御神楽圭一の出陣
注 これは作者がふと思いつき、そのノリで執筆した代物です。
なのでメタ発言満載であり、基本的に御神楽圭一のことしか書かれていませんが、どうかご寛容下さい。
夕日が僕のいる教室を茜色に照らす。
前方には黒板に教壇があり、中央には40組弱の机と椅子、後方には緑色の掲示板があって何か連絡事項が書き留められてあった。
「まずは自己紹介をしておこうか」
前方のドア付近に立っている僕はこの教室にいる2人に向かって口火を切る。
「僕の名は御神楽圭一、『夢宮学園』の主人公でありそして『魔法学校の中の刀使い』の主人公だよ」
僕は17歳にも関わらず、身長は中学生ほどしかなく顔も女子よりなのでズボンを着ていなければほとんどの確率で女子と間違われる難儀な容姿だ。
「ほう、なら俺もしておこうか」
後方の窓際の机に座っている者がそう声を出す。
ニヒルな笑みを浮かべる彼は自分に絶対の自信を持っているのだろう。その仕草や言動の1つ1つが迷い様子から周りをぐいぐい引っ張っていくタイプなのだろうと容易に予想が付いた。
「俺の名は火桜優喜。『ゲームの世界で第二の人生!?』の主人公だ」
「ずいぶんと傲岸不遜なんだね」
僕は火桜の態度を評すると彼は笑いながら。
「まあ、俺は王だったからな。これぐらい自信に満ち溢れていなきゃ務まらんさ」
そう言ってカカカと笑う彼はその端麗な容姿から結構女子にモテルのだろうなと考えた。
「じゃあ、次は俺かな」
続いて中央付近の椅子に座っている彼が名乗り上げる。
火桜が火と例えるならば彼は空気かな。
本人はパッとしていないが、彼と接していると何か自分の内側からやる気というか希望が膨れ上がってくる印象を受けるのだ。
「俺は高原幸一、『LUCK -9999』の主人公だよ」
柔らかい物腰からどことなく紳士を想像させ、その澄み切った瞳からは深い悲しみが見て取れた。
「うん、少し嫌なことがあってね。今はもう大丈夫だけど。やっぱり60年という年月は大きいな」
それは途方も無い時間だ。
「まあ、ここは特別な空間だから多少の融通は利く」
僕達は全員17歳の姿形をしているのに、その中身は全くの別物だからそれも納得か。
僕と火桜と高原。
物語の主人公が3人揃ったところで何をするかというと。
「確か御神楽だっけ?」
火桜の問いに僕は頷く。
「僕の名は御神楽圭一。『夢宮学園』では最高権力者の生徒会長で、希少な能力と類まれな身体能力を持つ最強だったけど、『魔法学校の中の刀使い』では相当弱くなると思う」
「ん? どういうことだ?」
火桜が尋ねて聞いてくるが僕は首を振る。
「僕も答えたいところだけど、まだ作者がどれだけ弱くするか構想中だから話せないよ」
よく分からないが、まだ決まっていないことを話すのは“禁止事項”に抵触するらしい。
「ふーん、まあ良いや」
幸いにも火桜は納得してくれたのでここで引き下がってくれる。
「『夢宮学園』ってなんだったんだ?」
火桜の問いかけに俺は1つ頷いて。
「『夢宮学園』ではそれぞれの校舎の最終決定権を生徒会長が持っている。極論するならば気に入らない生徒や先生がいたならば校舎から追い出すことも可能だったわけだ」
「何だそりゃ!? 無茶苦茶過ぎないか?」
火桜の驚きも最もだろう。一般的に考えてただの高校生がそんな権利を持つことなどありえないが。
「『夢宮学園』においては生徒や教師全員がクローンなのでいくらでも代えが効くんだよ」
夢宮学園は島1つ丸ごとが学園の敷地内で、その島のあちこちに校舎が建てられているという図だ。
しかも僕は過去の英雄という設定だから潜在的要素は語るまでも無い。
生まれた時から生徒会長になるべく教養を叩きこまれていた。
「そして卒業と同時に島の外へ送られて各方面でその力を振るうという方式さ」
作者は卒業後、外で何をするまで決めていなかったからこれ以上先は分からないけどね。
「はあ~……何かぶっ飛んでんな」
火桜の呆れとも感嘆ともつかない呟きに僕は苦笑しながら。
「まあ、処女作だったからね。若気の至りということで納得してほしいな」
僕はそう言って両手を合わせると火桜は「分かったよ」と引き下がってくれた。
続いて高原。
「希少な能力って何だったの?」
