなしのケイトのやり方だが、それ以外に手が無さそうなので、仕方なく恵一も手を貸す。
足を恵一が押さえて、ケイトが背中に膝をあてて両手で頭を抱えて後ろに引っ張るという、見ようによってはただの拷問であるが、これは治療行為であると自分に言い聞かせ、小さく細い足から伝わってくる微弱な抵抗を押さえ付けた。
「まあ、こんなものでしょう」
エリスが、息を整えながら言った。
見た目でわからない内部の怪我の状態の把握は、自己申告によるしかないのだが、少女はとにかく黙りこくっているので、エリスが疲れるまでやってもらって終わりにした。
「ほら、楽になっただろう。あたしらはお前のためにやってんだからな」
と、ケイトは言うのだが、少女は拘束が無くなると再び丸まってしまい、とりつくしまもない。
「ったく、なんとなく連れてきちゃったけど、こいつどうするよ」
ケイトに改めて言われると、恵一もちと困る。
家族が生きている望みは薄いが、それでももしかしたらということもある。一度調べてみるべきだろうが、どこに住んでいたのかとか家族の名前とかの情報が無ければどうしようもない。
「まあ、今は精神的にショックを受けているのでしょう。しばらく放っておくしかないのでは?」
エリスの意見が正しかろうが、立ち直るまで自分たちで面倒見るのかなあと思う。
「アレンさんに言った方がいいのかなあ」
と、言ったところで兵士が来た。
「おい、お前ら……」
と、言ったところで小さくなってる少女に気付き、
「魔王に捕まって盾にされてた子供をお前らが運んでいたと聞いたのだが、これがそうなのか?」
と、言った。
「はい、そうですけど」
「やはりそうか」
頷いた兵士に、この子をどうするのかと尋ねると、思わぬ答えが返ってきた。
複数の捕虜に尋問したところ、山奥などに根城を構えて盗賊山賊稼業を営んでいる彼らのところに魔王と名乗る男が現れて部下になれと言い、拒めばむごたらしく殺されるために止むなく従っていたのだと言う。
もちろん、止むなくというのは言い訳だろうと決め付けていたが、その話の中で、魔王は一人ではなく老人と少女を伴っていて、どうもその二人が魔王の元からの部下らしい、ということになった。
「え? それってつまり……」
信じられぬ、といった顔を、少女に向けた。
この子が、魔王の部下――
やはり、にわかに信じられることではなかった。




