第3話 怪奇!コウモリ男
家に帰ってきたのは良いものの、今日はギルドに行く気起きないな………散歩にでも行くか…。今日は騒がしい所は避けて、人気の少ない方へと行く散歩コースにしよう。
あと一応、擬態モンスターが居るらしいし警戒はしておこう。
しばらく散歩で気分をリフレッシュさせていたが、どうやら俺はまたミスを犯したようだ。端的に言うと、勇者が居た。
これなら家で大人しくしておくべきだったかな…。
こちらの存在に気付かれる前に物陰に隠れたが……どうしたものか…………。
どうやら勇者は誰かと一緒に居るらしい。チラッとしか見えなかったが どうやら男のようだ。幼なじみのカフカでは無さそうで良かった。
もし今、彼女とハチ合わせても何と言ったら良いのか分からない。
ん……?どうやら向こうが会話を始めたようだ。
「よく気づいたものだ、完璧に擬態してたんだがな」
擬態……どうやら今朝言ってたモンスター絡みの様だ。
「そんなものでは、この神眼は誤魔化せないよ」
噂では、勇者は特殊な目を持っていると、聞いたことがあったが、モンスターの擬態を見破るほどなのか…どうやら俺の忠告は余計なお世話だった様だ。
「神眼……神からの贈り物か……全く妬ましいィゼェ………オマエラ、ニンゲンハ、カミニ、アイサレテテ……!」
そう言った男は、人間の姿からみるみるうちに変わってゆく。どうやら擬態を解いたようだ。
擬態を解いたその姿は、妙に上半身が筋肉質で肌は濃紺、背中には羽の生えたコウモリと人間を混ぜ合わせたような化け物だ。
「さて…悪いけど………お命頂戴するよ!」
勇者は腰の剣を抜くと、即座にコウモリ男に斬り掛かる。
速さと威力の両立する見事な剣技で、コウモリ男は防戦一方の様子だ。
「グッ……コシャクナ、マネヲ」
コウモリ男は真正面からでは分が悪いと踏んだのか、空へと舞い上がった。
「逃げる気かい?でも生憎、そこも僕の間合いだよ」
「ナニ………!?」
「トドメだ!《エアスラッシュ》」
ーービュン
風を斬る様な音と共にコウモリ男の体が両断される。
「グァ ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
圧倒的だったな 。
コウモリ男も見る限りA級の冒険者のパーティで、やっと戦えるぐらいの強さはありそうだったが、流石に勇者の称号を授かってるだけあり強さは本物だ。
いや……でも少し違和感があるな………。
コウモリ男は強い部類のモンスターではあるが、たった一体でこの王都に潜入しているなんて、どうも楽観的な気がする。
もし、他の個体が居るなら…………
まずい、あいつもう警戒を解いてやがる!
「油断するな!そいつが一体とは限らない!」
勇者に向かいそう警告を叫ぶ。
「!?………なるほど!」
ブォン ブォン………
「クソガ………オマエモ、ナカマヲ、ツレテ、イタトハナ……」
上空から大きな羽の音とイラつきを帯びた声が聞こえる。先程のコウモリ男と同種族だと思われるモンスターが三体。しかも、その中でも恐らくリーダー格の個体は先程のコウモリ男の倍の大きさは軽くありそうだ。
「三体か…少しキツいな………キミは…今朝の! ありがとう助かったよ! ……次いでにコウモリ退治もして行かないかい?」
なんとも遠慮したいお誘いだ 。
だがしかし………
「こんなのを野放しには出来ないしな」
「ありがとう! 小さいの2体任せていいかい?」
「お易い御用だ」
「ナメルナヨ ……タイジサレル、ノハ、オマエラダ!」
痺れを切らしたのかコウモリ男の親玉は、更に怒り心頭な様子で叫ぶ。
「待たせたね!さぁかかって来い!」
勇者がそう言って、親玉を引き付けながら離れていく。
こっちも早く片付けるか……。
「さぁ、かかって来いよ……ここ2日のストレス全部テメーらにぶつけてやるよ」