第20話 静かに燃ゆる火
コノエが眠たそうに目をこすりながら幌に戻ってくる。先程までは御者席であの男と会話していたらしい。
「うーん……少し昼寝しますね。着いたら教えてくれませんか?」
「OK、おやすみコノエ」
コノエのお願いにレイスが返す。
既にコノエもあの男の毒牙にかかってしまっていたようね……。どんな手口を使っているのか知らないけど、私は負けない! 3人とも私が絶対に助けるからね……!
「じゃー次はアタシがシルトのとこ行ってこよっかねぇ。アイツも一人じゃ寂しいだろうしね」
そう言いながらカフカは御者席の方へ行った。
「…………カフカさんって、シルトさんの前では何故か猫かぶってますよね…………ふわぁ」
コノエが欠伸をしながら、半分独り言の様に呟いた。
「うーん……確かにそうだね。二人は幼なじみのはずなのに、どうしてなんだろう?」
普段のカフカは所謂、頼れる「姉貴キャラ」みたいなタイプなのだが、あの男の前だけでは何故か清楚ぶった立ち振る舞いをしている。
正直聖女の振る舞いとしてはどうかとも思うが、彼女の面倒見の良さが、生まれも育ちも違った勇者パーティが打ち解け合うキッカケにもなったし、そんな彼女が好きで尊敬していた。
それなのに何故か、あの男の前では猫をかぶって清楚な振りをしている。何故……なんで自分を偽ってまであんな男に擦り寄るのよ!
私がアイツを追い出して目を覚ましてあげる……。
あんな男を入れたって足手まといでしかないって……。
上層部共が私達を未熟だと言うけれどそんな事ない!!
勇者パーティには私達だけで十分だって……見せ付けてやるのよ!




