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第21話 ファンとの交流

『ゴマタ』の街は、『ギナウダンジョン』に来る冒険者や、その冒険者らを狙った商人等が多く賑やかな街だった。ダンジョンが突如大量発生したモンスターに占拠されるまでは……。


 街についた俺達はまず、この土地を収める貴族の屋敷へと訪れていた。使用人に案内され、大きい部屋へと案内された。


 馬車を降りてから、なんだかキャルメルから向けられる視線が一段と凄みを増している気がしてならない。


「これはこれはようこそ、いらっしゃって下さいました勇者様御一行。私はこの街を任されていますブルドー・ナイヌでございます」

 俺達を迎えてくれたのは恰幅の良い中年男性だ。なんだか媚びるような声で少し気味が悪いが、特殊極まりない成り立ちの勇者パーティが相手ならば、そういった対応になるのも仕方ないのかもしれない。


 こちらからはレイスが代表してナイヌ卿と話をしていたが、ナイヌ卿は時々俺の事を見ているような気がした。新入りである俺を値踏みでもしているのだろうか。


 それからしばらくして話が終わり、今日はもう遅いのでとりあえず俺達は宿に行く事になった。


「シルト・クルト殿少しよろしいですかな?」


「え?あ、はい」

 みんなと一緒に屋敷を出ようとすると、後ろからナイヌ卿に呼び止められた。振り返ると、ナイヌ卿とその側に6、7歳程の少年が立っていた。


「実は息子がシルト殿のファンでして、一目会いたいと言って聞かなくて……」

 ファン!?俺にファンがいたのか…結構な驚きだが悪い気はしない。


「プードゥ・ナイヌです! あの…ここにサイン下さい! あ、あと強くなる為にはどうすればいいのかも知りたいです!」

 プードゥはおどおどしながらも、色紙を差し出しながら話しかけてきた。


「えーと……はい、サインです、どうぞ。」


「お、おぉ…これが……ありがとうございます! 家宝にしますね!」

 サインなんて考えた事すら無かったから、シンプルにシルト・クルトとだけ書いたが、満足してもらえたようだ。でも、ちゃんとした貴族が家宝とか言うと、冗談でもプレッシャーがデカイなと、苦笑する。


「えーと……後は強くなる為にはですよね…………」

 どうしたものか、俺がしてきた修行ではシンプルに師匠に死ぬ寸前までしごかれる感じだったが、流石に貴族の子には出来ないだろうし……ここは、心持ちの方で話すか。


「やはり、諦めない心ですね。人は諦めない限り進み続けられますから」


「ふ、深いぃ〜」

 プードゥは感激のあまりに倒れそうといった様子だ。そこまでいい事言ったか?とも思いつつ、初めて出会った俺のファンとの交流を楽しんだ。


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