天使とハンバーガーと優しさと
息抜きに短編を書いてみました。
「う~~ん! おいしいっ!!」
目の前の少年は今日も満面の笑みでハンバーガーを頬張る。
といっても普通の少年ではない。
少年の頭上には、どういう原理で浮いているのかわからない、優しく光る輪がある。
さらに背中には、高級布団のような触り心地が特徴の真っ白な翼が生えている。
片方の翼の一部分だけ黒く染まっている所に目が行く。
まるで、というより正真正銘、目の前の少年は天使なのだ
「やっぱりねー、ピクルスの存在がハンバーガーのおいしさを際立たせているよね」
おれはいつもピクルスを抜いて食べている派なので、その意見には賛同できなかった。
「えぇ~!?ピクルスの食感が飽きを防ぐし、酸味がお肉の存在感を引き立たせるんじゃないか!?」
目の前の天使がハンバーガー論について語りだした。
「ほんの少し淀みがあるほうが価値って上がるもんだと思うんだよね!」
天使はそのまま話を続けた。
「優しさだってそう、何をすれば人が嫌がるのか、何をすれば悲しませるのかがわかっているからこそ、人は誰よりも優しくなれる」
「光だって暗い箇所という比較対象があるからこそ、光の強さがよりよくわかるんじゃないか」
「善だけじゃなく悪も、陽だけじゃなく陰もそう。両方兼ね備えるからこそ、人は高貴になれるのさ」
「だから僕はこの世界に堕ちたのさ!」
言いたいことを言い終えたのか、天使はそのまま口いっぱいにハンバーガーを頬張り、炭酸飲料で流し込んだ。
そういうもんかね…?
おれはいつもどかしていたピクルスをそのままにして、ハンバーガーにかぶりついた。