異変
夜叉襲撃のサイレンが鳴り、白木と花屑は得物を掴み転送器のある中央とうへ走る。途中、白木は高速で小銭をポケットからだし売店のレジにおくそのまま一本エナジードリンクを掴み走り抜けていった。店の店主がまたかといった感じで小銭を勘定した。 「おい白木ー!100円足りねーぞ!」 「ごめん、帰ってきたら必ず渡す!」 そんな白木と店主のやり取りを見て花屑が苦笑いで話かけた。 「あなた、毎回こうなの?子供みたい。」 「いいんだよ、ちゃんと返すんだから。」 白木がそう抗議する。小さな会話を挟みながら走り、中央棟へと来た。そこには白木たち人鬼の管理を行うことで顔見知りになった草薙修がまっていた。 「草薙さん、こんちは。ちょっと夜叉ぶっ飛ばして来ます!」 白木はそう言い、花屑は小さく会釈した。 「ハハハ、白木は威勢が言いな。二人とも今日は一緒に出撃か。そう言えば、先行した軍隊と完全んに通信が途絶えたそうだ、気を付けてな。」 草薙はそう言い転送器に行くよう促した。白木が最初に淡い光に飛び込む、続いて花屑も飛び込んだ。余談だがこの転送器、夜叉との早急な交戦を目的に作られたが通常の人には使用することはできない。体への負担が大きすぎて、人では使うだけで命の危機に瀕してしまうからである。 「着いた、夜叉は・・・」 「入った情報ではゲート南西に7体。軍隊の人たちが心配だは、急ぎましょう。」 一方、体の耐久性が人体の五倍以上にはね上がっている人鬼には何の負荷もなく転送されるのであった。着いてから南西に15分ほど走り続けるとあるpものが転がっているのに気づいた。
「これは、薬莢?このあたりで戦闘があったみたいだな。」
「ええ、だけどどちらの死体もないのは、どいうことかしら?」
確かに不自然だった。夜叉と人の戦闘能力では残念ながら夜叉が勝っている、よって先行部隊に死人が出るのはごく自然だ、そして夜叉も無敵ではなく一体の死体もないのはおかしかった。白木たちはあたりを見回してみた。大量の薬莢、よく見れば血痕も残っている。
「一度、本部に連絡を入れてみましょう、多分所長か、草薙さんが出ると思う。」
白木は頷き、自分は偵察をすることにした。しかし、一向に何も見つからず困惑しつつあった。しばらくして、花屑が来てこう言った。
「白木、所長からよ。私たちは待機でいいみたい。加勢に新人の人鬼をよこすって。あと売店の店主さんが早く帰って100円返せって。」
白木は顔をひきつらせながら返す。
「わかった、てかおっさん今回はしぶといな。」
そんな会話で和やかな空気になったが、急に空気が一変しはりつめ、二人は臨戦態勢をとった。これは人鬼の能力の1つで半径20m以内に夜叉が近づくと意識が集中するのだった。しかし二人は違和感を感じていた。
「うっ!?何だ?体が熱い!」
「人鬼細胞の異常!?いいや数時間前の検査では完全に安定してた!なぜ!?」
二人は戸惑ったが、これがある感情だと気づく。それは敵意、外敵を叩き潰し自分をいかそうとする生物の持つ防衛本能そしてそれは、白木と花屑の体のなかに埋め込まれた人鬼細胞が発しているのだった。そして二人の視線の先にある生物が立っていた。漆黒の皮膚、額の角、鞭のような尾、そして目立つのは皮膚よりなお黒い翼を持った夜叉のなかでもなお異形な存在だった。二人は確信する、こいつは普通じゃないそして気づくここに何の死体もない理由が。
「こいつ、夜叉なのか?花屑、夜叉の特殊器官はなんだっけ。」
「人と違うのは角だけね、尻尾も翼も見たことないわ。それより気付いたかしら?あいつの口人の血と夜叉の血どっちもついてる。」
「ああ、気付いた。つまりこいつは、人も夜叉も見境なく喰った。ただ俺は1つ許せない。俺の仲間を全員喰ったこと、俺は人鬼細胞のこの敵意に従ってあいつを殺す。」
花屑はなにも言わなかったが考えは一緒だった。目を細目、スピアを握り直す。白木も太刀に力をこめる。数秒の時間、人鬼二人と夜叉一匹はにらみあう。
「はぁぁぁぁぁッッ!」
最初に動いたのは白木だった、夜叉の顔面目掛けて刀身をふりおろす。しかし寸前のところで夜叉が横にスライドし刀は空を切る。夜叉は体勢を戻し拳で力任せに白木をぶん殴る。白木も刀身で直撃こそ免れたが思い切り吹き飛んだ。
「ぬおっ!ヤベッッー!」
追撃しようと身構えた夜叉の後ろにすかさず花屑が回り込む。
「フッッッ!」
全力でスピアを突きだし背後から心臓を突く。しかし悟られ、尻尾でさばかれる。そのまま尻尾で攻撃してくるがスピアで受け止めず、器用にかわす。先程の白木が吹き飛ぶのを見てパワーで負けると確信していた。夜叉は振り向き声をあげながら花屑に飛びかかる。避けようと身構えたが、予想を遥かに上回るスピードで突っ込まれダメージを受けた。
「グラァァァァァァッッッッ!」
「速い!う!ガハッ!?」
更に花屑を殴りつけようとした夜叉に立ち上がった白木が斬りかかる。
「野郎こら!」
しかし後ろに目でもあるよに、夜叉は裏拳を繰り出し、それが顔を直撃した。
「うっ!」
嫌な音をたて、白木が宙を舞う。そして数秒後地面に叩きつけられる。なんとか立ち上がり、花屑も一緒に距離を取る。
「グルルルゥッ!」
夜叉は獣のように猛り唸っている。
「くっそ、あり得ねぇほど強い。頭ガンガンするぜ。花屑は突進くらってたが大丈夫か?」
「ええ、まぁなんとかね。でもこれは不味いはねぇ。」
圧倒的戦力差で窮地に立たされた二人、このまま二人とも食われてしまう。しかし彼らの中の敵意が戦いに駆り立てる。
「仕方ないリミットはずすぞ!」
白木が吠えた