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人には効かない回復スキルで少女を治したら居着いた

作者: おっちゃんSIN
掲載日:2026/06/05

※初投稿作品です。

読みづらい部分などありましたらご容赦ください。

「役立たずの回復持ち」


その言葉には慣れていた。慣れたはずだった。だが聞くたびに、少しだけ胸の奥が痛んだ。


主人公のスキルは【回復】。しかし人間には効かない。探索者としては外れ能力だった。


身寄りはない。頼れるものもない。この世界で生き残るには、力を伸ばすしかなかった。


だから彼はダンジョンに潜り続けていた。スキルを“使えるもの”にするために。



ダンジョン帰りの途中、空気が変わった。


街の上空に黒いひびが走る。


《ダンジョン暴走発生》


警報が鳴り、人々が逃げ惑う。


「またか……」


主人公は足を止めなかった。どうせ自分にできることは少ない。それでも、行くしかなかった。



現場は崩れていた。


空間が軋み、視界が揺れる。


その中心に少女がいた。


瓦礫の中で立ち尽くしている。その輪郭だけがぼやけて曖昧で、まるで世界から切り取られたように滲んでいた。


だが誰も、その少女に気付いていない。存在していないかのように、誰も視線を向けなかった。


(……なんで俺だけ見えてるんだ)


少女は明らかに正常ではなかった。放っておけば消えてしまいそうな危うさ。


考えるより先に、手が動いていた。


「……ダメ元だ」


「回復」


光が走る。


一瞬だけ、少女の輪郭が現実に繋ぎ止められる。同時に空間の歪みがわずかに収まった。


(……効いた?)



少女は主人公を見ていた。


泣きそうで、それでいて安心した顔。


「……ありがとう」


その声を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられる。


助けたはずなのに、なぜか救われた気がした。


次の瞬間、少女の姿が薄れていく。



夜、街は何事もなかったように戻っていた。


(夢じゃない、よな……)


手の中に違和感だけが残っている。



玄関を開ける。


「……は?」


少女がいた。当然のように。


「さっきはありがとう」


「なんでここにいるんだ……」



「どうやって入った?」


「気づいたらここにいた」


「いや、そういう問題じゃない」


少女は少し目を伏せる。


「ごめんなさい。でも、あなたにしか気付いてもらえなかったから」


「俺にしか?」


「うん」


「今まで誰も気付いてくれなかった」


「話しかけても反応されない。触れても、存在しないみたいだった」



「私は人間じゃない」


「ダンジョンの核みたいなもの」


その言葉で、ようやく理解が追いつき始める。


人ではない“何か”。


「私は壊されかけていた」


「探索者たちに」


「でも悪意があったわけじゃない」


「気づかないまま、触れていた」


「少しずつ、削れていった」



(無自覚で、壊していた……?)



「壊されかけていた?」


思わず口に出ていた。


少女は頷く。


「うん」



「誰に……?」


「分からない」


「でも、ずっと“外側”から削られていた」



「それで、俺の回復で止まったのか?」


「止まったというより……繋ぎ直された感じ」


少女は自分の胸に手を当てる。


「まだ完全じゃないけど」



スマホが鳴る。


《大規模ダンジョン暴走発生》


「まだ……終わってないのかよ」


少女の体がわずかに揺らぐ。


「ここだけじゃない」


「同じように、歪んでる場所がある」



「私だけじゃ足りない」


少女はまっすぐに見た。


「でも、あなたなら直せるかもしれない」



「……面倒なことになったな」



夜。


「おかえり」


「……まだいるのか」


「迷惑?」


「いや」


「いてもいい」



少女は窓の外を見ていた。その先に、まだ見えない歪みがある気がした。



人には効かない回復スキル。


それは、世界を修復する力だった。


……そして少女は、そこにいた。

※ここまでお読みいただきありがとうございました。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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