第22話 活気のない街
あれから気分が良くなった俺はもう少しプードゥと会話をしてから屋敷を出た。そして宿に着いた後も俺はニヤニヤが止まらなかった。
「えらく上機嫌だねシルト。ファンって言ってもらってそんなに嬉しかったんだね」
微笑ましそうにカフカが話しかけてくる。
「まさか、俺にファンが居るとは思わなかったから余計に嬉しくてさ……」
「ふふっ…知らなかったの? シルトはS級冒険者なんだからファンだっていっぱい居るわよ。特に若くて、クールで、一匹狼な所が良い!って若い女の子とかから応援されてるわよ」
「知らなかった…………」
まさかの事実だ……。ただのコミュ障ぼっちをそんな風に捉えてくれてる人が居たのか…………若い女の子ねぇ…………マジかぁ…………。えぇ、どうしよう。
……いや、別にどうもしないか。良かった冷静になれて。
でも、今まで自分の評判は気になっていたものの聞いた事がなかった。他に何か無いのか聞いてみるか……。
「他には、「カフカ、ちょっといいかしら?」」
キャルメルが、俺とカフカの間に割って入ってきた。
「え?………いいわよ、何かしら?」
カフカは困惑しつつも、キャルメルについて行った。
残された俺は、手持ち無沙汰になり宿を見渡してみる。
流石は勇者パーティ…宿も最高クラスだな…………。部屋は全員別々だし、ホント金かけてるな……。そりゃ、世界の命運が掛かってると考えたら安い出費かもしれないが…。
俺はなんだかんだ貧乏性が抜けなくて、S級冒険者になってからも、こんなレベルの宿に泊まったことなんてほとんどない。
この宿は一階がレストランの様になっているが、飯時にも関わらず人は少ない。恐らくこれもダンジョン占領騒動の影響だろう。
「よし、チェックインは出来たしご飯食べよっか」
「ここの料理はかなり評判が良いみたいですね。楽しみです」
どうやら受付をしてくれていたレイスとコノエが戻ってきたようだ。
俺たちはレストランで美味しい夕飯を食べ、明日のダンジョン解放への作戦を立てて、解散となった。
俺は寝る前に部屋で自分の装備の点検をしつつ物思いにふけっていた。ギナウダンジョンを占領しているモンスターの種類は様々だが、スライムやスケルトンなどの元々ダンジョンに出現していたモンスターが多いらしい。
普通に考えたらただの大量発生だが、この件は勇者パーティが出張る程の自体にまで発展している。もしかしたら、ダンジョンの奥で何かしらのイレギュラーな事が起きているのかもしれないな。