第18話 ドライブデート
そして、俺が勇者パーティに入って初めての任務の出発の日が来た。目的地の『ギナウダンジョン』には、馬車で向かう事になっている。
馬車の運転手、御者は俺が名乗り出た。馬車の幌みたいな狭い場所で、あのキャルメルという子とずっと一緒に居るのは気まず過ぎるからだ。
「よーし!準備はいいね?さぁ、出発だ!」
レイスの号令に合わせて、馬を走らせる。
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あれから10分程経ち、順調に馬車を走らせている。この馬車は、勇者パーティの為に準備されただけあって、掛かっている魔法が桁違いだ。馬車にはランクがあり、その中でもかなりのランクになると、魔法が掛かっているものもあり、揺れや馬の疲労を軽減する効果がある。
俺が馬車の性能に感動していると、いつの間にか隣にコノエがやって来た。
「少しお話……しませんか?」
コノエが遠慮がちに聞いてくる。
「あぁ、勿論いいぜ。」
コノエはあの日以降も、頻繁に俺の家へ出入り(不法侵入)をしていて、その度に世間話をしていたから仲はそれなりに深まったと思う。
「なんだかワクワクしちゃいますね……。拙者なんか昨日はなかなか寝付けなくて……えへへ」
凄く可愛らしいが、勇者パーティが駆り出される程の任務なのに、あまりにも呑気だなと思ってしまう。
「まぁ今日はダンジョン近くの街までだから良いけど、あまり気を抜きすぎるなよ」
「心配しなくて大丈夫ですよ、拙者は寝てても周囲1キロ程の危険は察知できますから」
なにそれ凄い。
しかし、それもそうか。コノエ達は実力だけで言えば、世界でもトップクラスを誇っている。でも、実戦経験が少なかったため俺が加入する事になったんだ。
それからしばらくは、家族の事や好きな小説について、コノエと楽しく雑談をした。その後、睡眠不足が祟り眠たくなったコノエは仮眠を取る為、後ろの幌へと戻って行った。