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第6話 決着and逃走
やっと終わったか。
「ふぅ……お疲れ様!ありがとう、もうダメかと思ったよ」
「それほどでもない。お前こそ見事な太刀筋だった」
言葉を一言交わし、勇者は人質の子の方へ向かう。
「よく頑張ったね もう大丈夫だよ」
「うっ、うぇ、うわ、うわぁーん」
人質の子どもは緊張状態が解けたからか、先程まで死ぬか生きるかの瀬戸際だった事を改めて自覚したのか、泣き出してしまった。
「よしよし……怖かったよね」
そう言って勇者は人質の子を優しく抱きしめると俺に、
「僕はこの子を親御さんの所に送ってくるよ。君には後日ちゃんとお礼をしたいんだけど、名前を教えてくれないかい?」
と聞いてきた。
「あー……いや、大丈夫だ 気にしないでくれ」
正直もうこれ以上関わりたくない。別に、勇者が嫌いな訳じゃない。むしろこのまま人柄を知っていくと、コイツを好きになってしまいそうな自分が怖い。
「え?そんな……キミは命の恩人だ!無下には出来ないよ!」
「じゃあ、今朝の恩と相殺って形にしてくれ」
そう言って俺は足早に現場を去った。