桜の精
桜が咲いた。
街の景色を染め上げる美しい桜が。
清々しい空色に鮮やかに映える桜色。
君が笑顔をこぼすところを想像できる。
でも私はこの桜が少し憎い。
君が見るのはこの桜ばかり。
隣の私はどこかさみしい。
だから軽く拗ねてみる。
どうしたのと問う君に
妬いたと正直に言えば
君は何に?と首を傾げる。
桜ばかり見る君に、と正直に言えば
文句は桜の精に言ってよ、と笑うから
君を見つめ、
頬に触れ、
少し髪を梳いた。
ほら、桜の精。
そう言うと、君はたちまち
桜の精から薔薇の精になってしまった。