「うーん、そうだなあ。見てくれた方が早いかな」
僕はそう言って右手を突き出して何かを念じると、掌の上に黒い球体が出現した。
「条件――全ての作用が3倍となる」
僕はそう念じながらその黒球を握りつぶし、近くの机をちょっと叩く。
そんなに強い力で叩いたわけではないのに、机は鉄球をぶつけられたかの様に凹んでしまった。
驚いて目を見開く2人に対して今の事象を説明する。
「神の領域――物理法則を自在に操作出来る能力だね」
世の中には慣性の法則や質量保存の法則など、絶対とされる物理法則があるのだけど、僕の能力はそれを無視したりあるいは増大したりすることが出来た。
「……それは反則だね」
高原が呆然気味に洩らすのも分かる。
相手を不利な状況へと強制的に追い込めるこの力はまさしくチートそのものだろう。
「それに加えて剣術も免許皆伝、これじゃあ弱体化されても仕方ないよね」
強大な権力に最強の力――あまりに強すぎるのでこの設定のまま物語に放り込むと確実に破綻してしまうから相当弱体化されると思う。
「けど、まあ何とかなると思う」
僕はあっけらかんと述べると高原は「楽天家だね」と言われたので、僕はその理由を説明する。
「僕は作者が初めて生み出したキャラクター、それは良い?」
僕の問いかけに頷く2人。
「一応今、挙げているのは『夢宮学園』だけだけど、実は文字数2~3万字程度の物語が3本、そして未完なのも合わせると8本近くの物語に僕が出演しているんだよね」
物語によっては観測者であったり、師匠であったり強大な敵役であったり、果ては女であったりと立場や役割も性別も異なっているがそれでも僕は登場している。
「だから色々な御神楽圭一がいるというわけ」
「……じゃあ今の君は何者?」
高原の問いかけに僕は笑顔で。
「僕は御神楽圭一、それ以上でもそれ以下でもないよ」
煙に巻いているようだけど、これは事実。
僕はどんな立場になっても、色々な設定を付けられても僕という本質は変わることはない。
キーンコーンカーンコーン、コーンカーンキーンコーン。
と、ちょうど良いタイミングでチャイムが鳴る。
「そろそろかな」
僕は立て掛けてあった刀を腰に携えながらそう呟く。
僕としてはもっと2人と話しておきたいけれど、これ以上は時間が許されない。
「――行くのか?」
火桜の問いに僕は頷く。
「うん、どうやら僕の出番みたいだしね」
僕の出現は大学の創作部の短編小説で。初陣は約1年半前の『ライトノベル研究作法』の短編部門で。そしてこの『小説家になろう』サイトでは4ヵ月半前かな。
「いうなれば僕は君達の先輩にあたるわけ」
御神楽圭一というキャラクターは火桜優喜よりも高原幸一よりも先に生まれていた。
「まあ、それもあって作者は新キャラを作るより、慣れ親しんだ僕を選んだのだと思う」
応募までもう期間が無いのだからあやふやな設定で挑んで土壇場で破綻するより、キャラを掴めている僕を使った方が無難だし。
「そういえば君達はどうするの?」
僕は未だに教室に残っている2人に問いかけると、高原は微笑みながら。
「俺達はここで待っているよ」
リラックスした様子で答える。
「俺達の物語はすでに完結している。一応リニューアルしようという動きがあるが、それ以外ではもうここから出ることはないだろうな」
火桜は後ろに腕を組みながらそんなことを言う。
「まあ、寂しいと言えば寂しいがそれも仕方ないと思うね。何せ無理に引っ張り出されて破綻されたら目も当てられないし」
高原の言葉に火桜が乗っかって。
「そうそう、俺なんて一度無かったことにされたもんな」
「俺も火桜と規模が違うとはいえ無かったことにされたよ。俺の初期設定では引きこもりの30代だったわけだし」
ハハハ、と2人は懐かしい過去を思い出すかの様に屈託なく笑った。
「それじゃあ、行ってくる」
僕が最後にそう言うと。
「おう、行ってこい」
「頑張れ」
火桜と高原から激励を貰った僕は躊躇いなく教室を出ることが出来た。
行き先は『魔法学校の中の刀使い』
どんなストーリーなのか、設定なのか、世界観なのか楽しみにしている僕がそこにいた。
これはあくまでこの短編の中でのノリです。
本編においては御神楽の性格が変化していることも十分あり得ます。